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大手マスコミに代わって危険な戦地へ向かうフリーランス 安田純平さん拘束から見えるいびつな構造

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シリアで拘束され、昨年10月に3年4か月ぶりに解放されたジャーナリスト安田純平さんの経験を共有し、ジャーナリズムや戦場取材の意義を考えるシンポジウムが2018年12月26日、東京都文京区で開かれた。

安田さんは拘束までの流れに関する報道や情報に誤りが多いとして、「(自分が批判を受けることは)構わないが、事実関係だけはしっかりするべきだと思う。批判の根拠となっている情報はデマが多い」と指摘。

自己責任論が上がる要因について、「事実なんかどうでもいいとする人が多いため」と見解を示した上で、「ジャーナリズムは事実を明らかにするためのもの。事実に基づいてモノを考えるというのは非常に大事だ」と述べた。

シンポジウムは雑誌「創」編集部や新聞労連などが主催。「創」編集長の篠田博之さんの司会進行の元、安田さんや国内外で活動するジャーナリストや新聞記者らパネリスト7人(以下、敬称略)が登壇した。自己責任論やジャーナリズムの役割に言及した発言を紹介する。【岸慶太】

「対テロ戦争」の陰で、犠牲者の大半は一般市民

安田純平氏

安田純平(ジャーナリスト):1974年生まれ。信濃毎日新聞を経て、フリージャーナリスト。戦時下のイラクやシリアなど紛争地を取材。著書に『ルポ 戦場出稼ぎ労働者』(集英社新書)など。有料メルマガ『安田純平の死んでも書きたい話』(https://www.mag2.com/m/0001685218.html)の配信を始めた。

イラク戦争以降、特に言われているのが「対テロ戦争」。テロリストの掃討作戦、テロリストを殺す戦争であるということでやっているわけです。でも、実際に犠牲になっているのは、一般人が多い。

私は04年にもイラクで拘束されました。その時、私の拘束場所には近所のちびっ子が多く見物に来ました。(テロリストと言われる人は)実際は農家の人たちだった。テロリストと呼ばれる人が実は一般市民だった、というのは私自身が見ました。実際、イラク、シリアで犠牲になっている人は大半が一般の市民。それをテロリストと言ってしまえば、殺されてしまうのが対テロ戦争です。

テロリストと言われた時点で、その人は人間じゃないわけです。人権ゼロですから、反論する機会もない。誰がテロリストなのかは、言いたい人が「この人はテロリストだ」と言うだけのこと。国家権力がそう言えば軍隊を使って殺すし、メディアである我々が言えば「この人は人間ではない」と言ってしまうことになる。

12年のシリア内戦でもアサド政権が「テロリストがいる」として空爆をしたわけですけど、実際に行ってみると犠牲者の大半が子供でした。自分のいる場所から着弾地点まで1分以内のとこに毎日、迫撃砲や、ヘリからの空爆、戦車からの攻撃があって、どんどん遺体が出てくる状況です。そういったところで犠牲になっているのは一般市民がほとんど。「テロリストだから仕方ない」と言われたら、我々も何となくそう思ってしまう。

生身の人間が殺害される その現実を伝えるため戦場へ行く

人間というものを記号に当てはめてしまう。記号に当てはめた時点で、その人は人間じゃないような気がしてくる。で、無数の人が犠牲になっても、人が殺されているという実感がわきにくくなってしまう。そうしたときに、記号に当てはめるのではなくて、「彼らは生身の人間である」「それぞれに人生がある人間だ」ということを、現場へ見に行きたいと思った。テロリストという言葉が出始めたところで、現場にぜひ行ってみたいという気がした。だから、「対テロ戦争」をテーマに取材している。

自己責任論がどうして出てくるかというと、「事実なんかどうでもいい」と思っているからです。だから、現場の情報なんかいらないなんて話になるし、批判の根拠は大体デマが多い。ジャーナリズムというのは事実を明らかにするためのもの。事実なんかどうでもいいと言っている人に何を言っても通じないです。事実に基づいてモノを考えるというのは非常に大事である、ということをまず共有できないと話が始まらないというのが私の意見です。

安田さんが謝るかどうかは本質ではなかった

原田浩司氏

原田浩司(共同通信編集委員):1964年生まれ。88年から共同通信カメラマン。ペルー日本大使館公邸人質事件、アフガン首都陥落取材で日本新聞協会賞受賞。国内外で災害や紛争を取材している。

自己責任の論争ですが、いくら考えても結論は出ない。人間は「生きていてごめんなさい」みたいなそんな存在だと思います。例えば、中年のおじさんはそこにいるだけで、みっともなかったり、臭かったりするわけです。それを責任取れと言われてもどうしようもないわけです。その延長線上に戦場取材における自己責任論もあると思う。

(解放後、安田さんの最初の記者会見を受けた)世論、ネットの反応を見ていると、世の中の人はある程度納得したのではないかという印象を持ちました。我々言葉を扱う職業の人間は、考えすぎじゃないかと。意外に世間は謝る、謝らないは気にしていなくて、それが本質じゃないのではないかと。では、どういう社会があるべきかと考えると、僕は緩い社会、おおらかな社会であればいいなと考えます。

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