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親世代とは大違い“地方名門私立”の盛衰

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1月半ばより日本全国で中学受験がスタートする。受験生の親は多くが30~40代。だが親世代が受験した当時とは、学校勢力図は激変している。中学受験塾代表の矢野耕平氏は「勢力図の変化は、首都圏以上に地方のほうが激しい。学校選びでは最新動向をおさえたほうがいい」と語る。知られざる“地方名門私立”の栄枯盛衰とは――。

■東京よりも「地方」の私立中高のほうが激変している理由

昨年末、わたしはプレジデントオンラインに「親世代とは大違い"首都圏名門私立"の凋落」という記事を寄せた。この30年の「学校勢力図」の激変を、模擬試験の「偏差値推移データ」に基づいて説明した。


矢野耕平『旧名門校 VS 新名門校 今、本当に行くべき学校と受験の新常識がわかる!』(SB新書)

「学校勢力図」の激変は、首都圏だけの現象ではない。むしろ地方の激変のほうが激しい。日本では都心部への人口集中が進んでいる。東京都が2018年3月に公表した「東京都男女年齢別人口予測」によると、東京23区部の0歳~14の人口は、この10年間で約7%増加する見込みとなっている。逆に言えば、人口流出している地域も多いということで、とりわけ地方の私立中高には少子化の波が直撃しているのである。

だからこそ、地方の学校は姿・形を変化させることで、優秀な生徒たちの確保にしのぎを削っている。こう考えると、東京よりも地方のほうが「生々流転」しているといえるだろう。特に注意が必要なのが、30~40代の「親世代」だ。自身が受験した当時の感覚で、わが子の受験校を考えてはいけない。

では、いま、どんな学校が地方で人気を博しているのか。わたしの著した新刊『旧名門校 VS 新名門校 今、本当に行くべき学校と受験の新常識がわかる!』(SB新書)の内容をもとに、地方校の実態を紹介したい。

■千葉県立御三家を圧倒「渋幕」はもはや円熟の域に

千葉県はもともと公立校優位の地域だ。成績優秀な生徒は地元の公立中学から「千葉県立御三家」とされる「県立千葉高校」「県立東葛飾高校」「県立船橋高校」へ進学する。しかし1983年、千葉県千葉市に渋谷教育学園幕張高校、86年に同付属中学校が開校すると受験動向に変化が出始める。開校当初は「千葉県立御三家」の受け皿的な存在にすぎなかったが、同校の大学合格実績が伸長すると状況ががらりと変わっていくのだ。

開校して18年経過した2000年。同年度の大学入試では同校卒業生355人のうち東京大学に13人、国公立大学には合計112人の合格者を輩出。さらに昨年2018年度は、卒業生372人のうち東京大学に48人、国公立大学には合計199人、早慶には282人の合格者を出した。

今や「渋幕」の名は全国にとどろきわたっている。進学実績は「千葉県立御三家」を圧倒するだけでなく、「開成ではなく渋幕」「桜蔭ではなく渋幕」を選択する中学受験生さえ見られるようになった。在校生の住まいも千葉県のみならず、東京都、埼玉県、神奈川県、茨城県と広範囲に渡っている。

■東大ではなく海外の大学を選ぶ生徒も多い渋幕

渋幕のサクセスストーリーは現理事長・校長である田村哲夫氏の教育方針がつくりあげたと断言してよいだろう。田村氏は東京の名門男子校・麻布出身であり、渋幕開校時は麻布の理事も務めていた。麻布の「自由」を共学校である渋幕に取り入れただけではなく、21世紀に向けて世界で活躍できる人材(国際人)育成にも努め、生徒たち一人ひとりの個性を輝かせることを目標にした教育をおこなった。


渋谷幕張中高のウェブページより

同校の教育目標は「自調自考」。自らの体で調べ、自らの心で考えるという意味であり、それが建学の精神にもなっている。同校に在学している中学生の男子は学校の雰囲気を次のように語る。

「校則はほとんどないです。高校生の中には髪を染めている人もいるくらいです。とにかく自由な雰囲気で、生徒がやりたいことをとことん先生たちが応援してくれます。たとえば、『学校が廃棄する予定になっているPCを全て回収して、それを材料にスーパーコンピューターを作りたい』と提案した科学部の人がいたんです。普通はそんなの却下されちゃいますよね。でも、渋幕の先生たちは『じゃあ、やってごらんよ』と背中を押してくれるんです」

この話から生徒一人ひとりの個性を最大限に尊重しようという学校側の姿勢が見えてくる。

そして、個性豊かな同校の生徒たちが目を向けるのは日本の大学だけではない。昨春、同校から海外大学合格者数は35人。世界で活躍する国際人の育成という同校の掲げる目標に合致する結果であることが分かる。

実際、同校の英語授業のレベルは相当高い。英会話の授業はオールイングリッシュ。英語によるプレゼンテーションをおこなう場も数多く設けられていて、同級生の流暢で熱意あるプレゼンを聞いて、刺激を受ける人も多いという。

「自由」な雰囲気の同校だが、中高一貫カリキュラムは生徒たちの学力をどう伸ばすかという観点に貫かれた秀逸なものだ。中高の6年間をAブロック(中1・2)、Bブロック(中3・高1)、Cブロック(高2・高3)の3段階にしていて、多様な進学ニーズに応えている。

また、1年ごとに分厚い「シラバス(学習科目の内容と解説)」が用意されていて、これが学習の羅針盤になっている。こうしたきめ細やかさは既存の名門校にはあまりみられなかった。だからこそ急成長を果たしたのだろう。

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