- 2019年01月09日 19:21
世界初「月の裏着陸」中国が狙う「宇宙制覇」最前線(下) - 野口東秀
2/2中国「次世代AI発展計画」
さらに中国は、宇宙開発に加えて人工知能(AI)の開発にも本腰を入れている。AIは軍事分野で応用すれば、戦争の性質を変えるからだ。
中国は2017年7月、「新一代人工智能発展計画」(次世代AI発展計画)を公表している。
その計画では、2025年までに中国が重要なAI技術のブレークスルーを目指し、中国産業の向上や経済転換の主な原動力とするという。そして2030年に中国が世界トップのAIイノベーションの中心として世界をリードすると“宣言”している。
現在、米中はAI関連特許申請のトップ争いをしているが、中国は米国を引き離す勢いである。日本は完全に出遅れている。
今後、中国の軍事面でのAI利用と対衛星攻撃システムなどが融合し実用化されれば、革命的と言える影響力を及ぼすことは必至である。
電磁レールガン、無人機、無人潜水艇、無人ステルス戦闘機などの開発にも傾注する中国が、米軍と並ぶほどの競争相手となる可能性を秘めているからこそ、米国は軍事領域で優位性を失いかねないと危機感を抱いている。だからこそ、宇宙軍を創設し本腰を入れるわけだ。
中国共産党中央委員会の政治理論誌『求是』は2010年12月、ウェブサイトで「米軍の衛星は攻撃に対し脆弱である。衛星への攻撃は米国を攻撃する最も効果的な手段だ。速やかに宇宙兵器開発の努力をすべきだ。最終的に人工衛星からミサイルを発射できるようになれば、米国はどこにも隠れる場所がないと知るだろう。完全に中国の兵器の射程にさらされることがわかるはずだ」などとする論文を掲載したことがある。
ここでは「ミサイル」としているが、中国はレーザー兵器関連の部品などは対外輸出を禁止しているとみられることからも、「レーザー」の単語はあえて入れなかったのだろうか。
中国の姿勢からは、米軍との戦争が起きた場合に備え、どの国が何と言おうと我関せずと宇宙開発を進める構えがうかがえる。
「専守防衛に抵触する」
一方、宇宙における軍事開発を進めない日本はどうか。
米軍は宇宙配備型のセンサーを配置したり中ロの攻撃用衛星を無能化する技術などへの対策を進める方針だが、日本は、米国が日本など同盟国と宇宙分野における協力を強化する方針に合わせ、宇宙、サイバー空間、電磁波領域での対処能力を強化する「クロス・ドメイン・オペレーション(領域横断作戦)」を打ち出している。
衛星攻撃型衛星をも監視する監視レーダーを設置し、2023年度からの運用を目指すほか、宇宙空間を常時監視する宇宙領域専門部隊を航空自衛隊に新設する方向だ。いわば米軍をサポートする役割であろう。
ここまで見てきた現状から分かる通り、今後、「米軍と同盟国VS.中国軍」の宇宙空間での熾烈な開発競争が一段と激しくなることは確かだ。
日本も、迎撃が不確実な弾道ミサイル防衛よりも、ミサイル迎撃用のレーザー兵器の開発に本腰を入れるべきではないのか。
無論、日本も研究はしているようだが、実際に開発し配備すれば、またもや「専守防衛に抵触する」との批判が出ることも容易に想像がつく。しかし、「宇宙戦争」の現状は斯くの如しである。「専守」についての議論は尽くしつつ、「防衛」のための開発を怠るべきではあるまい。(野口 東秀)



