- 2019年01月09日 17:09
講談社社屋の垂れ幕がアピールするコミックの「近年にない大ヒット」作品とは
2/22018年講談社コミック部門の収益に大きく寄与
『転生したらスライムだった件』は、いわゆる転生ものと言われるジャンルで、ある日突然、異世界へ転生してしまうという話だ。もともとはマイクロマガジン社刊のラノベ小説なのだが、講談社ではシリウス・ラノベ編集部が、ラノベを『シリウス』でコミカライズし、アニメ化と連動させてヒットにつなげるという戦略を以前からとってきた。
「『転生したらスライムだった件』は確かに転生ものではあるのですが、世界観は王道ファンタジーです。メジャー感のある作品だったことも受けた要因だと思います」(高島部長)
最新の第9巻は初版30万部でスタートし、すぐに大きな重版がかかった。

『はたらく細胞』については、スピンオフ作品がたくさん生まれているという。
「『はたらく細菌』とか『はたらく細胞BLACK』『はたらかない細胞』とか、いろいろな作品が社内のいろいろな雑誌で生まれました。『モーニング』『なかよし』など雑誌は様々で、近々『別冊フレンド』でもスピンオフが掲載されます。今後も増え続け、スピンオフ作品だけで相当な数になる予定です」(同)
2018年のコミック市場は、前半は低迷だったが後半盛り返している。ひとつの理由は、海賊版サイト「漫画村」が社会的非難の高まりで閉鎖したためではないかと見られている。講談社も18年前半はコミック部門が厳しい業績だったが、後半盛り返した。海賊版問題はあったとしても、それに加えて『シリウス』の2作品の大ヒットが要因になったことは間違いない。
デジタルに詳しい吉村浩販売局長にも話を聞いた。吉村さんはもともと講談社のデジタル部門を統括してきた人だが、1年前から販売・宣伝・制作・流通も統括するようになった。
「『転生したらスライムだった件』はすごいですね。アニメ化で一気に売れ行きにドライブがかかりました。紙の本ももちろん売れましたが、デジタルへの跳ね返りが記録的です。単月での売り上げをとると、『進撃の巨人』の記録を塗り替えました。もともと“異世界ブーム”にのって売れてはいたのですが、この爆発力はすごい。紙とアニメとデジタルがこんなふうに良い循環をしたのはしばらくぶりですね」
ヒットの方程式が変わりつつある?
「『進撃の巨人』の記録を塗り替えた」という指摘には驚く人も多いだろう。出版界ではこんなふうに予想を超えた大ヒットを「化ける」と表現するが、まさに2作品は大きく化けた事例と言ってよいだろう。ただそれが同じ雑誌から2作品続いたというのは、偶然の産物でなく、業界を覆う構造的変化と関わっていると考えた方がよいだろう。
例えば小学館でも昨年来、『俺、つしま』『こぐまのケーキ屋さん』といったマンガのコミックスがヒットしているのだが、これはいずれもよく知られたマンガ雑誌の連載でなく、ツイッターで人気が出たものを編集者が見つけて紙の本として出したものだ。
ヒットの生まれ方が従来のパターンと違ってきつつあるのだ。
苦境に喘いでいると言われる出版界の、一方で今、新しい動きが出始めているように見える。そうした現象は、講談社や小学館だけでなく、いろいろな出版社で現れつつある。大きな要因はネットとの関りなのだが、かつてのように紙とネットを対立的に捉えるのでなく、どんなふうに両者を連動させるかが、戦略のカギになっている。
12月、多くの出版社を取材しながら、そんなことを考えた。
『創』出版特集の内容は下記をご覧いただきたい。
※Yahoo!ニュースからの転載



