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  • 東龍

グルメの注目 食通でなくとも知っておきたい9つの話題 2019年

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2019年グルメの注目

2019年も始まりました。

昨年始めには、解決に向けて少しでも前進できたらと考え、<食通であれば知っておくべき2018年の飲食店に関する5つの課題・問題>で飲食店に関連する5つの課題や問題を取り上げました。

ノーショーやドタキャン、食品ロス、和牛、食の評価、インフルエンサーにおける問題について言及し、1年を通して記事を書いてきましたが、反響を鑑みると少しずつ認識が広まってきたように感じます。

今年は昨年とは趣向を変えて、以下の通り、グルメの注目点を紹介します。

  • 美食
  • ニューオープン
  • トレンド

美食、ニューオープン、トレンドにおけるそれぞれの注目を、2018年の振り返りも含めてみていきましょう。

美食

グルメ=gourmet という言葉は、日本でもそのまま意味が通じるフランス語です。本来グルメは食通や美食家という意味ですが、おいしい料理や評価の高い料理を指すこともあり、広く使われています。

美食の注目どころを挙げていってみましょう。

ミシュランガイド

美食といえば、ミシュランガイドの星付きレストランを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。ミシュランガイド(ギド・ミシュラン)は本国のフランスで1900年に出版された歴史も権威もあるレストランガイドです。フランスでも日本でも、料理人や食通が星の獲得や喪失、増加や減少について一喜一憂し、それによってレストランの売上も大きく変わるなど、大きな影響力を持っています。

2018年に発売された「ミシュランガイド東京 2019」はその前年度版「ミシュランガイド東京 2018」に比べて星の変動が大きかったといわれています。

全体の掲載店数は512から484に、ビブグルマンは278から254、一つ星は166から165、二つ星は56から52となっています。フランス料理でいえば、勢いのあった玄人好みのレストランが星を失っていたり、老舗の一軒家フレンチが星を減らしたりしました。

そういった状況で、朗報といえるのは「ロオジエ」が二つ星から三つ星へと返り咲いたこと、それによって三つ星が12から13へと増えたことでしょう。

「ロオジエ」エグゼクティブシェフを務めるオリヴィエ・シェニョン氏は物静かな料理人ですが、「お客さまにご満足いただけることだけを考えて邁進してきた結果、三つ星を獲得することができた。本当に幸せなことだ。改装休業後、リニューアルオープン5周年を迎えたこの年に、スタッフ全員のこれまでの努力が実った」と喜びを表現しています。

ミシュランガイドで落とした星を再び取り戻すことは、その歴史を見る限り非常に難しいことです。フランスでもかつては三つ星をずっと維持していたレストランが、今では一つ星を維持するのが精一杯ということも珍しくありません。

したがって、日本におけるグランメゾンのアイコンとなっている「ロオジエ」が改装休業後初めてとなる三つ星となり、「ミシュランガイド東京 2016」以来、三つ星が13店となったことは、日本の美食にとっては嬉しい材料なのです。発売当初から三つ星を獲得し続けている「カンテサンス」「ジョエル・ロブション」と合わせて、フランス料理の三つ星が3店となりました。

他にも注目したいフランス料理店があります。

それは、<逝去の報道で激震を与えた料理界の巨匠ジョエル・ロブション氏は何がすごいのか?>でもコメントを紹介した渡辺雄一郎氏がオーナーシェフを務める「ナベノ-イズム(Nabeno-Ism)」です。

エグゼクティブシェフとして「ジョエル・ロブション」を三つ星に導いてきた渡辺氏は、2016年7月7日に「ナベノ-イズム(Nabeno-Ism)」をオープンしてから、すぐに一つ星を獲得し、「ミシュランガイド東京 2019」では二つ星へと昇格しました。

渡辺氏は「フランス料理に携わる者にとってミシュランガイドは本当に特別な存在。フランス修行時代は毎日のように、ミシュランガイドで食べに行く店、働きたい店を探した。『ジョエル・ロブション』では9年間三つ星、『ナベノ-イズム』でも2年間一つ星、2019年版からは二つ星をいただけて本当に光栄であった。フランス料理と地域食文化の融合という新しい試みで世界基準であるミシュランガイドに掲載され、評価していただけたのは何よりも嬉しいことであり、そして自信になった」と噛みしめるように述べます。

他にも、「カンテサンス」オーナーシェフ岸田周三氏の薫陶を受けた深谷博輝氏の「アルゴリズム」、日本での修行経験がないという異色の経歴を持ち、食材やストーリーにこだわりを持つ大槻卓伺氏の「Takumi」が新しく一つ星を獲得し、フランス料理に新しい世代が現れているのは非常に期待が寄せられるところです。

ベストレストラン50

ミシュランガイドは長い歴史を誇るガイドブックですが、2002年から始まり、今最も勢いのあるアワードがあります。それは、<今最も信頼されている食のアワード「世界のベストレストラン50」を知る>でも紹介した「世界のベストレストラン50」および「アジアのベストレストラン50」です。

記事で詳しく説明しましたが、大きな特徴となっているのが、世界各地にいる審査員の投票によってベスト50のレストランが選出されることです。記事執筆時と現在とでは投票システムが少し変わっていますが、審査員が料理人、フードジャーナリスト、食通のトラベルジャーナリストによってバランスよく構成されているところや、毎年審査員が一定数入れ替わるところは全く変わりません。

一部の審査員によって全てが決定されるシステムとは異なり、「アジアのベストレストラン50」では318人、「世界のベストレストラン50」では1040人と非常に多くの審査員によって決められるところも、他にはない特徴です。

では、今年の見どころはどこでしょうか。

2013年から日本の評議委員長を務める中村孝則氏に尋ねると、2019年3月26日に香港・マカオで発表会が行われる「アジアのベストレストラン50」では「日本のレストランが初回2013年以来の1位になる可能性が高い。昨年2位の傳、3位のフロリレージュは大きなチャンス。4位バンコクのズーリング、5位シンガポールのオデットの追い上げも見もの」と、日本勢にチャンスがあると答えます。

2019年2月10日にシンガポールで発表会が行われる「世界のベストレストラン50」に関しては「昨年3位であったフランス・マントンのミラズールと昨年6位であったペルー・リマのセントラルに勢いがある」と、世界の美食に精通した中村氏ならではの注目レストランを挙げます。

「アジアのベストレストラン50」および「世界のベストレストラン50」は、ガストロノミーの潮流をどこよりも敏感に色濃く反映しているだけに、日本のレストランが美食の発展が著しいアジアで1位を獲得できるかどうか、目が離せません。

ル・テタンジェ国際料理賞コンクール

<32年振りの快挙なるか? 日本人料理人によるパリ・ファイナルへの挑戦>でも紹介したように、日本には大きなフランス料理のコンクールが3つあります。

それは、ル・テタンジェ国際料理賞コンクール、ボキューズ・ドール国際料理コンクール、エスコフィエ・フランス料理コンクールです。

先の記事では、浦和ロイヤルパインズホテル総料理長である竹下公平氏と同じく、エスコフィエ・フランス料理コンクールおよびル・テタンジェ国際料理賞コンクールの日本大会で優勝したホテル インターコンチネンタル 東京ベイの吉本憲司氏が、ル・テタンジェ国際料理賞コンクール決勝大会に挑む様子を紹介しました。残念ながら優勝とはなりませんでしたが、堂々の世界3位入賞を果たしています。

ル・テタンジェ国際料理賞コンクールは歴史ある国際的な大会であり、1984年に決勝大会で日本人として初めて優勝した堀田大氏以来、実に30年以上も日本人の優勝者は存在しませんでした。

しかし、昨年2018年11月19日にパリで行われた、第52回ル・テタンジェ国際料理賞コンクール決勝大会において、「ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション」でシェフを務める関谷健一朗氏が優勝したのです。

<逝去の報道で激震を与えた料理界の巨匠ジョエル・ロブション氏は何がすごいのか?>でも述べたように、関谷氏はフランス料理界の巨匠であるジョエル・ロブション氏の愛弟子であり、次世代のフランス料理会を担う料理人です。

優勝したことに関して関谷氏は「かつてジョエル・ロブション氏が優勝した歴史と権威のあるコンクールで良い成績を収めることができて、大変光栄。きっと天国のロブション氏も喜んでくれていると思う。この経験を生かし、今後も全てのお客様にご満足いただけるような料理を創り出していきたい」と述べています。

ロブション氏が亡くなった年に、そのフランス料理の真髄を継承した関谷氏が権威ある国際大会で優勝したことは、新たなガストロノミーの時代が幕を開けたと考えてよいのではないでしょうか。

ニューオープン

<相次いでリニューアルしている高級ホテルのレストランで注目しておくべき3つの特徴>で紹介したように、2018年にはホテルのレストランが相次いでリニューアルオープンしました。

2019年にオープンし、注目するべき施設を紹介しましょう。

東京會舘

東京會館は「世界に誇る施設ながら、誰でも気軽に利用できる、大勢の人々が集う社交場」を標榜し、1922年に開業した施設です。

結婚式場や宴会場としても有名ですが、1934年に日本初の鮮魚介料理店としてオープンし、「舌平目の洋酒蒸 ボンファム」などのスペシャリテで日本におけるフランス料理の黎明期をリードした「プルニエ」、ローストビーフやダブルコンソメといったシグネチャーディッシュを有する「ロッシニ」を始めとしたレストランも非常に評価が高いです。

この東京會舘は、建て直しのために2015年1月31日から休館していましたが、4年近くの歳月を経た2019年1月8日に「NEWCLASSICS.」=「新しくて伝統的」というコンセプトを掲げて開業します。

フランス料理「レストラン プルニエ」、グリルレストラン「ローストビーフ&グリル ロッシニ」、「日本料理 八千代」、オーセンティック バー「MAIN BAR」、メンバーシップクラブ「TOKYO KAIKAN UNION CLUB」、ペストリーショップ「SWEETS & GIFTS」といった施設に加えて、オールデイダイニング「ロッシニテラス」、鉄板焼「TOKYO KAIKAN 會」が新しくオープンします。

この料飲施設の中で特に注目したいのが「レストラン プルニエ」と「TOKYO KAIKAN 會」です。

東京會舘では伝統的なフランス料理の味が継承されていますが、その味をさらに革新的に強化していくために、松本浩之氏をシェフとして招聘しました。松本氏は25歳で渡仏して研鑽を積んでから帰国し、「レストラン・フウ」ではシェフを務めてミシュランガイド一つ星を獲得するなど、輝かしい経歴を誇る料理人です。

外部から実力ある料理人を招聘することは長い東京會舘の歴史の中でも稀有であることからも、東京會館がいかに「新しくて伝統的」というコンセプト通り、生まれ変わろうとしているかが分かります。

「TOKYO KAIKAN 會」は今回新しくオープンしますが、先の<相次いでリニューアルしている高級ホテルのレストランで注目しておくべき3つの特徴>でも述べたように、鉄板焼は訪日外国人に人気ということもあって、増えている業態です。

これまで鉄板焼という業態を有していなかっただけに、他のホテルの鉄板焼店で研鑽を積むなどし、料理人を育成してきました。ローストビーフのイメージも強い東京會舘は、同じく肉料理をメインとする鉄板焼と相性がよいのではないでしょうか。

伝統に彩られた「レストラン プルニエ」で松本氏がどのようなモダンフレンチを生み出すのか、新しい「TOKYO KAIKAN 會」でどの黒毛和牛がどのように捌かれていくのか、数日後のグランドオープンで明らかとなります。

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