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「電力の共同購入」という魅力が現実に近づくには

海に川が注ぎ込む流れが遅いところには汽水域が出来上がる。海の塩水と川の真水が混じり合い、共存する。私は、現在のエネルギー政策や脱原発をめぐる状況は、ちょうど新旧の価値観が混じり合い、一見何の変化もないように見えて底流には大きな変化を呼び起こすものだと感じている。また、2009年の総選挙で「政権交代」が実現し、2年半後の現在は民主党と自民党の大連立が「政局」はともかく、「政策」では隔たりが小さくなってきたことや、既成政党不信が増大して地域政党や自治体首長の動向に注目が集まる等の事態もまた、このような構造にあると見ている。

 PPS(特定規模電気事業者)の導入や、東京電力の大口契約料金の値上げ問題に取り組んでみて、ひとつ痛感するのは、この国の「エネルギー政策」の議論は供給サイドからの一方通行。すなわち、政府・財界・電力会社からのみ組み立てられていて、圧倒的な数の全国民である消費者・需要者サイドから論じられたことがないという単純な事実だった。たとえ論じられたとしても、供給サイドの論理の一翼を担うマスメディアによって本能的に無視されたか、「論外」とされた構図がつい最近まであった。実は、その体制は続いているのだが、「3・11以後」にその一角が崩れ始めたと言ってよい。

 消費者という言葉が本格的に登場したのは、1960年代だったように思う。サリドマイド禍が問題となり、高度経済成長の影で「公害問題」が大きな社会的テーマとなった。生産ラインで作り、大量に売りさばく一方通行の企業の無軌道な方向に異議申し立てをして、消費者の側からの規制を求めるようになった。こうした積み上げを基礎にして、「無農薬」「有機野菜」等を手塩にかけてつくる生産者と消費者が結びつく「産直」から発展し、街のスーパーよりも値段は高いけれど安心出来る「野菜等の食品の共同購入」が拡大していき、各地の生活共同組合として発展していく。

 「3・11」以後、原発事故をへてもなお「原発依存」から脱していかない政府に・財界に業を煮やし、再生可能エネルギーを原発や化石燃料を使用した通常の電力よりも相対的に高い価格でもいいから選択的に購入し、その量的拡大によって「原発依存脱却」をより進めたいと考えている人たちがいる。これこそ、「電力の共同購入」という概念である。世田谷区内で一声かければ、たちまちのうちに数千単位での「共同購入希望者」が出てくると予想している。その市場が存在して、20世帯前後の家庭がグループ化して大口契約を「再生可能エネルギーのPPS電気事業者」と締結すれば、現在の電気事業法の本格的な改正作業前に実現するのではないかと私は考えている。

 具体的にやってみたいと思う。なぜなら、仮に世田谷区でいくつかもの「自然エネルギー共同購入グループ」が出来て、地方でのクリーン電源を引き受けるというモデルが成立すれば、ひとりひとりの消費者・使用者の選択による電源確保が当たり前の姿になり、結果として家庭単位の電力自由化への道も近づくと考えているからだ。この電力自由化は発電・送電・配電のフェアな独立を条件にして、再生可能エネルギーの量的な拡大の起爆剤になると予想する。

 スカイツリーがまもなく開業する。東京の東が賑わうのはとてもいいことだと思う。ただし、西の世田谷区が「高さを競う」のではなく、「頬を大地につけて虫の目で街を見直していく」という流儀で生活者・消費者の視点で社会のあり方に一石を投じていくつもりだ。

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