記事

東アジア共同体について

1/2

鳩山・木村鼎談本「第四章」から。東アジア共同体について話した部分を抜粋。

東アジア共同体が、想像できる範囲での最適解だということは間違いないと思います。でも、関与するファクターが多過ぎる。われわれが何かをしたいと思っても、どういう手立てがあるのか、それがどういうプロセスで実現できるのかの予測が立たない。いちばん大きいファクターは中国です。

日本はアメリカの属国なわけですから、アメリカからの自立を果たすということが国家戦略としては最初に来るわけですが、中国がその動きをどう評価して、どう対応するのかがわからない。アメリカの支配から脱して、国家主権を回復するという日本の国家戦略を、中国が肯定的に評価するのか、それとも新たな変数が増えるということで否定的に評価するのか。独立した日本を含んだ場合に、中国がどんな東アジア戦略を描くことになるのか、それがまだ見えないのです。

いまは「一帯一路」や「21世紀海洋シルクロード」の構想が示されています。あまり言う人がいませんけれど、これはきわめて「中国的」なアイディアだと僕は思っています。いずれも中国人の「中華思想」のコスモロジーにぴったりと合っている。

中国の基本的な趨勢はやはり「西漸」なのです。漢代から、中華皇帝は国内統一が済むと、まず西に向かった。張騫や李陵や霍去病や衛青といった、われわれが中学生くらいのときから学ぶ人たちのたどったコースはいまの「一帯一路」とほぼ重なります。明代には鄭和が大船団を組んで、東シナ海を南下して、マラッカ海峡を抜けて、インドから紅海を経て、東アフリカまで航海をしていますけれど、このコースは「21世紀海洋シルクロード」とほぼ重なる。つまり、中国人にとって、中華皇帝の「王化の光」が広がってゆくときのコスモロジカルな地図は紀元前から現代まで、ほとんど変わっていないということです。たぶん、中国人にとってこの動線にはある種のつよい訴求力がある。ですから、この動線の方向にさまざまな事業を展開して、AIIBで集めた資金を投下し、そこに国内の過剰生産した鉄鋼や過剰な労働力を投下して、完全雇用を実現するというのが中国の長期的な国家戦略なのだと思います。それについてはおそらく国民的な合意がある。

「西」へ向かう強い趨向性を持ちながら、その一方で、「東」については、中国人はコスモロジカルな強い物語を持っていない。朝鮮半島、日本列島、台湾というのは、王化の対象である「東夷」にカテゴライズされます。もともと「化外の地」ですから、中華皇帝が実効支配する土地ではない。現地の支配者に自治を委ね、彼らが帝国に敬意を払い、朝貢してくる限り、さまざまな贈り物を下賜する。「東」について、中国人は特に強い領土的野心を示したことがない。歴史的にそうなんです。

例えば、鄭和の船団は七回にわたって大航海をするわけですけれど、ついに一度も東へ向かわなかった。泉州から出港して、すぐに南下してしまう。東に三日ほどの旅程で、日本列島があるのですけれど、見向きもしない。

こういう「何かをしなかった」場合については、歴史家はあまり興味を示しませんけれど、僕はけっこう国のふるまい方の根幹にかかわる重要な情報が含まれていると思います。

その「東にはあまり興味がない」中国ですけれど、日本がアメリカから自立して、主権国家として独立した国際政治のプレイヤーとなった場合に、どう遇するつもりなのか。日本をイーブン・パートナーとして迎えるということがありうるのだろうか。これはにわかには予測しがたいということです。

東アジア諸国の中で、いちばんそのふるまいが予測可能なのは韓国だと思います。87年の民主化以降の韓国は、国としてどういうかたちをとるかについてかなり安定した戦略を持っていて、それは国民的合意を得ている。ですから、日韓連携が一番計画的には実行しやすいと思います。

日本と韓国が相互に信頼しうるパートナーになること、これは他のどの組み合わせよりも現実性が高いし、実現すれば東アジアを安定させるための大きなファクターになります。韓国の人口が六〇〇〇万人ですから、日本と合わせると二億近い人口をもつ、巨大な経済圏ができる。生産力も開発力も両国ともにレベルは高いですから、日韓が連携すれば、一気に政治的にも経済的にも世界的なプレイヤーになれる。

ですから、東アジア共同体を立ち上げる場合には、まず文化的に最も近い韓国との連携をうち固めることから始めるのが合理的だろうと僕は思います。日韓は言語的にも、宗教的にも、倫理観や美意識や、生活文化においても、非常に近いところにいます。この両国が緊密な信頼関係で結ばれれば、東アジアで中国と拮抗しうるだけの力を発揮することができる。

あわせて読みたい

「東アジア共同体」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    SPA!に抗議した女子大生は危険

    小林よしのり

  2. 2

    高須氏がローラに理解示す 涙も

    田中龍作

  3. 3

    NGT事件 女性の主張を茶化す日本

    WEDGE Infinity

  4. 4

    ゴーン氏庇えぬ仏 裏に対露外交?

    やまもといちろう

  5. 5

    NGT事件 秋元康氏の責任追及せよ

    渡邉裕二

  6. 6

    韓国軍の謝罪を許可しない文政権

    AbemaTIMES

  7. 7

    日本軽視の韓国を大国が見放す日

    MAG2 NEWS

  8. 8

    たけしの労働持論に若者が反論

    キャリコネニュース

  9. 9

    志らく 純烈・友井の引退に疑問

    キャリコネニュース

  10. 10

    賃金上昇は嘘 不正統計で明白に

    田中龍作

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。