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人口減少の下で供給過剰の恐れはないか?「住民合意」の新しい枠組み作りの必要性 『どうなる首都圏のマンション』 その10 - 中西 享 (経済ジャーナリスト)

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対応遅れる行政

 国土交通省はマンションの老朽化について予測数字を発表はしているが、人口減少により首都圏で必要となる住宅戸数がどのくらいになるのかといったシミュレーションは出していない。その象徴が、1971年に入居が開始され、人口が約20万人ある日本最大のニュータウンといわれた東京都郊外の稲城市、多摩市、八王子市、町田市に広がる多摩ニュータウンだ。ニュータウンの中の「諏訪2丁目住宅」は建て替えに成功したが、人口減少により一部「ゴーストタウン」化しているところもある。

 国交省住宅局も老朽化対策にやっと取り組み始め、本年度にマンションの老朽化についての「総合調査」を実施、「住宅団地の再生のあり方に関する検討会」を開いて、団地の再生方法、マンションの建て替えなどについて議論を開始、対策の必要性は認識している。

 現在の法律では、マンションの大規模修繕は住んでいる住民の過半数、改修は4分の3以上、建て替えは5分の4以上、取り壊して住み替えは全員の同意が必要なことになっている。住んでいる人の考え方がそれぞれ異なる中で、これだけ多数の住民の意見を一つに統一するのは至難の技と言える。国交省内では、この合意条件を緩和することについてはまだ議題になってないようだ。これを変更するとなると、マンションという財産権についての議論になり、民法改正、さらには憲法29条で定める財産権をどうみるかにまで及び、法務省もかかわってくる。簡単に結論の出る問題ではなくなる。

 東京都内のマンションストック数は2017年には約181万戸(総世帯数の約4分の1の相当)になり、都民の主要な居住形態になっている。このうち着工から40年以上経過したのが2018年に24万5000戸あり、2023年には42万8000戸に増える。

 東京都都市整備局はこうしたマンション老朽化の予測を踏まえて、この7月に「東京都における分譲マンションの適性な管理促進に向けた制度の基本的な枠組み」を作成、条例化を視野に入れた施策を推進する。具体的には、管理組合が少なくとも年に1回は総会を開催して議事録を作成しているか、修繕積立金を設定して必要に応じて額の見直しをしているかなどについて、まず実態把握に努める。合意形成の見直しは、必要だとの認識はあるが、まだしばらく先の問題としかみていない。

 富士通総研の米山秀隆・主席研究員が警告したように、マンションの老朽化問題は深刻化してくる。急に表面化はしないが長期修繕、建て替えをどうやって円滑に進めていくのか、そろそろ準備、検討を始める必要がある。その際に最大の課題になるのが、当該マンションに住んでいる住民のコンセンサスをどうやって取り付けるかだろう。

壮大な実験

 しかし、マンションの建て替え、大規模修繕に関しては、それほどのんびりとは待っておられない。住宅ジャーナリストの榊淳司氏は「この問題はいまからやっておかないと、大変なことになる」と指摘する。「合意形成」に関して例外規定を設けるなど、何らかの対応措置をそろそろ考えるべき時期に来ているのではないだろうか。

 先進国の中で、日本ほど急ピッチで少子高齢化が進んだ事例はない。東京という大都市は大企業の本社が集中し、首都行政機能と経済機能が1か所にまとまり、働くにも住むにも便利な街として君臨してきた。その巨大都市も成熟化の時期を迎え、人口減少化の下で中枢機能を維持しながら世界をリードできる大都市に変われるかどうかが問われる。人口1000万人を超える東京で、過去に例のない世界で初めての壮大な実験が始まろうとしている。首都圏のマンションが将来にわたって資産価値を維持できるかどうかは、この実験結果にかかっている。

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