- 2019年01月09日 09:15
70歳でも間に合う「老後破綻」の防ぎ方
2/2■再雇用か再就職、どちらの道を選ぶべきか
「イベント破綻」「子孫破綻」「浪費破綻」。60代の3つの壁を乗り越えるためには、収入が減少することを意識して、家計の実力を知ることが大切だ。定年退職する前に、「お金の未来年表」をつくり、将来の家計予測をし、計画的なお金の使い方を考えてみよう。
「希望をすべて実現させようとすると、多くのケースであっという間に退職金や貯蓄が底をついてしまうはずです。ですから、やりたいことに優先順位をつけて、メリハリのあるお金の使い方を考えてみてください」
減少する収入をカバーするためには、できるだけ長く働くことを検討したい。特に、住宅ローンや教育ローンなどの返済が残っている人は必須ともいえる。60歳以降の働き方で多くの企業が採用しているのが継続雇用制度で、いったん定年退職したあとで希望者を再雇用する形をとっている。給与は下がり、仕事も補助的なものになることが多いため、再雇用を希望しないで辞めてしまう人もいる。だが、60歳で同じ条件の仕事を見つけるのは至難の業だ。
「それまでを基準に考えると、給与にも仕事内容にも不満が出るかもしれませんが、労働マーケット全体における価値を考えると、再雇用はありがたい制度です。通常、60歳以上の人はなかなか再就職できませんからね。それがわかれば、前向きに仕事ができるのではないでしょうか」
働いていれば、「老後」の始まりを遅らせることもできる。その分、貯蓄の切り崩しも抑えられるので、65歳以降もできるだけ長く働くことを検討しよう。
公的年金の支給開始年齢は現在65歳からだが、収入があれば、当面は年金をもらわなくても生活できる可能性がある。支給開始年齢を繰り下げると、もらえる年金額が繰り下げた月数×0.7%増額されるというメリットもある(ただし、老齢厚生年金は繰り下げると、妻の加給年金はもらえなくなるので注意が必要)。
元気な60代の間は働いて、「老後」が来る時期をできるだけ遅らせるようにしよう。
■▼【図表】60代の「お金の未来年表」


▼PART 3●70代からの壁
認知症・免許証返納・老人ホーム入居
■病気も介護も、申請漏れに注意
「5大破綻」のなかで、70代で起きやすいのが「医療・介護破綻」「アクシデント破綻」だ。体力や認知機能の衰えによって、これまでとは異なる壁が迫ってくる。
介護を受けたり、寝たきりになったりしないで、日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」は、男性が72.14歳、女性が74.79歳(16年)。この年齢を境に、医療や介護を必要とする機会は増えてくる。ただし、公的な健康保険や介護保険を適切に使えば、医療・介護で生活が破綻することはまずない。
健康保険には医療費が家計に過度な負担を与えないように配慮した「高額療養費」という制度があり、患者が支払う自己負担額に上限が設けられている。1カ月の自己負担限度額は年齢や所得によって異なるが、70歳以上で年収約156万~370万円の人は、通院が個人単位で1万8000円(年14万4000円)、入院もした場合は世帯単位で5万7600円。介護保険にも、健康保険と同様に自己負担を抑える「高額介護サービス費」という制度がある。たとえば、課税所得が145万円未満で住民税が課税されている世帯なら、1カ月の限度額は3万7200円だ。いずれも、ある程度の貯蓄があれば払えない金額ではないはずだ。
「ただし、これらの制度は原則的に自分で申請しないと利用できません。対象者には、自治体から申請を促す通知が送られてきますが、見ないで捨ててしまう人がいます。医療・介護破綻の原因を探っていくと、実は高額療養費や高額介護サービス費などを申請していなかったというケースが多いのです」
藁にもすがる気持ちで、健康保険のきかない治療に大金を注ぎ込んでしまったり、介護保険の適用範囲外のサービスをたくさん受けて、家計が厳しくなってしまったりすることもある。なかでも、高齢期に注意したいのが介護サービスの過剰利用だ。
介護保険を使ってサービスを受ける場合、利用者はかかった費用の1~3割を自己負担すればよい。しかし、介護事業者が提供するサービスの中には、保険が適用されるものと適用されないものが混在しており、入浴支援や家事支援などは規定回数を超えて利用すると全額自己負担になる。
「気が付かずに利用していると、けっこうな負担になるので、ケアマネジャーに丸投げしないで、サービス内容と費用は自分でも確認する必要があります」
介護状態が進み、自宅での介護が難しくなった場合、施設への入所も視野に入ってくるが、特別養護老人ホームは狭き門。かといって有料老人ホームに入るには、1000万円単位の入居一時金に加えて、毎月の維持費もかかる。だが、認知症の高齢者が共同生活を送る「グループホーム」、デイサービスやショートステイを組み合わせた在宅サービスが受けられる「小規模多機能型居宅介護」など、比較的費用を抑えて介護サービスを受けられる施設もある。こうした施設情報は、中学校区にひとつある地域包括支援センター(包括)に行くと教えてもらえる。要介護認定の申請ができるほか、介護サービスの内容、認知症専門医などの紹介もしてくれるので、介護が必要になったら、まずは包括に相談してみよう。
■複雑な金融商品は、必ず誰かと相談する
70代で、もうひとつ気をつけたいのが「アクシデント破綻」。高齢になると、オレオレ詐欺などの特殊詐欺、高額な羽根布団や浄水器などを売りつける悪徳商法などに狙われやすくなる。
こうした悪質なケース以外にも、お金があると思われている高齢者は、金融機関からのアプローチも多く、商品内容を理解しないまま保険や投資信託などを契約してしまうケースもある。被害にあわないためには、自分ひとりで判断せずに、誰かに相談することが大切だ。
そのためにも子どもや親戚とは良好な関係をつくっておきたいもの。特に円満な夫婦関係は、老後破綻を防ぐ重要なポイントになる。
一般的なサラリーマン家庭の年金は、夫が月15.6万円、妻が6.5万円程度(厚生労働省18年度新規裁定者の年金額の例)。夫婦合わせれば月20万円強となり、なんとか暮らしていけるが、熟年離婚したら、このわずかな年金を取り合うことになり、結局、夫婦共倒れだ。
「退職したら時間もあるので、これまで妻に家事を任せていた夫も、炊事、洗濯、掃除を分担して、夫婦で仲良く暮らしていけば、経済的な破綻も免れるのではないでしょうか」
そして、70代のうちにやっておきたいのがエンディングノートの作成だ。人生の最終段階における医療や介護の受け方、葬儀やお墓に関する希望などを記入し、これからの人生をどのように暮らしたいかを周囲の人に知らせておくのだ。葬儀やお墓に対する考え方は多様化しており、シンプルにすれば、費用は抑えられる。
17年の65歳の人の平均余命は、先に述べたとおり男性19.57年、女性24.43年。65歳で定年したあとも、これだけの人生が続く。満足のいく暮らしを送れるようにするためにも、それぞれの年代で起こりうる破綻リスクを知り、早め早めの準備をしておこう。
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早川幸子新聞、雑誌等に医療や社会保険などお金の問題を寄稿。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』など。

藤川 太(ふじかわ・ふとし) 生活デザイン代表取締役
慶應義塾大学大学院理工学研究科を修了後、自動車会社勤務を経て、ファイナンシャル・プランナーに。2001年に家計の見直し相談センターを設立。『やっぱりサラリーマンは2度破産する』『年収が上がらなくてもお金が増える生き方』など著書多数。
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■▼【図表】70代の「お金の未来年表」


(フリーライター 早川 幸子 撮影=石橋素幸 写真=iStock.com)
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