- 2019年01月08日 09:15
「安倍1強」に終止符を打つ方法はあるか
2/2「首相の専権」と仰々しく語られる衆院の解散権
沙鴎一歩も国会を強くすることには賛成である。前述したように「安倍1強」のもとでは権力のバランスに欠くからだ。
朝日社説は権力分立の重要性を次のように指摘している。
「議院内閣制の下では、内閣とそれを支える衆院の多数与党が一体となっている。与党は数の力で政府提案を次々通していこうとする」
「一方で国会には、政権中枢や各省庁の活動を監視する役割がある。行政府VS.立法府という権力分立の構図である」
朝日社説は「衆院の解散権」の問題点についても言及している。
「『首相の専権』などと仰々しく語られる衆院の解散権にも、縛りをかけなければならない」と訴え、「安倍政権の不意打ち解散戦略は、改革の眼目の一つだったマニフェスト選挙を台無しにした。大義も争点も不明なまま、有権者は投票を強いられた」と指摘する。
なるほど、“衆院解散→総選挙”は安倍首相に限らず、国会運営に切羽詰まったときの政権がよく使う手法である。郵政民営化を訴えた小泉純一郎元首相の郵政解散は記憶に新しい。古くは吉田茂元首相の「ばかやろう解散」なんていうのもあった。
参院そのものが十分機能していない
朝日社説は「解散権の乱用問題は古くから論争の的だ。権力の振り分け方を正すという観点から、そろそろ再考すべきである」と主張し、参院の在り方にまで触れる。
「政治改革後の歴代内閣は、長期安定政権と、『ねじれ国会』に由来する短命政権とに二分される。その意味で、参院への権力の割り当てと、その役割の見直しも避けて通れない。『地方の府』にする案をはじめ、議論の積み重ねはある」
ここで朝日社説が指摘する「参院への権力の割り当て」の意味がよく分からない。解散権の乱用は確かに問題だが、何らかの形で参院に権力を与えたとしても解散権の乱用が是正されるとは限らない。参院そのものが十分機能していないところに問題があるからだ。参院廃止論も出ているぐらいだ。
たとえば法案の審議を衆院から始めるのではなく、参院先議といって最初に参院で審議してから衆院での審議に移るやり方をもっと増やして参院自体を活発化させる方法もあるだろう。
「最も警戒すべきなのは、米国と中国の覇権争いによる混乱」
次に読売新聞の1月1日付の社説を読んでみよう。30年前の1989年、平成元年までさかのぼって政治の変遷から書き出し、内閣や国会の権力の在り方を論じた朝日社説とは違い、読売社説は米中の対立に対し、日本がどう臨んでいくべきかを主張している。
書き出しはこうだ。
「米国が内向きの政治に転じ、欧州は、ポピュリズムの横行と英独仏の混迷で求心力が低下した。世界の安定を支えてきた軸が消えつつあるようだ。こうした中で、最も警戒すべきなのは、米国と中国の覇権争いによる混乱である」
なるほど、中国は世界屈指の消費者数と巨大な産業構造を駆使し、そのGDPは30年間で30倍という飛躍を遂げた。アジア諸国を巻き込む一帯一路という巨大経済圏構想も掲げている。南シナ海での人工島建設や日本固有の領土である沖縄・尖閣諸島への進出など軍事力も想像以上に増強している。ここ数年、宇宙にまで軍事触手を伸ばしている。IT(情報技術)やAI(人工知能)の開発も目覚ましい。
米国が警戒するのは当然だ。米国と中国の覇権争いによる深刻な混乱も起きるだろう。
「米国の同盟国であり、中国と深い関係にある日本」
そんな状況下で日本はどう動けばいいのか。
「世界1位と2位の経済大国の対立は、安全保障や通商、ハイテクなど多岐にわたり、相当長い間続くと覚悟すべきである」
「米国とソ連による冷戦の終結宣言から30年、『新たな冷戦』に怯え、身をすくめていても意味はない。米国の同盟国であり、中国と深い関係にある日本こそが、地域の安定と繁栄を維持する責務を、粘り強く果たさねばならない」
読売社説はもっともらしいことを主張するが、果たしていまの安倍政権に地域の安定と繁栄を維持することなどできるだろうか。数の力に頼り切っている安倍首相に中国の習近平(シーチンピン)国家主席を制するだけの大きな器があるとは思えない。
ただ、読売社説の「米国の同盟国であり、中国と深い関係にある」という指摘はうなずける。いまこそが日本のチャンスなのかもしれない。安倍首相がそのチャンスに早く気付いて日本の外交に生かすことを期待したい。
米国と中国の手綱を取る芸当は無理だ
読売社説はさらに日本の役割を指摘していく。
「日本は、各国首脳との会談や、先進7か国(G7)、6月に大阪で開かれる主要20か国・地域(G20)などの会議で、米中対立を緩和させるための議論を主導すべきだ。孤立しがちな米国と各国の仲介も日本の役割となろう」
「中国の強権的な拡張路線は、曲がり角に来ている。このままでは行き詰まることを、日本は習氏ら指導部に指摘すべきだ」
「中国が対米関係の悪化で、対日外交に意欲を示す今は、日中が率直に話し合える機会である」
読売社説の指摘は的を射ているだろうが、やはり問題は安倍首相の力量だ。北方領土の返還交渉でロシアのプーチン大統領に手玉に取られ、交渉自体を河野太郎外相に丸投げするようなやり方では国際社会から相手にされなくなる。
基本的に安倍政権を支持するスタンスを取る読売社説としては、安倍首相を持ち上げたいのだろうが、米国と中国の間に入って両国の手綱を取るような芸当は、安倍首相にはできまい。そのあたりを社説を担当する論説委員たちは、どう考えているのだろうか。一度、彼らの論説会議を聞いてみたい。
(ジャーナリスト 沙鴎 一歩 写真=時事通信フォト)
- PRESIDENT Online
- プレジデント社の新メディアサイト。



