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株式会社化する日本について

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鳩山・木村鼎談本の「第二章」からちょっとだけ抜き出し。

僕は「株式会社化」した政権だというふうに見ています。安倍政権は、僕が生まれてから見てきた中で、「株式会社的である」という点で際立っていると思います。

大した政治的見識もないし、指導力もない。統率力もないし、器量も小さな人物が、これほど長期にわたって政権を安定的に維持できているというのは、実際には彼の政治的な力というよりも、彼のキャラクターが株式会社のCEOのキャラクターに期待されているものと一致しているからだと思います。

第一は、当期利益第一主義です。「いまさえよければ、それでいい」という刹那主義です。株式会社の経営者は四半期でことの適否を判断する。それも当然で、この四半期を乗り切らないと先がないからです。三〇年後、五〇年後の展望なんて語ってもしかたがない。今期、利益が出せなくて、株価が下がったら、来年はもう会社自体が存在しないかも知れない。だから、先のことなんか考えても仕方がない。あとにどのような大きなリスクを抱え込むことになっても、とにかく今期の利益を上げることが最優先する。

それが当期利益至上主義者の考え方ですけれど、安倍政権はまさにそれです。そして、それは実際に多くの企業経営者にとって親和性の高いマインドなんです。

第二は、自分たちの経営の適切性を、非常にシンプルな数値で示そうとすることです。企業なら、売り上げ、利益率、株価といったところで経営の適否は判定できます。安倍政権が政権の適切性の指標として採用しているのはいまは株価だけです。株価が高値であるということ一事をもって「われわれの統治は成功している」と言い張っています。

もう一つ、選挙結果の数字もよく使います。議席占有率が高いのは、民意を得ているということだから、われわれは何をしてもよいのだというロジックを駆使している。

でも、株価なんか、日替わりで動く指標です。そんなもの、日本の将来を三〇年、五〇年、一〇〇年のスパンにかかわるような政策の適否を判断する上で何の参考にもならない。これから先、超少子化、超高齢化によって、日本の国の形は激変します。AIの導入による雇用喪失もいくつかの産業セクターで、短期的かつ急激に起きることが確実です。原発だって、いつ次の事故が起こるかわからない。福島だって、事故処理は少しも片づいていないし、復興にはほど遠い。

長期的視点に立てば、先に備えていますぐに手を着けるべきことは無数にあるんです。でも、安倍政権はそういう長期的な枠の中での話にはほとんど関心がない。目先のことしか考えない。一週間とか一月という短期的なスパンの中での政治的な効用、それだけしか考えていない。

佐川財務局長が、今度国税庁長官に登用されましたね。首相に対する忠誠を評価した論功行賞人事ですけれど、それによって「首相におべっかをつかうといいことがある」ということを公務員たちに周知徹底させるという効用はあった。でも、この人事で国民の納税意欲は有意に減退するわけじゃないですか。

国民の納税意欲を損い、財務省という役所に対する国民的な信頼を傷つけるような人事なわけです。長期的に考えたら、巨大な国益損失につながるわけですけれども、自分のために嘘をついた一役人を抜擢してみせる。そうすると、短期的には、そこに努力と報酬の相関関係が可視化される。首相におもねる行動をとれば、必ず報奨が与えられる。それが確約されている。信賞必罰のシステムが完成していること、それを誇示することがこんどの国税庁長官人事のほんとうの目的だと思います。

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