- 2019年01月04日 10:00
実家のお雑煮は隣の地域となぜ違う?ダシ、餅の形、具材…歴史とつながる日本お雑煮文化論
2/2夫婦ゲンカは「ハイブリッド雑煮」で回避
—多くの地域では野菜と少しの肉が入ったシンプルなお雑煮の一方で、北海道や東北などではイクラなどを使った豪華なお雑煮があります。

見た目にも豪華なお雑煮ですね。この違いは簡単で簡素なお雑煮を食べている地域は、おせち料理を食べるんですよ。逆に豪勢なお雑煮を食べている地域は、おせちをあまり食べないと言えるでしょうね。
—なるほど。豪華なおせちがない分、一点集中だと。あとお雑煮って、お正月以外にはあまり見ない野菜もたくさん使われていますよね。
例えば、最近だと金時人参って東京でもよく目にしますが、関西地区で使われている雑煮大根という細い大根はあまり見かけません。熊本や大分では、水前寺もやしというのが正月前の5日間くらいだけ出回ります。
—聞いたことがありませんでした。
福岡なら、かつお菜という誰もが知っている有名な野菜があるけど、東京で知ってる人がどれだけいるのか。そういうことが往々にしてあるんです。これだけの情報・物流社会で廃れつつある地域野菜ですが、お雑煮で使われてゆるやかに残ることがあるんです。こうしたことのもお雑煮の役割なのかなと思っています。
年末に各地のスーパーに行くと、その土地のお雑煮に使われる具材がずらっと並べられていて、とても面白いんですよ。札幌だったら鶏ガラが並びます。
—鶏ガラを使うんですか。
札幌のあたりでは、鶏ガラダシベースのお雑煮が多いんです。そういうことを知るために、私も各地のスーパーを全部見て回りたいんですけど、年末年始は一番忙しいのでなかなかそれができず。
—今聞いただけでも、基本は共通していながら、具材やダシ、お餅の形でこれだけ様々なお雑煮の種類が生まれるんですね。
そうですね。すぐ近くの地域でも、京都や大阪の人は奈良のお雑煮に、きな粉が付いていることは知らないと思いますよ。
—きな粉!そういう自分が慣れ親しんだお雑煮を見ると驚いてしまいます。
例えば西日本の人が東京の人と結婚すると、お互い見たことないお雑煮じゃないですか。それが受け入れられないと大変ですよね。受け入れられるなら相手の出身地域にお雑煮に合わせてしまってもいいし、それができなければ、元旦と2日で味を変える工夫をしたり、「ハイブリッド雑煮」にしたりしてしまえばいいんですよ。
—ハイブリッド雑煮ですか。
お互いのお雑煮のいいとこ取りをしてハイブリッド化するのはよく見られる現象ですよ。例えば博多ではお雑煮にブリを入れますけど、東京の人と結婚したらブリも鶏肉も入れて、というお雑煮が誕生しますよね。
お雑煮を食べない家庭が増えている
—粕谷さんはこういう各地のお雑煮レシピを探して、全国を回っているんですか?
そう、お雑煮ってレシピとしては一般化されてないんです。おそらく1年に1回しか食べないものだから、家庭の味が伝えられてきたんだろうと思います。年中食べるものだったら、もっとアレンジが広がってお雑煮自体もどんどん変化しているはずです。
—日本のカレーがまさにそういう状況ですね。
そういう意味では、これだけ地域性に富んだ伝統あるお雑煮文化が残っているのは、年に1回しか食べない料理だから、ということもできますね。
—毎年、年末が近づくと、地元のお雑煮を語りたがるように思います。
うちのはもっと美味しい!って言い合ってね。私の本を読んだ読者からも「違うよ!うちのお雑煮はこんなものじゃない」って言ってもらえることがよくありますが、私はそれがすごく嬉しいんです。
—ドキッとするのではなく、嬉しいんですね。
本を書くときも、1つの都道府県や地域でお雑煮が1つなわけがないと思っているし、「違うよ」って言ってもらえることでまた新しいお雑煮を知ることができます。お雑煮研究家と名乗っていても、まだまだ知らないものばかりです。
でも、実はお雑煮って今はどんどん食べられなくなってるんですよ。
—そうなんですか。食べる回数が減っている家庭も多そうです。
今はおせちを買う家庭が多いので、お雑煮も作らないようで。さっき話した茶碗蒸し雑煮の福岡県朝倉市はすごく田舎なんですけど、少し前に調査したら1/3の家庭がお雑煮を食べていなかったんです。地方の田舎でもこの状況になっているんですから、都会はもっと食べられないかもしれません。
—そうですね。最後に、改めてお雑煮の魅力を教えてください。
各地によって「自分にとっての普通」にものすごくバリエーション豊かなことではないでしょうか。あと数え切れない物語がある。どのお雑煮もいろいろな由緒やよく分からないルールがあって、うるさいくらい語れるじゃないですか。こういう食べ物は他にあまりないですね。
私がまだ見ぬお雑煮もたくさんあるので、いつか出会えるのを楽しみにしています。お正月は美味しい地元のお雑煮を食べてくださいね。
—今日はありがとうございました。
プロフィール
粕谷浩子
株式会社お雑煮やさん 代表取締役
全国のお雑煮を食べ歩き、ご当地雑煮の商品化を進める日本で唯一のお雑煮マイスター。全国各地でご当地の銭湯で主婦に声をかけ猛烈アタック。家におじゃましてお雑煮を食べさせてもらう猪突猛進型の商品開発スタイルがメディアで話題に。
次回イベントは1月12日開催の第一回さかばのどようびお雑煮まつり。
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