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変わる大卒就職、どんな力が必要?

高大接続改革が進む一方で、日本経済団体連合会(経団連)が就職活動ルール(採用選考指針)の策定をやめるなど、大学生をめぐる環境が具体的に変化してきています。これから大学に進もうとする人には、どんな力が求められるのでしょうか。
経団連がこのほど公表した「今後の採用と大学教育に関する提案」をもとに、見ていきましょう。

文理を越えて情報科学や数学、歴史、哲学を

 経団連は11月にまとめた報告で、情報社会に続く「Society(ソサエティー)5.0=超スマート社会」を「創造社会」と位置付け、デジタル革新と多様性によって、企業も、人材育成も、行政・国土も変わっていく必要性を強調していました。今回の提案は、それも踏まえたうえで、主要会員企業にもヒアリングを行い、課題を整理したといいます。

7~9月に行ったアンケートによると、会員企業が大卒者の採用選考に当たって重視したのは「コミュニケーション能力」(82.4%)が16年連続の1位で、次いで「主体性」(64.3%)、「チャレンジ精神」(48.9%)、「協調性」(47.0%)、「誠実性」(43.4%)が高位に挙がっています。
提案では、これらの他に▽創造性▽行動力▽責任感▽論理的思考能力▽忍耐力……などが、社会人の資質として重視されていると指摘。学生に対しては、リベラルアーツ(一般教養)とともに、語学力や情報リテラシー(活用能力)、地球規模課題や世界情勢への関心、ボランティア活動や起業などの経験を求める企業が多いとしています。

そこで大学教育に期待する改革として、Society5.0時代の「VUCA(ブーカ)」(Volatility=激動、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=不透明性)も意識して、(1)文系・理系の枠を越えた基礎的リテラシー教育 (2)アクティブラーニング(AL)と成績要件・卒業要件の厳格化 (3)グローバル化のさらなる推進 (4)情報開示の拡充と学修成果の見える化 (5)初年次(1年生)におけるキャリア教育 (6)リカレント教育(社会人の学び直し)の拡充——を挙げています。
とりわけ(1)では文系・理系を問わず情報科学や数学、歴史、哲学などの基礎科目を全学生の必修科目とすること、(2)ではゼミ形式や少人数のグループによる課題解決学習(PBL)などを求めています。

大学側も既に始める「高大接続改革」

経団連は、こうした採用と教育の在り方を大学側と共有するため、1月に「採用と大学教育の未来に関する産学協議会(仮称)」を設置し、継続的に対話していきたいとしています。

ただ、大学側もゼロから始めるわけではありません。高大接続改革では、大学入学共通テストをはじめとした大学入学者選抜改革が注目されがちですが、実際には大学教育改革が先行しています。それも、企業をはじめとした社会の信頼に応える卒業生を輩出するための方針(ディプロマ・ポリシー=DP)をもとに、カリキュラムや授業方法を工夫し(カリキュラム・ポリシー=CP)、そうした教育に見合った学生を入学させるための選抜方法を考える(アドミッション・ポリシー=AP)という流れです。


大学教育に求められる力は、高校までに身に付けた資質・能力をもとにして、しっかり伸ばす。それこそが、大学教育・高校教育・入学者選抜が三位一体となった高大接続改革の本質です。「社会に開かれた教育課程」を目指す高校以下の教育でも、将来の社会で活躍できる力を付けるのだということを、常に意識しておく必要があるでしょう。

(筆者:渡辺敦司)

※経団連 今後の採用と大学教育に関する提案
http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/113.html

※同 「Society 5.0-ともに創造する未来-」
http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/095.html

渡辺敦司
1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。連載に「『学力』新時代~模索する教育現場から」(時事通信社「内外教育」)など。

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