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塚本晋也監督『斬、』が描く「使ったらとりかえしのつかないもの」

塚本晋也監督『斬、』の主役が「刀」である理由

怖え…(観た後なので今もビビっている)


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 11月公開なのにずっと観に行けていけてなかった塚本晋也監督の初の時代劇『斬、』、見てきた。凄まじかった。

 クレジットは「池松壮亮」がトップに来て、間違いなく彼が演じる杢之進(もくのしん)が主人公なのだけど、この映画のもうひとつの主役は「刀」だ(なにしろ最初に出てくるのである)。

 この映画に出てくる刀はどれも、とにかくクセが強い。なによりも「うるさい」のである。手で握り直す音、刃の音、そのすべてが過剰なほどに録音されている。

 これによって刀が、単なる「刃物」「武器」というもの以上に、恐ろしいものに思えてくる。正直、ぼくは途中から、見ているだけで斬られてしまうのではないかという、怖いものに思えてきた。

 塚本監督の真意は分からないけれど、本作の「刀」で描こうとしているのはおそらく、「使わないからこそ意味がある、一度使ってしまったらとりかえしのつかないもの」、武力ではないかと思われる。

 この映画で刀たちが帯びるあの神々しさは、それの象徴のような気がする。「使うことが目的」なのではない。「つかったら終わり」なのである。だからこそ、杢之進はいちどさやから刀が抜かれたことを知ると怯え始めるのである。

 現在の政治情勢を直接的に描く描写は(たぶん)、1秒もない。

 けれど、寓話だからこそ届くメッセージがある。いろいろと緊張感が高まっている今だからこそ「使わないからこそ意味がある、一度使ってしまったらとりかえしのつかないもの」について考えを巡らせるのもいいのではないだろうか。

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