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王者「三菱」VS「三井」を飲み込む挑戦者「住友」。旧財閥の今事情

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共同通信社

三井生命が、今年4月1日付での大樹生命への社名変更を発表しました。三井生命といえば、大正初期に銀座の商店主たちが発起人となって設立され、関東大震災後に三井合名傘下に入って以降、約90年にわたり「三井」を名乗り財閥系三井グループの一員として活動してきた名門生命保険会社です。それが三井の冠を脱ぐというのですから、一大事です。

その理由は、長引く経営不振に苦しむ中で、2015年業界トップの日本生命から8割超の資本を受け入れる状況に転じ、三井は名ばかりの状況に至ったということ。すでに三井グループの社長会である二木会からも脱退しています。この社名変更の裏にある旧財閥を巡る今事情は何なのか、少し探ってみようと思います。

日本経済復興の陰で大きな影響力を発揮してきた「三大財閥」

そもそも若い人たちには耳馴染みの薄い、財閥グループについてから説明しましょう。古くは江戸末期に端を発する主に同族により出資された親会社が、持株会社的に多岐にわたる産業群を支配することで寡占的地位を形成するに至った一大企業グループのことです。

終戦直後の米国管理下において「日本の軍国主義を制度的に支援した」とされ、財閥解体によって一度は解散させられたものの、その後も旧財閥グループとしてのつながりを堅持し、時に強い結束力を見せることで、日本経済復興の陰で様々な影響力を発揮してきました。

中でも三大財閥といわれ、大きな存在感と影響力を表してきたのが、「三菱」「三井」「住友」の財閥グループでした。財閥解体後の彼らですが、「三菱」は「金曜会」、「三井」は「二木会」、「住友」は「白水会」と名乗るメンバー企業トップ同士の親睦団体を中心として、確固たる横のつながりを持ち続けてきました。それぞれのクループはその結び付きの特徴から、「組織の三菱」「人の三井」「結束の住友」ともいわれてきました。

さらに突っ込んで三大財閥グループの特徴をあげるなら、「三菱」は三菱UFJ銀行、三菱重工、三菱商事といった業界トップに君臨する、いわゆる日本のリーダー企業群を形成していること。

「住友」は財閥グループとしての歴史は最もありながら、「白水会」はグループ内企業に、業界を牽引するトップ企業が少ないということ。しかしながら、泥臭い商売も厭わない関西系企業の代表であるという強みも持ち合わせている点も特徴です。

「三井」は名門企業が揃っていながら、旧三井銀行、三井信託銀行、三井生命…、事あるごとにクローズアップされるグループ内金融機関の弱さが、ある意味特徴となってきました。

三井の”吸収合併”で、三菱の地位を狙う住友の野望

Getty Images

これらの特徴が、高度成長時代からバブル経済崩壊を経た、低成長時代における各業界中核企業再編の動きに、大きな影響を及ぼしてきたといえます。その最大の震源地ともいえるのが、2001年「三井」「住友」という大財閥のメインバンク同士の統合でした。

当時「三井」グループ内には、何かに付け強引さが目立つ「住友」との統合に大きな反対があったともいわれていますが、グループ各社は金融危機で苦しんでいた当時のさくら銀行(旧称:太陽神戸三井銀行)支援してきたものの支えきれずに、「住友」財閥のメインバンクとの統合を余儀なくされたという流れでした。

その後を見るに、現在の三井住友銀行は、トップ以下大半の役員ポストを旧住友勢が占め、ほぼ旧住友銀行が経営権を握っているといってもいい状況にあります。「三井」グループの統合に対する懸念は、現実のものになってきたといったところではないでしょうか。

このグループメインバンクの統合により、周辺業界における「三井」「住友」の統合も一気に進むことになりました。三井住友信託銀行、三井住友海上火災保険、三井住友建設の誕生は、まさにそれです。

どれも「住友」優勢のイメージでの合併、統合である流れを見るに、「住友」の狙いは、関東の名門「三井」そのものを吸収合併することで、「三菱」を凌駕する我が国産業界のリーダーグループの地位を狙っているに違いない、という大いなる「野望」も見えてきたのです。

三井生命が日本生命からの統合オファーを受けたのは当然の流れ

そんな中で、三井生命はなぜ三井住友生命ではなく大樹生命になったのでしょう。「住友」の中核企業である住友生命は三井住友銀行の誕生以降、三井生命の取り込みを「悲願」としてきたといわれています。

実際、住友生命は苦境に立たされていた三井生命に対して、資金面を含めた各種の業務支援を提供してもいました。しかし、最終的に三井生命が選んだのは日本生命でした。

住友生命は経営状態があまりに悪い三井生命の統合時期について悩んでいたといわれます。そんな折も折、日本生命は第一生命に保険料収入で抜かれるという事態に陥り、三井へのラブコールが同社にとっては渡りに船になったかのように映りました。

「人の三井」は、どちらかといえばお坊ちゃん体質で温厚な印象。一方、「結束の住友」には、関西系ならではのアクの強さがにじみ出ています。

規模の上では対等合併であった三井住友銀行でさえ、15年余りの月日を経れば住友一色になった事実を鑑みれば、三井生命が住友生命との統合を余儀なくされるなら、早晩組織が実質住友に塗り替えられることは、100%確実であったといっていいでしょう。三井生命が日本生命からの統合オファーに飛びついたのは、当然の流れであったのかもしれません。

「住友」にとっては、三井生命の規模以上に「逃した魚は大きかった」のではないでしょうか。「三井住友生命」が誕生して、世間にまたひとつ「住友」による実質「三井」吸収が増えたとアピールすることができたなら、周囲への影響を考えればそのメリットは計り知れず大きかったハズですから。

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