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洋服の福袋 中身・サイズを見せて売る「儲け」のカラクリ

中身や値段が分からない福袋のほうが珍しくなった

 かつて正月の「福袋」といえば、開封するまで詰め込まれた商品や総額が分からないのが当たり前だったが、いまやご丁寧に中身が紹介されているものは多い。特に洋服の福袋は、商品の内容だけでなく、サイズ別に売られているのも普通だ。一体どうしてなのか。ファッションジャーナリストの南充浩氏が福袋商戦の裏側を明かす。

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 洋服業界にとって、お正月は冬の大バーゲンの時期です。コートやダウンジャケット、ウールのセーターなどの高価格品が値下がりするので、アパレル不況と言われながらもそれなりに毎年賑わいます。盛り上がりに欠ける夏のバーゲンとは大違いで、値下げしているので利益率は低下しますが、売上高だけでいえば、年間でも屈指の書き入れ時といえます。

 冬のバーゲン初日を飾る恒例の目玉商品といえば、各ブランドの「福袋」です。洋服や服飾雑貨が数点入って3000円~1万円くらいの価格なのでお得感があるということで一時期は人気を集めました。今では正月の風物詩にもなっています。

 ファッションブランドに福袋という売り方が広がったのは、2000年ごろのことでした。その後好評に推移し、2010年ごろにその人気がピークアウトしていったと記憶しています。

 始まった当初は、年間を通じた売れ残り在庫を5点~10点詰めて1万円くらいで売り出すブランドがほとんどでした。私も2000年ごろに当時話題だった福袋を家族(女性)に買って帰ったことがあります。

 欧州インポートブランドの詰め合わせ福袋を買って帰ったのですが、自宅で開けてみると入っていたのは、正月にもかかわらず夏物の半袖ニットや薄手生地のブラウス、薄手生地のワイドパンツなどで、冬に使えそうなアイテムは1点か2点しかありませんでした。明らかに夏物の在庫を詰め合わせたことが窺えます。

 これに懲りてそこから福袋を買わなくなりましたが、福袋の当初の意義からすると、こういう在庫品の詰め合わせというのがもっとも適っているといえます。

 2010年ごろになると、「中身の見える」「中身がわかっている」福袋や「サイズ別に分けられた」福袋などが登場します。現在では各ブランドの福袋はどれもあらかじめ中身もサイズもわかっています。2000年頃に私が買ったような明らかに夏物の在庫の詰め合わせ福袋なんて売っているブランドはありません。もしあったとしてもちっとも売れないだろうことは容易に想像できます。

 しかし、中身がわかった福袋が登場すると、「どうしてこんなにきちんとサイズ別に分けることができるのか?」という疑問も飛び出すようになりました。本来は売れ残りの在庫品を詰め合わせていたはずの福袋なのに、なぜか色柄別・サイズ別に整然と分けられて売られるようになっていたからです。

「そんなに都合よくサイズ別に在庫が残っているものなのか?」という疑問を抱く人が少なからず出てきたのは当たり前のことだといえます。

 この疑問に対してアパレル業界から出された答えは、「福袋用に色柄別・サイズ別に商品を作っているから」というものでした。このカラクリはあっという間に広がり、少しでも衣料品に興味のある人にとっては今では常識となっています。

 2019年の年初を飾る福袋の多くも同じカラクリで生産されています。どのアパレルブランドも福袋用に色柄別・サイズ別に生産して正月商戦に臨んでいるのです。

 そのため、福袋の中に入っている商品はすごくお買い得かというとそうではありません。値段相応のコストで生産されています。たとえば5点で1万円という福袋があったとします。売れ残り在庫を詰め合わせた場合は別として、福袋用に作っているとしたら、単純に販売価格で元が取れるようなコストで製造されているのです。

 5点も入って1万円と聞けばお買い得に感じますが、1点当たりの平均販売価格は2000円で、それでも利益が稼げるように製造原価が抑えられています。だいたい原価が30%程度だとすると600円足らず。そのクオリティが高いかどうかは言わずもがなです。

 そんなカラクリが広まってか、福袋人気は往年ほどではありません。2015年頃から福袋の売れ行きにはブランド間で格差が生まれるようになりました。もちろん発売前から行列ができるブランドもありますが、1週間後もまだ福袋が残っている店もあり、“二極化”が進んでいます。恐らく2019年の正月はその格差がもっと広がることになるでしょう。

 売れないブランドは福袋を3割引や半額にしてやっと売りさばけるという状態で、ただでさえ利益率の低い福袋を値下げして売るという本末転倒が起きているのです。

 ただ、そこまでブランド格差が開き始めているのに、福袋をやめるブランドはいまだに出てきません。なぜでしょうか。そこにはアパレル企業特有の「目先の小銭に飛びつく体質」が色濃く反映されているからです。

 もうかれこれ10年以上福袋を売り続けていると、福袋の売上高が実績として計上されています。売れないと言っても、1日に5個くらいは確実に売れますから、価格が1万円だと1日あたり5万円の売上高はあるわけです。それが正月5日間売れると、25万円の売上高が発生します。

 それこそ「アパレル不況」ですから、福袋の代わりに1日に5万円の売上高を稼いでくれるような商品はそう多くはありません。ですから売れていないブランドでも福袋を廃止してしまうことができないのです。

 目先の1日5万円の売上高を捨てきれないことがアパレル各社の現状です。ですから、今後、余程ひどい売り上げ不振に陥らなければ、福袋が廃止されることはないといえます。もちろん、売れているブランドはこの限りではありませんが、売れていないブランドは思考停止のまま“惰性”で福袋を存続させるほかないのです。

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