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「変わるアジアのパワーバランス」 Japan In-depth創刊5周年シンポ その2

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島田洋一氏(福井県立大教授)は「拉致問題解決に向けた政府への注文と懸念」について話した。

▲写真 島田洋一 福井県立大学教授 ©Japan In-depth編集部

島田氏は以下のように発言した。

「拉致問題に特化してそこから何が見えるかを考えたい。安倍首相は若い頃から拉致問題に取り組んできて、救う会副会長の立場で安倍首相とは何度も話をした。首相がどのようなことを考えているかわかっているつもりだが、最終的には日朝首脳会談の形を通じて解決しなければならない。これは首相自身が何度も繰り返している言葉だ。

大事なのは第一次小泉訪朝形式であってはならない、第二次小泉訪朝形式でなければならないということ。これは安倍さんも十分把握していることだと思う。第一次小泉訪朝の時は外務省主導で将来的な日本の支援の話がメインで、拉致被害者は5人だけ生きていると。その5人についても彼らを日本に帰すつもりは全くなかったわけだ。北朝鮮はむしろ『日本にいる両親に北に会いに来て欲しい』と言わせて、首尾よく日本から家族が北朝鮮に会いこさせようとした。そうすると『日本でとにかく救出運動はやめてくれ』、『お父さんが救出活動をやり続ける限り自分たちの命は危ない。孫がどうなってもいいのか』などということを拉致被害者に言わせて親を黙らせようと北朝鮮は進めてきた。幸い日本の世論の怒りの声もあって、その5人は日本に帰ってくることになった。

▲写真 日朝首脳会談前に握手を交わす両首脳 平成16年5月22日、小泉総理は平成14年9月以来、1年8ヶ月ぶりに北朝鮮を再訪問し、金正日国防委員長と首脳会談を行った。 出典:首相官邸

ただ、外務省は1次帰国という形で北に戻すつもりだったわけだが。北朝鮮はまた仕掛けてくると思うのでそれは排除しなければならない。第二次訪朝形式というのは、小泉さんが行って事前に話し合いをつけた上で帰りの飛行機に拉致被害者の子供を乗せて帰ってきたわけだ。

▲写真 24年ぶりの拉致被害者の帰国 2002年10月15日 拉致被害者5名(地村保志さん・富貴惠さん、蓮池薫さん・祐木子さん、曽我ひとみさん)が帰国し、家族との再会を果たした。 出典:外務省

今度もし日朝首脳会談を安倍さんが北朝鮮でやるとした場合、帰りの飛行機に横田めぐみさんを、拉致被害者を全て乗せろと合意を取り付けた上で行かなければならない。いまはそのための水面下の交渉の段階だと考えている。ちなみに横田めぐみさんに関しては生存しているとの複数の情報を得ているので、私個人は生きておられるのではないかと確信している。

[画像を元記事で見る]

問題もある。北村滋内閣情報官が北朝鮮側と接触したとの話が出てくるが、相手は統一戦線部だ。統一戦線部は第一次小泉訪朝時に『5人だけ生きている。あとは全部死んだということでいきましょう』というシナリオ書いた連中だ。そのため、そのシナリオで行けると主張し続けないと自らの命が危ないという連中だ。北村氏は恐らくそういう連中であっても相手方の情報を取ろうということで会っているのだと思うが、その北村氏接触の情報が表に出ると統一戦線部ルートが極めて重要なものであるかのようにクローズアップされてしまう。

▲写真 北村滋内閣情報館 出典:内閣官房

リークしているのは外務省であることは間違いない。外務省は自分たちのルートを中心にしたいがために、北村氏ルートを潰そうと『北朝鮮側に北村とあってもすぐ情報が漏れるからやめておけ』というメッセージを送っているわけだ。国内の勢力争いでリーク合戦をしていると相手の思うツボになる。北朝鮮は、金正恩と金与正(キム・ヨジョン)、この2人が権力を持っている。そこにルートをつけないとお話にならない。保身にわとらわれている下の連中に会っても仕方がない。金与正と話をまとめるルートを今どこまで日本政府が進めているのか明確なところは分からない。本筋のところでしっかり話をつけていってもらいたい。

▲写真 米朝首脳会談で署名する北朝鮮の金正恩委員長と金与正(キム・ヨジョン)党第一副部長(一番左) 出典:Twitter Donald J. Trump

私はトランプという人は非常に俗悪な男だが、非常にしたたかな人間だと思っている。人事は政策、パーソナルはポリシーというが、彼の人事を見ていると極めて理念的にも明確な強硬派を国家安全保障補佐官に据えている。それだけでも私は安心できると思う。ボルトンは北に先制攻撃しろと主張してきた人だ。北がまたミサイルを売ったり、核実験をしたりすると、それこそトランプは一夜にして態度を変えるだろう。

『人間の屑だ』とトランプなら言うだろうし、側近ボルトンも軍事攻撃を主張しかねない。そういう圧力を今アメリカ側はかけている。一番大切なのは制裁をしっかり維持して抜け穴を防ぐこと。北朝鮮にとっては、お金を取ろうとしたら日本からしかないとこちらに寄ってくる。トランプはシンガポールでそういうことを言っている。核を完全廃棄したら制裁を解除するし、そこから先の経済援助が欲しければ、それは日本に頼めと言っている。これをアメリカがしてくれるというのは大変ありがたい話だ。アメリカはマキシマム・プレッシャー、最大限の圧力を維持するという言い方もしており、抜け穴を塞ぐ作業をどれだけできるのかということがポイントになってくる。

最大の抜け穴は韓国政府で、韓国の様々な代表団が北にしょっちゅう行っている。ホテル代の名目で2、3千万の金を置いてきたりしていると聞く。アメリカの財務省当局や在韓米大使館が韓国の大手金融機関に対して北に変な格好で金を渡したら金融制裁の対象にするぞという脅しをかけているようだが、日本もそれに協力して、韓国も制裁対象になるのだという意識で厳しく接していかなければいけない。

▲写真 北朝鮮金正恩委員長と握手する文在寅韓国大統領 2018年4月27日 出典:Korea.net

最後に、第1次小泉訪朝を仕切った田中均氏が、合同調査委員会を設置して拉致被害者の安否について北朝鮮と日本が共同で調べるという提案をしたらどうかと言っている。しかし、我々は以前からこの提案を批判している。安倍首相も官房長官当時に『犯人と一緒に調べようというのはおかしい』と言っていた。安倍首相が在任する限り、そんな提案に乗る心配もないとは思うが。

▲写真 田中均 日本総研国際戦略研究所理事長 2015年5月27日 出典:公益社団法人日本記者クラブ

この合同調査委員会の発想は、北朝鮮が拉致被害者はみな死亡したとの返答を出してくることを前提として、しかもそれを受け入れることを前提として、では実際どうなのかを調べましょうということにつながる。北朝鮮に行って本当にしっかりした捜索ができるはずはないわけで、その捜索を時間かけてやっていますという、世論をもみ消すための枠組み作りだ。そのように拉致問題をごまかして日朝国交正常化に持っていきたいという外務省的な、田中均氏の発想になるわけだが、こういうものをしっかりとまず潰さなければならないと思う」。

(その3に続く。その1 全5回)

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