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性犯罪から少女たちを守る ピンクのカフェバス「Tsubomi cafe」運営者に聞く児童買春の実態

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「なんか家に帰りたくないな…」と誰もが一度は思ったことがあるのではないだろうか。そんな思いを胸に都会の街を彷徨う少女を性被害や虐待から守るために、ピンク色のバスが毎週水曜日の夜に渋谷か新宿に現れる。

バスの名前は「Tsubomiカフェ」。10代の少女限定で、食事をはじめ、飲み物やWi-Fi、充電スポットを全て無料で提供している。少女たちが「神!」と思わず叫んでしまうようなバスを運営する、一般社団法人Colabo代表の仁藤夢乃さんに話を聞いた。【取材:清水かれん】

一般社団法人Colabo代表の仁藤夢乃さん

ーーTsubomiカフェで少女たちを支援しようと考えたきっかけは何でしょうか

2011年から、虐待や性暴力被害にあうなどした中高生世代の少女たちを支える活動を続けています。夜の街を実際に歩き、彷徨っている子たちに声をかけて出会ってきました。

街を彷徨っている少女たちに声をかけるのは、性売買の斡旋者や買春者ばかりで、性的搾取を目的としない大人たちがもっと彼女たちを気にかけて、声をかけ、危険につながる以外の選択肢を提示するべきだというところから始まった活動です。

具体的な活用としては、相談にのったり食事提供をおこなったり、シェルターへの宿泊支援や自立支援をおこなってきました。

しかし、街で声をかけるという方法だけでは、なかなか関係性をつくりにくいなと思っていたところ、韓国でおこなわれている支援バスの活動を知ったんですね。東京でもこの活動が出来たらと、Tsubomiカフェを始めました。

街で突然「泊まれるところがあるよ」と言っても少女たちは怖いですよね。でも、バスを拠点として、少女たちのいる街へ出て声をかけた時に「近くでバスカフェをやっているからおいでよ」と、気軽に立ち寄ってもらえますし、顔が見られる関係をその場でつくる事ができ、Colaboを利用してもらいやすくなると思いました。

バスにテント、椅子まで鮮やかなピンクが可愛い。友達同士で来る少女たちもおり、笑い声が溢れる空間だった

――仁藤さんと話す少女たちがとてもいい笑顔で楽しそうなのが印象的でした。運営の上での工夫はありますか

少女たちと「普通」に接していますね。大人が「してあげる」場所ではなく、少女たち自身が自由に過ごせる場所にしたいです。支援される/する関係性ではなく、バスカフェに来る中高生たちと一緒にこの場をつくっていく。用意しているものは少女たちと接し、話していく中で、食事を作っている方などと連携してニーズに合わせるようにしています。

「おでんあるよ」の声にみんなが湧き、寒空の下、温かいおでんは少女たちに大人気。少女たちに好みの具などを聞いていると食事担当の支援者が話してくれた

他国から遅れをとる日本の行政の対応

――Tsubomiカフェは韓国でおこなわれているバスをモデルにしたそうですが、韓国と日本の支援の差は感じますか

日本も韓国も、家に居られずに街を彷徨っている子どもたちが大勢おり、共通の社会問題です。

しかし、韓国はソウルだけでもそうした青少年を支えるバスの運営を7〜8団体がおこなっており、街中に気軽に寄ることが出来る「カフェ兼シェルター」を行政の委託で運営しているところもあります。一方、日本のシェルターは隠れ、社会から隔絶された場所にあります。そうしなければ安全を確保出来ない事情ももちろんありますが、支援施設の多様性、選択肢の多さから見ても、家で安心して過ごせない中高生世代支える体制は日本より韓国の方が整っていると思います。

――日本の支援が韓国よりも遅れを取っている理由はなんでしょうか

日本では、家に帰れず、街やネットを彷徨うハイティーンの子どもたちを「非行少年」「家出少女」など、「悪い子」「困った子」として扱ってきました。でも、本当は彼らが「困っている」んです。しかし、犯罪や性的搾取に関わる子どもたちについても「好きでやっているんだろう」「遊ぶ金欲しさだろう」などと、子どもの問題として語られてきました。また、日本の支援は「申請主義」で、窓口に支援者が待機し「来れば話を聞くよ」というスタンスです。

しかし、困難な状況にある人は「助けて」と言えない状況に置かれている場合も多いのです。色々な人から裏切られ、傷つき、誰を信じればよいのか分からず混乱した状況にあったりもする。自分が何に困っているかを整理して話せる状態にないこともあります。そういう状況にある人が、自分で支援窓口を調べ、電話で予約し、時間に面接に行くなんてハードルが高すぎる。もっとハードルを下げ、間口を広げるべきです。

窓口で困難な状況の人が来るのをただ待つのではなく、こちらから出会いに行くということが必要ではないでしょうか。

――日本の行政の対応はどう感じられていますか

支援を必要としている少女たちに”出会えていない”事実を認識していない行政の方がほとんどです。「私たちのところに来るのは、本当に困った段階でしか来ないのよねぇ」と言われる方もいましたが、本当に困っている子は窓口に行けないよ。とやるせなさを感じます。

Colaboは行政と連携も行なっていますが、私たちが出会った子たちですら行政につなぐ事は難しいです。やはり、これまで行政や児童相談施設に不適切に扱われてきた不信感から時間がかかります。

「お金を出したんだから」無理に個人情報開示を求める行政

――今回のバス事業には行政のサポートもあったそうですね。その際に支援の考えに違いなどは生じませんでしたか

これまで私たちは公的な資金を受け取らず、個人の方からのご寄付や、民間の助成金や講演などの事業収益で運営してきました。

ですが、今年度バスの事業も含めてColaboの活動が厚労省と東京都の「若年被害女性支援モデル事業」というモデル事業に選ばれ、10月から国のお金が一部入ることになりました。なのですが…活動の必要資金10分の1にも満たない金額の支援にも関わらず、行政の方がすごく支配的で、関わった少女たちの個人情報を教えろと後から言われたんです。

――個人情報の公開は難しいですよね

韓国で行政のお金でシェルターを運営している方と話す機会があり、行政への報告内容について質問をしたのですが、何名が利用したなどの報告はするけれど、重要なことではないから今すぐには思い出せないな、と回答されました。それにすごく驚いて。

日本では、行政への報告業務をおこなうために人件費を付けてくれよ…と思うくらい、あれもこれも全て報告しろと言われてとても大変なのです。

――実際にはどのようなこと要求されるのでしょうか

2週間に一度、東京都に対して関わった少女たちの名前、どこの子か、来た理由、どのような支援をしたかの報告を要求されました。個人情報なので本人の許可なく教えることが出来ないのは大前提ですし、私たちはいつも300人くらいの子たちと関わっており、そんな報告のために時間を割くのは難しいんです。報告しても何をするわけでもないのに。

名前が誰であろうが、何が理由で来ただろうが関係なくて。ただその子たちがバスに来て休みたいとかご飯食べたいとかただそれだけで良いっていう、そういう考え方がないのかなと感じました。管理しようとする考えはやめるべきかと。

Tsubomiカフェに何度も来てくれる子もいます。そうやって何度も顔を合わせて関わっていく中で悩みを打ち明けてくれることもあります。中学生で家を出ようか、と悩んでいる子もいて、「家を出ようと思っていたけど、その日にお母さんが優しくてやっぱり止めようと思った」など気持ちが揺れることも沢山あります。そういった”気持ちの揺れ”にも寄り添いながら付き合っていきたい。命の危機などがある場合、私たちも何らかの対応を考える必要もあるかもしれませんが、何年でもそういう揺れに付き合って、その子の意思を尊重して、選択肢を考えていけたら、と考えています。

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