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2018年の連ドラTOP10発表! ドラマ解説者が視聴率無視で選出

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①企画の勝利『おっさんずラブ』

28日深夜放送の『忘却のサチコ』(テレビ東京系)を最後に、2108年の連ドラがすべて終了。

録画を含めた視聴率の高低に関わらず、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)や『今日から俺は!!』(日本テレビ系)のようなネット上の話題を席巻する作品が産まれるなど、季節を問わず連ドラの話題が尽きない一年だった。

ここでは「朝ドラから夜ドラ、深夜ドラマまで、全国ネットの連ドラを全て視聴している」ドラマ解説者の木村隆志が、一年を振り返るべく「業界のしがらみや視聴率は一切無視」して、独断で2018年の連ドラTOP10を選んでいく。

※ドラマの結末などネタバレを含んだ内容です。これから視聴予定の方はご注意ください。

■10位:単なる「飯テロ」を超えた笑いあふれる芸術作『忘却のサチコ』(テレ東系)

昨年の『さぼリーマン甘太朗』に続いてテレ東がまたもやってくれた。

放送前は「『孤独のグルメ』(テレ東系)の女性版」なんて声もあったが、その食べっぷりと自由度の高さは『さぼリーマン甘太朗』のOL版」。ただのグルメドラマに留まらず、恋や仕事を絡めたストーリーは、そちら専門の作品を上回る仕上がりで、「つらさや哀しさを忘れるためのグルメ」という流れが実に自然だった。

さらに、コスプレ、即興芝居、ミュージカル、ラップなど、変幻自在の演出には笑いがてんこ盛り。作り手たちの発想力と技術力を詰め込んだ「深夜ドラマにはもったいない」ほどの贅沢な作品となっていた。

主演の高畑充希は、今や「何で深夜ドラマに?」と言われる存在になった実力を存分に披露。元婚約者を想う女心、ロボットのように完璧な仕事ぶり、すべてを忘れて食べまくる姿……同一人物の中に3つの人格を体現していた。美声や踊りも披露したことも含めて、意外に現時点での自己ベスト作と言えるのかもしれない。

高畑と吹越満、葉山奨之、池田鉄洋らとのかけ合いも、また極上の味わい。いわゆる「上手い役者」しか使っていないからこそのタイトな空間が生まれ、人気者を優先させざるを得ないプライム帯の作品にはない、テレ東深夜ならではの魅力を放っていた。

作品の中心にあるのは、サチコの純愛と仕事の奮闘であり、どちらかというとグルメは“おまけ”の感覚。それがむしろ、食べることにフィーチャーした「飯テロ」ドラマよりも、料理がおいしそうに見えた。『孤独のグルメ』のファンは、「ストーリーが余計」と言うだろうが、もはや両作は別のジャンルであり、不毛な議論ではないか。

■9位:まさにプロデュースの妙。往年の月9を思わせる『おっさんずラブ』(テレ朝系)

「エッ!? 9位?」と怒る人もたくさんいるだろう。ただ、驚異的な物販力、ロケ地の聖地巡礼、田中圭ブレイクなどの盛り上がりは、その大半が女性層という局地的なものであり、男性層には「ポカーン」という人も少なくなかった。

実際、私のもとには「何であんなに支持されているのかわからない」という雑誌やウェブの男性編集者たちからコメント依頼が続出。2018年最大の話題作であった一方で、幅広い層に支持された作品ではなかったのかもしれない。

とはいえ、その果敢なチャレンジとクオリティに疑いの余地はない。「男同士の恋愛」という設定こそぶっ飛んでいるが、その中身は純度の高いラブストーリー。たとえば、序盤で黒澤武蔵(吉田鋼太郎)が春田創一(田中圭)に、最終回で春田創一が牧凌太(林遣都)に絶叫告白するシーンがあったが、これを見て思い出したのは『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)。往年の月9ドラマを見るような純愛だからこそ、女性層の支持を獲得したのではないか。

「見た目が男同士の恋愛」というだけで、「中身は男女の恋愛と同じ」であり、恋心の描写は切なさにあふれ、奇をてらうようなシーンはなし。男同士の恋愛を特別なものとせず、周囲の人々も最初こそ驚くが、ほどなく受け入れていった。だからLGBT関連の苦情がほとんどなかったのだが、そんなプロデュースのバランス感覚は称賛されるべきだろう。

加えて、田中圭、吉田鋼太郎、林遣都、眞島秀和と、魅力や年齢の異なる実力派俳優をそろえ、一歩間違えたらコントになるハイリスクな作品を成立させたこと。その上で、「シャワー中の熱いキス」「思いがあふれてのバックハグ」など、女性ウケを徹底したことも象徴的であり、それらが熱狂的なファン獲得につながった。

男女のラブストーリー、特に社内恋愛は、「しらじらしい」「嘘くさい」と言われ、ドラマから消えかけている。そんなシチュエーションで、性別や年齢を超えて育まれる愛情を描いた企画の勝利だった。

■8位:「親が見せたくない=子どもが見たい番組」を立証『今日から俺は!!』(日テレ系)

今思えば、2018年最大にして最後のサプライズ作だった。

原作は1980年代の漫画であり、ドラマ版の舞台設定も同じ。すなわち、「元ネタは古い」ことになる。登場人物のほとんどがヤンキーで暴力シーンが多い。さらに、「翌日の仕事や学校が気になる日曜22時30分スタート」というネガティブな要素ばかりだったのだが、すべて吹き飛ばしてしまった。

ベースとなっていたのは、脚本・演出を手掛けた福田雄一が俳優たちに仕掛けるアドリブ芝居なのだが、これは過去の作品でもお約束となっていたものであり、新鮮味はない。しかし、今作でのキレ味は予想を超えるものだった。

とりわけ子どもたちを爆笑しっぱなしにさせ、ケンカでは最後に勝つというヒーローとしての魅力もあり、学校では「三ちゃんごっこ」がブームに。前述したように、古い設定であり、ヤンキーが暴力をふるうのだから、親としては「絶対に見せたくない」作品なのだが、「そんなテレビ番組こそ子どもたちが見たくなる」という原点を見せてもらった感がある。

アドリブの笑い、アクションの爽快感、ラブのときめき、80年代カルチャーの懐かしさ。賀来賢人、伊藤健太郎、太賀、矢本悠馬、磯村勇斗ら若手俳優らの飛躍は意義深く、小栗旬、山田孝之、柳楽優弥、中村倫也ら実力派のゲスト出演は豪華。秋ドラマの中では最も実り多き作品と言える。

■7位:オタクの向こう側に描いた良質な“スローラブ”『海月姫』(フジ系)

視聴率は低迷し、PV稼ぎのためにそのことを叩くようなネットメディアも多かった。しかし、視聴者たちのネット書き込みは終始、熱気であふれていた。むしろ、「近年の月9で断トツに面白い」なんて声もあったくらいだ。

『海月姫』を語る上で忘れてはいけないのは、原作漫画と映画版。どちらも一定以上の好評価を得ていただけに、この時期のドラマ化はハードルが高く、実際に「なぜ今オタクのドラマ?」とも言われた。

しかし、当作は原作の魅力を損なうことなく、巧みに脚色。笑いの要素が強かった映画版に、倉下月海(芳根京子)、鯉淵蔵之介(瀬戸康史)、鯉淵修(工藤阿須加)のピュアなラブストーリーと、尼~ず(オタク女性)たちの成長物語を倍増させたような仕上がりで、連ドラとしての完成度は高かった。

とりわけ月海、蔵之介、修の三角関係は、かつての月9ドラマを彷彿させる、甘くもどかしいムード。月海が修に恋心を抱きはじめる。ぎこちないデートと気持ちのすれちがい。月海と蔵之介の気持ちが通いはじめる。ライバルの横やりで落ち込む。修も月海への思いが募っていく。蔵之介も月海への思いに気づく。二人の間で揺れ動く月海……。

“スローラブ”とも言える時間をかけた恋の描き方は、急展開を好むせっかちな現代視聴者にはリスキーなものだが、だからこそ感情移入は進み、最終回のカタルシスは増していく。

2018年の恋愛ドラマは、「サイコパス男からの卒業」を描いた『きみが心に棲みついた』(TBS系)、「女性教師と男子生徒の禁断愛」がテーマの『中学聖日記』(TBS系)、格差恋愛にフィーチャーした『高嶺の花』(日テレ系)、難病に軸にしたストーリーの『大恋愛』(TBS系)、不倫に陥る男女を描いた『ホリデイラブ』(テレ朝系)など、長年使われ続けてきた切り口の作品が多かった。

それだけに、9位に挙げた『おっさんずラブ』とともに『海月姫』のチャレンジは希少であり、難易度も高いなど、さまざまな点で価値が高い。恋愛ドラマに限らず、「録画ではなくリアルタイム視聴されやすい=視聴率を獲りやすい」という理由で、刑事、医師、弁護士のドラマばかり制作される中、思い切った作風に挑んだ姿勢は、もっと評価されてしかるべきだろう。

②鉄壁の座組『義母と娘のブルース』

※ドラマの結末などネタバレを含んだ内容です。これから視聴予定の方はご注意ください。

■6位:美化もデフォルメもなし。NHKらしいLGBTドラマ『女子的生活』(NHK)

2018年は「安定した視聴率を得るため」「続編を視野に入れるため」に、一話完結型の作品が大半を占めるようになった反面、登場人物のキャラクターは多様化・細分化。

さまざまな家庭がコーポラティブハウスに会した『隣の家族は青く見える』(フジ系)、多ジャンルのオタクが登場する『海月姫』、生活保護受給者の実態に迫る『健康で文化的な最低限度の生活』(フジ系)など、性格や生き方の異なる人々をフラットな視点から描く作品が目立った。

なかでも多かったのがLGBTであり、その筆頭が『女子的生活』の小川みき(志尊淳)だった。みきは「性別は男性だが、外見は女性。しかし、恋愛対象は女性」という複雑なトランスジェンダー。そのことを秘密にしているものの、ジメジメとしているわけではなく、むしろ「自己肯定感が強く、毒舌を放つ」という愛すべきキャラクターだった。

「かわいい女子的な生活に憧れて田舎から都会へ出て、ファストファッション会社でOLをしている」という点は、どこにでもいる普通の女性。しかし、みきは職場、取引先、合コン、故郷などあらゆる場所で、不寛容な人々や厳しい現実に直面させられる……と、ここまではありがちな設定なのだが、当作はシビアな現状を描きつつも、どこかポップで明るさがあった。

「視聴率」や「スポンサー受け」という不安がないNHKらしく、痛快感ばかり求めたり、美化やディフォルメに走ったりなどの民放スタッフが犯しがちな悪癖は見られず。フラットで決して無理をしない脚本・演出のさじ加減がリアリティを醸し出していた。

自身がトランスジェンダーである西原さつきが監修・出演しただけあって、志尊の演技は表情から発声、所作、ヘアメイクの細部まで見事な仕上がり。私も審査員の一人である「第11回コンフィデンスアワード・ドラマ賞 主演男優賞」を獲得するほどだった。

惜しむらくは、当作がわずか4話で終了してしまったこと。「もっと見たい」という人は少なくなかったが、数カ月後、志尊は朝ドラ『半分、青い。』で漫画家となるゲイの青年を好演した。

■5位:TBSのエースチームが手がけた感動の家族ドラマ『義母と娘のブルース』(TBS系)

今夏最大のヒット作となった『ぎぼむす』だが、放送開始前から業界内では、「そうなるだろう」と言われていた。脚本・森下佳子とチーフ演出・平川雄一朗のコンビは、これまで『白夜行』『JIN-仁-』『とんび』『天皇の料理番』らの名作を次々に生み出したTBSドラマのエースコンビ。視聴率以上に視聴者からの評判がよく、登場人物に感情移入させることに長けている。

しかも、現在はTBSの編成企画統括を務める石丸彰彦が当作に深く関与していた。石丸はかつて上記の作品すべてで二人と仕事をした名プロデューサーだ。さらに、ロボット的なキャリアウーマンのヒロインは綾瀬はるかだからこそ支持された感があったが、出世作の『世界の中心で、愛をさけぶ』から『あいくるしい』『白夜行』『MR.BRAIN』『JIN-仁-』『わたしを離さないで』らを手掛け、彼女の魅力を知り尽くしているのもこの3人。まさに“鉄壁の座組”だった。

「ある理由で契約結婚をした仮面夫婦」「一緒に暮らすことで徐々に愛情が育まれていく」という筋書きは、1980年代から見られたもので目新しさはない。しかし、「難病に侵されて娘を託す人がほしい」良一(竹野内豊)と「孤独な人生を歩んできたから家族がほしい」亜希子(綾瀬はるか)、「両親に先立たれて哀しみの淵に立たされた」娘・みゆき(横溝菜帆、上白石萌歌)と「キャリアを捨ててまで娘に愛情を注ぐ」義母・亜希子(綾瀬はるか)の両者が、ぎこちなさを漂わせながら心を通わせていく様子は感動的だった。

契約結婚という設定、火曜22時という放送枠、視聴率の推移などで何かと比較されがちだった『逃げるは恥だが役に立つ』は、「就職難」「派遣切り」「家事対価」など社会派の要素が濃かったが、当作はなし。難しい問題は絡めず、家族愛に絞ったことでヒューマン作としての純度を高めた。

「視聴率が獲れないから」という理由で激減した家族モノであることもドラマ業界全体にとって大きいだろう。それでも5位に留めたのは、原作の4コマ漫画が義母と娘の20年間を描いたのに対して、連ドラは10年間で消化不良なラストだったから。後半の10年間には、さらなる感動が詰まっているだけに、続編制作に期待したい。

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