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封印された名曲「TSUNAMI」サザンオールスターズと宮城県女川町の災害ラジオ局を結んだ絆

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Getty Images 結成40周年の最終日にNHK紅白歌合戦に出場するサザンオールスターズ

2018年に結成40周年を迎えたサザンオールスターズが大晦日の31日、平成最後の大トリとしてNHK紅白歌合戦に出場し、そのプレミアムイヤーに幕を下ろす。デビュー記念日の6月25日には東京・NHKホールでワンマンライブを行い、夏には13年ぶりとなる野外フェスにも登場した。

ただ、現在もライブでは披露されていない名曲がある。

「TSUNAMI」――。

1万5897人の尊い命が奪われた東日本大震災。いまも2534人の行方が分かっていない(ともに今月10日現在、警察庁)。東北の沿岸部は、街並みも住民の人生も津波にめちゃくちゃにされた。

11年3月11日の震災後、曲はそのタイトルゆえに、テレビやラジオで自粛が進み、ネット上では様々な意見が上がった。「津波の犠牲者を思えばとても聞く気にならない」「TSUNAMIが聞けるようになった時が本当の復興」などと。

時間が経った今、曲はラジオでも飲食店の有線放送でも当たり前に流れるようになった。その歩みをたどると、太平洋沿岸部の宮城県女川町にあった小さな臨時災害放送局に出会う。

津波に人生を翻弄されながら、TSUNAMIに震災前の何かを追い求めるかのように葛藤を繰り返した被災地・女川の人。そして、そんな思いに対し、被災地を訪れいつものように明るく力強く支えようとしたサザンの桑田佳祐さん。

タイトルに取った言葉ゆえに封印されかけた曲からは、互いを気遣い合う被災地とサザン、それぞれの思いが浮かんでくる。【岸慶太】

被災地を思う優しさから消えかけた名曲

風に戸惑う弱気な僕
通りすがるあの日の幻影
本当は見た目以上
涙もろい過去がある

TSUNAMIはこんな歌い出しで始まる。発売された2000年の「第42回日本レコード大賞」を受賞。290万枚以上を売り上げる大ヒット曲となった。

失恋しても思いを寄せ続ける切なさを歌った曲には、次のような一節もある。

見つめ合うと素直にお喋り出来ない
津波のような侘しさに
I know..怯えてる,Hoo…

「なぜ津波に例えたのか」「不謹慎だ」――。震災後、そんな批判が上がった。国民的名曲はテレビやラジオから姿を消し、一転して放送禁止歌になりかけた。

曲はその後、少しずつテレビやラジオで流れるようになった。ただ、サザンがバンドとして13年夏に再結成されてからも、ライブで披露されることは無かった。

女川さいがいエフエムは東日本大震災の約1か月後に誕生した

津波被災地・女川を励ます小さなラジオ局の誕生

宮城県女川町は県北東部に位置し、全国有数のサンマの水揚げ量で知られる港町だ。北上山地と太平洋が交わり、リアス式海岸などその風光明媚な街並みは住民の誇りだ。そんなまちを7年前のあの日、大津波が襲った。

800人を超える死者、行方不明者が出た。多くの住民がかけがえのない人やものを失った。

まちに災害臨時放送局「女川さいがいFM」が誕生したのは1か月後の11年4月21日。さいがいFMは震災直後、被災した住民らに被害状況や避難指示を伝え続けた。その後も、復興を目指す小さな町の放送局として住民の喜怒哀楽を伝えてきた。

番組「佐藤敏郎の大人のたまり場」は、地元の中学校で国語を教えていた佐藤敏郎さんがパーソナリティーを務めていた。佐藤さん自身も震災で石巻市立大川小学校に通っていた小学6年の次女を失った。震災遺族の一人だ。

津波の遺族から届いたTSUNAMIのリクエスト

震災から約4年後の15年3月3日。佐藤さんのもとに曲のリクエストが届く。メールの主はインターネットを使って女川さいがいFMを聴き続けているという埼玉県内の43歳男性。女川から北に約26キロ離れた沿岸部にある南三陸町の出身で、母親を津波に奪われた。佐藤さんが番組で男性からのメールを紹介した。

実家は南三陸の歌津にありました。ありましたと書いているように、もう跡形もありません。

親もまだ若くて元気なほうでしたから、震災前は「帰って来い」と言われながらも仕事もなかなか休めず、またお金の余裕もなくて、あまり実家に帰ることはありませんでした。でも、あの3月11日を境に、帰りたくても帰れなくなってしまいました。

震災の前の晩に留守番電話に入っていた母からのメッセージ、今も消せないでいます。そして、何度も何度も再生ボタンを押しては、後悔の念ばかりが強くなるのです。なんで自分は何もしてあげられなかったのだろうかと。

(中略)

(女川さいがいFMの)みなさんのお話を聞いていると、あの大変な状況になった町から逃げ出さず、その町から始めようと頑張っておられる姿がラジオから伝わってきて、本当に自分が恥ずかしくなります。

自分は埼玉にいて暮らしの面では何不自由なく生きていられます。それどころか、震災後、何度か変わり果てた姿の故郷に帰って、そこにかつての自分が知っている街の姿さえ残っていない現実を知って、逃げ出してしまっているのです。かれこれ2年以上帰っていません。

それでも、気になって気になって、それでも少しでもふるさとのにおいをかぎたくて周辺の災害エフエム局を聞いています。

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