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プロ野球を盛り上げる「悪党」の存在 読売巨人軍は永遠にヒールです!

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BLOGOS編集部

土屋礼央の「じっくり聞くと」、今回はスポーツジャーナリスト手束仁さんにインタビュー。長年、出身の愛知県目線・アンチ巨人な視点でプロアマ球界を見守り続けるベテラン記者、手束仁さん。

記録よりも記憶にスポットを当てた球界悪党紳士録『プロ野球「悪党(ヒール)」読本「組織の論理」に翻弄された男たちの物語』がイースト・プレスから文庫化されたばかり。

野球界における「悪党」の魅力とはなんなのか、埼玉西武ライオンズをこよなく愛する土屋礼央が今回も「じっくり」聞いています。【取材:田野幸伸 構成:蓬莱藤乃 撮影:弘田充】

読売巨人軍の存在自体が悪党

広島から丸佳浩外野手を手に入れた原辰徳監督(共同通信社)

土屋:今回は本のタイトルが悪党(ヒール)ということで、ヒールをテーマに話を進めていきます。まず、悪党と書いてヒール。プロ野球の中でなくてはならないヒールという存在はどういうものなのか、改めて教えていただけますか。

手束:スポーツ界には必ず善玉と悪玉がいる。そのスポーツが盛り上がるほど役割分担が必要になってきます。プロ野球の歴史の中では、読売一強VS. 他の球団という構図がありました。アンチ巨人の視点で話すと、権力が嫌だということではなく「なぜ地上波テレビは巨人戦しか放送しないのか?」そんな疑問から始まるんです。最近はCS等で全試合放送していますが……。

土屋:僕は西武ライオンズのファンなので、話がライオンズに寄りがちになりますが、そもそもセ・リーグがヒールという感覚です。僕の幼少期、BSもCSもない時代は、テレビでは巨人戦しかやっていない。だから巨人と戦って西武が勝った日本シリーズは貴重なテレビ中継の映像が記憶の中に鮮明に残っています。なのに恵まれている巨人ファンはそのことを「え〜、あんまり覚えてないわ〜」って。こちらは貴重な、映像での思い出なんだよ!と。

手束さんは愛知県出身でドラゴンズファンだと思いますけど、セ・リーグのチームを応援しているファンから見ると、パ・リーグはヒールですか?

手束:そんなことはありません、むしろ同志!

土屋:では手束さんの中で巨人の何が一番のヒール要素なのでしょう?

手束:球団です。存在そのものがヒールです。

まず漫画、アニメの『巨人の星』。巨人が正義であとはすべて敵。当時、子どもが見られるアニメがあれしかなかったので、全国の子どもたちの多くは巨人ファンになりました。そして巨人以外のチームから見ると敵を応援する我々世代の青少年の心を捻じ曲げたのです!

BLOGOS編集部

土屋:巨人といえばあの名物オーナーも。

手束:読売の渡邉恒雄さん。元々敏腕の政治部記者で、人も制度も好きなようにいじることができるから政治よりもプロ野球界が面白くてしょうがない。政界で活躍してきた人だから、みんな素直なプロ野球界を操るなんて赤子の手をひねるようなものです。

土屋:ナベツネ(渡邉恒雄)さんがいる今と影響力ながくなった後とでは、球界も変わりそうな気がします。最近ではZOZOの前澤友作社長が新球団を持ちたいと発言して騒動になりました。ライブドア(当時)の堀江貴文さんをきっかけに、IT業界の経営者たちがプロ野球界に乗り込んできましたが、日本プロ野球機構のひとたちにとってIT業界は未だヒールに見えているんでしょうか。

手束:見えているでしょう。特に野村克也さんは楽天の球団経営を肌で感じて、今でも完璧にヒールだと思っているでしょう。

今のプロ野球監督の中で、IT業界の割り切った感覚をヒールだと思っていないのは日本ハム監督の栗山英樹さんぐらいです。それは日本ハムのスタッフのうまさ。日本ハムは親会社が食品会社なのに判断がIT的です。

ドラフトでも勝負に出るし、大谷翔平の二刀流も海外移籍も認めた。早いサイクルでスターを育ててチームを面白くする努力をしています。また時代の流れをいち早くつかんで、北海道に本拠地を移転させ、地域密着型のチームを作りあげました。

土屋:日本ハムの新スタジアムには入場料を払わなくても試合を見られるようなアイデアがあるらしいですね。結局、既存勢力に対する対抗心をヒールと表現していいのでしょうか。僕はのちに阪神に移籍した下柳剛さんが代理人を通した契約交渉第一号と報じられた時に「なんだ?」と思いましたが、今では当たり前になりました。

プロ野球の歴史は日本の産業の歴史

BLOGOS編集部

手束:野球界で新しいことを始めるのは難しいと思います。でも反対がある中、IT業界の参入を本格化させたのは、間違いなく堀江貴文さんの功績でしょう。近年、ソフトバンクやDeNAなど 、IT関係の球界参入が続きました。実は日本プロ野球というのは日本の産業の隆盛と密接な関係があるんです。

読売新聞が主導してプロ野球を作ったのは、毎日新聞と朝日新聞に高校野球で後れをとったからでした。野球が商売になるということがわかったのですが、わかった時には既に遅かった。朝日新聞が盤石な体制を敷いて高校野球を発展させて、それに便乗した大阪毎日、のちの毎日新聞が当時は景気が良かったから春のセンバツを定着させていき、なおかつ毎日新聞は社会人野球を束ねて都市対抗野球を作っていった。

それなら野球を職業にしたい奴を集めてしまえというのが読売の発想でした。自分のところで球団を作って、そのあと大阪に声をかけると阪神電鉄、阪急電鉄(現在はオリックスに売却)が手を挙げました。これに呼応して新愛知新聞社(中日新聞の前身)がこっちも!と全国に波及していったんです。

土屋:日本のビジネスの中心が、プロ野球というコンテンツをいつの時代も必要としていたんですね。

手束:そうです。戦後は映画会社が参入しました。松竹ロビンス(DeNAの前身のひとつ)や東映フライヤーズ(現・日本ハム)、大映スターズ(ロッテの前身のひとつ)。阪急はグループ会社に東宝をもっています。映画会社は日活以外球団を持っていました。その後、映画界の衰退と入れ替わるように読売が息を吹き返しました。

土屋:すると現在のIT業界の球界参入は自然な流れ。現在の12球団から今後は16球団に拡大、というアイデアもあるようです。

手束:エクスパンション(球団数拡張)は歓迎します。セ・パは8球団ずつでもいいと思います。拡張していくことによって門戸が広がる。門戸が広がるということは、野球人口が増えることにつながるはずです。

土屋:働く場所は多いほうがいい。球団数が増えるとなると、ではどの企業が手を挙げるのでしょうか。それこそ、ここLINEですよ。それにゲーム会社。最初はヒール扱いかもしれませんが、やがて正義に転じる日がくるのでは。

手束:楽天はまさにそうでした。初年度はこんなヘボいチームで恥ずかしくない?と言われていましたが、様々な困難を乗り越えて8年後に優勝しました。

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