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海外人材を増やすなら技能実習は廃止せよ

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■提言2 名ばかりの技能実習制度は段階的に縮小・廃止せよ

国会での議論の成果としては、技能実習制度の問題点が明らかになったことである。2016年の技能実習法成立により、「外国人技能実習機構」が設立されるなど一定の改善がなされているとはいえ、7割にあたる事業場で労働基準関連法令違反が起きている。米国国務省『人身取引年次報告書』でも、2007年から11年間にわたって、「人身取引」と批判の対象となっている。少なくとも「国際貢献」という建前は世界から信じられていない。

新制度は、この技能実習制度を土台として、それに接ぎ木した制度設計になっている点は問題であり、技能実習制度を段階的に縮小・廃止し、新制度へ一元化するためのロードマップを策定すべきだと考える。韓国でも2004年に雇用許可制を導入して、3年後に「研修就業制度」を廃止・一元化しており、日本でできないことはない。他方、「国際貢献」目的の技能実習は、人数を大幅に縮小し、JICA(国際協力機構)が担当すればよい。

■提言3 受け入れ企業への罰則・監視を強化せよ

外国人労働者は、使い捨ての労働力ではなく、人間である。韓国では、外国人も労働三権、最低賃金、各種保険の適用を受ける。また法令を順守させるため、全国の雇用支援センターに加え、外国人勤労者支援センターなどを設置している。加えて民間支援団体は300団体以上あり、多言語での相談活動、シェルター提供などの支援を行っている。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/andresr)

しかし、韓国でも賃金格差、差別、事業場移動の制限などはなくなっていない。特に、農畜産業では勤労基準法の適用が除外されるため、劣悪な労働条件・人権侵害にさらされやすく、国内外から厳しい批判を受けている。

他方、日本では、技能実習生で法令違反が続いている。新制度では、同一分野内で転職の自由があるので一定程度改善が見込めるが、人権侵害が続出することは目に見えている。それを防ぐためには、罰則規定の強化と専門的スタッフの増員による実効ある監視体制が不可欠である。新制度では出入国管理庁による立ち入り検査により、改善命令に従わなければ6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科すことになっており、改善がみられる。しかし、企業数に比べ、多言語を話せるスタッフの数が少なすぎて、実効性に懸念が残る。また日本語教育、生活支援、社会保障などについては、国、地方自治体、NPOなどによる総合的な支援システムの構築と財政措置が必要である。

■提言4 短期ローテーション制を機能させるのは難しいと認識せよ

韓国では、滞在期間の長期化、不法労働者化、結婚や家族の呼び寄せなどに伴う社会的コストの増加を抑制するため、雇用期間を限定し、自発的帰還プログラムを実施するとともに、退職金を出国時に受け取れる出国満期保険や帰国費用保険によって、帰国のインセンティブを持たしている。 

しかし、滞在期間については、企業の要望、不法労働者化の抑制といった観点から、次第に長期化している。また不法滞在者は、2018年9月現在34.5万人と、外国人の14.8%を占め、増加傾向にある。特に非専門就業でも、2017年には9455人失踪している。このように短期ローテーション制を機能させるのは非常に難しい。

今回の日本の新制度は、技能実習制からの移行組が約5割と見込まれている。これは技能実習3年(+2年)をさらに「特定技能1号」で5年間延長する制度とみることができる。韓国や台湾と同様、5年後の期間満了の時期になれば、企業の要望や失踪者の抑制のために、特定技能1号を延長すべきという議論が出てくるはずである。

他方、「特定技能2号」については、建設、造船の2業種を対象とし高難度の技能試験に合格する必要があり、家族帯同や在留期限更新が可能だということぐらいしかわかっていないが、ハードルが高く、移行者は多くないだろう。韓国でも、熟練技能人材点数が高い順に、特定活動、居住に変更できる制度を導入しているが、年間400人程度で、まさに「蜘蛛の糸」である。

■提言5 民間ブローカーを排除、政府主導の受け入れ態勢をつくれ

韓国では、研修就業制度の時代、民間事業者・ブローカーにより、不正が横行したことの反省から、送出国との間で二国間協定(MOU)を締結し、雇用労働部が主管して、韓国語教育から帰国までの全プロセスを運営している。これにより、プロセスが透明化し不正の減少につながっている。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/maroke)

また労働者の求職コストは、日本の1割から2割程度であり、ブローカーに借金をする必要がないだけでなく、事業主の求人・管理コストの削減にもつながっている。このことが評価され、2011年に「国連公共行政大賞」の受賞につながった。また2017年には、世界銀行から、「優れた情報アクセス」と高く評価されている。

他方、日本の新制度では、悪質なブローカーや高額な保証金を排除するとしているが、実効性には疑問が残る。短期的には、民業圧迫や公的機関の非効率性などに対する懸念から公的システムの導入は難しいと思われるが、長期的には、出入国在留管理庁から厚生労働省の主管に移し、透明性が高く、低コストの政府主導型の受け入れシステムとして「グローバル・ハローワーク」を構築すべきである。

現在、アジアにおいて経済成長と少子高齢化が進むなかで、外国人労働者争奪戦時代が起きている。上から目線の「外国人労働者を受け入れてやる」という姿勢では、韓国や台湾の後塵を拝すことは目に見えている。今後、日本が少子高齢化の中で、経済成長を持続させるとともに、日本人と外国人が共生できる社会を作っていくためには、多文化共生を基本に置いた持続可能な外国人労働者受け入れ政策への転換を進め、そのためのロードマップを策定していくことが求められる。

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佐野孝治(さの・こうじ)

福島大学経済経営学教授

1963年生まれ、慶應義塾大学大学院博士課程・単位取得退学、専門は開発経済学,アジア経済論。著作に、「韓国の外国人労働者受け入れ政策」(高橋信弘編『グローバル化の光と影』、晃洋書房, 2018年)、「アジアにおける国際移民」 (朱永浩編『アジア共同体構想と地域協力の展開』文眞堂, 2018年)などがある。

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(福島大学経済経営学教授 佐野 孝治 写真=iStock.com)

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