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40代の“痛い人”は誰も指摘してくれない

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40代からのコミュニケーションで、気をつけるべきこととは何か。男性学を専門とする社会学者・田中俊之さんは「40代は、痛いことをしても周りが指摘してくれなくなる年齢。処世術として謙虚であることが必要だ」という。同い年のお笑い芸人・髭男爵の山田ルイ53世との「中年男再生」対談をお届けしよう――。

※本稿は、田中俊之・山田ルイ53世『中年男ルネッサンス』(イースト新書)の第2章「僕らの歳で友達っている? 人間関係とコミュニケーション論」を再編集しています。

■コミュニケーション・スタイルを変えられない

【田中】若い頃に身につけてしまったコミュニケーション・スタイルを変えられずに、苦労している中年男性も多そうですよね。男爵のラジオ(『ルネッサンスラジオ』)を聞いていて、とある先輩芸人のエピソードが印象に残っています。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/monzenmachi)

【山田】僕がお世話になっている先輩ですね。その方は、若い頃の芸風が結構オラオラだったんですよ。ルックスもいいし、結果もそれなりに出していたし、ネタも自分で書く、食レポもうまいと、どんな仕事もちゃんとこなせる実力のある方なんです。ただ、うまい具合にブレイクとはいかず、どんどん後輩に追い抜かれていって、昔のオラオラではいられなくなってきた。

【田中】サラリーマンでも、若い頃の調子がよかったときのスタンスを変えられずに苦しんでいる中年男性は、たくさんいるんじゃないですか。

【山田】でも、その先輩はめちゃくちゃ努力する人なんですよ。「仕事につながれば」と資格を取るタレントさんはいっぱいいますけど、その人が40代半ばで取ったのが、宅建、管理業務主任者、マンション管理士という「不動産業務の三種の神器」と呼ばれる資格なんです。マンション管理士なんて、合格率8%くらいの難しい資格らしくて。それもう芸人じゃなくて不動産屋やないかい! って話ですよ(笑)。

【田中】それなら、別の活路もありそうですが……。

■めんどくさい先輩からのメールの真意

【山田】ただ、周囲の評価は「ちょっと面倒な先輩」……いや、これ僕怒られますわ(笑)。なんて言えばいいのか、ご本人には一切悪気はないんですよ。ただ、若い頃のイケイケ、オラオラな部分がときおり顔をのぞかせるというか。芸風がツッコミだというのも関係しているのかもしれないですね。声は大きいし、的確にツッコめるってことは、要するにマウントを取るってことですから。いずれにしても、その方が売れてくれれば、後輩の悩みはすべて解決することなんですけど(笑)。

【田中】それ、他人事じゃない40代男性は多いと思いますよ。

【山田】その先輩とも僕とも仲のいい後輩芸人が『キングオブコント』(TBSテレビ系)の決勝に出ることになって、その前日、件の先輩から「大丈夫か?」とメールがきたんです。最初、「(最近の僕の仕事の調子は)大丈夫か?」という意味かと思って、まあそれなりに調子よくやらせてもらっていたので、「なんで心配されなあかんねや」みたいな、ちょっとムッとした気持ちになってしまって、「はい!」とだけメールを返したんです。そしたら、「後輩が『キングオブコント』の決勝に行ったから、気が気でないんじゃないか思って」と返ってきた。それは、あなたが気が気でなかったんでしょ? というね(笑)。

■とろ火で続く自尊心をどう扱うか

【田中】複雑な気持ちだったんでしょうね。

田中俊之・山田ルイ53世『中年男ルネッサンス』(イースト新書)

【山田】まあ、「最近調子よかったのに……」とムッとしてしまった僕も、「大丈夫か?」と僕に送らなきゃいけないほどソワソワしていた先輩も、どっちもどっちですけどね。お互いこの歳になって負けが込んできているのに、自尊心がとろ火でずっと続いていて消せないんです。

【田中】でも、その「自尊心のとろ火を消すべきかどうか」って、中年男性にとって非常に難しい話だと思います。もちろん、加齢に従って自制しなきゃいけない側面もありますが、完全に消してしまっていいのかとも思っていて。

【山田】どういうことですか?

【田中】以前に、僕が本当は宮台真司先生のようなマルチな社会学者になりたかった、という話をしましたよね。でも、実は宮台先生のように領域を横断して何でも語るスタイルって、今は難しいんですよ。ほかの研究者から批判されないことを重視しているので、自分の専門領域の狭い範囲しか扱えなくて、大胆なことが言えないんです。悪く言えば、すごくチマチマしているんですね。

■他人から叩かれるのを恐れすぎる弊害

【山田】世の中全体が、そんな感じですよね。

【田中】でも、本来の社会学者の使命は、社会の全体像を示すことでもあるのに、それを怖がってみんなやらなくなっている。そうすると、正確で妥当な代わりに、突出した考えが出てこなくなって、社会学全体が活気を失って停滞してしまう危険もあります。

「男性学という特殊分野だからなんとか専門家としての立ち位置を確保しているお前が、宮台先生を目指すなんておこがましい」と僕自身も思いますが、「いつかは……!」という野心も捨ててはいけないのかな、と。

【山田】それは、大きな達成や獲得を目指す、古い“男らしさ”ということにはならないんですか?

【田中】これは男性も女性も関係なく、他人から叩かれることを恐れすぎて「こうありたい自分」にブレーキをかけてしまっている側面もあるのでは、ということです。実はこれに通じるようなことを、社会学者の加藤秀俊先生が『人間関係』(中公新書/1966年)という著書の中ですでに指摘しています。

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