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クレヨンしんちゃんが教えてくれる強い「絆」の作り方

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家族、友人、地域…… 「絆」で越える大きな壁


日本を代表する核家族の姿が野原一家だ。映画の中では手ごわい敵と戦い、家族で目の前の問題を乗り越えていく。「絆」が重視される今の時代に、映画『クレヨンしんちゃん』から何を学ぶべきか。

アニメ映画シリーズとしては3番目の長さを誇る

『クレヨンしんちゃん』(臼井儀人・原作)は1990年に青年向け漫画誌「weekly 漫画アクション」で初掲載されたギャグ漫画だ(2000年にはファミリー向け漫画誌「まんがタウン」に移籍、いずれも双葉社刊)。92年にはTVアニメ化、さらに93年には劇場映画が公開され、今年で20周年迎える。映画版では野原家の日常を脅かす敵(魔王、オカマ、秘密結社、テロ組織など)に、野原一家やかすかべ防衛隊(しんのすけの友だち)の面々が、団結して立ち向かう姿が描かれている。毎年公開しているアニメ映画シリーズとしては、32周年の『ドラえもん』、23周年の『アンパンマン』に続き、3番目の長さとなる。

映画化20周年――その歴史は長い。20年前、しんちゃんに夢中になっていた幼稚園・保育園児、小学生だった子どもたちは、既に20代半ばから30代前半。中には既に家庭を持ち、ひろしやみさえのように子育てをしている人もいるだろう。

人口減少や高齢化、成長率の伸び悩みが未来の展望を暗くしている中、1年前には東日本大震災を経験した日本。そんな中で映画『クレヨンしんちゃん』が私たちに提示するのは、家族のあり方、人間関係のあり方、そして大人のあり方ではないだろうか。何も作品を通して「家族とはこうあるべきだ」「大人はこうでなくてはいけない」という押し付けはない。しかし本作を見ると、「こうありたい」「こう生きよう」と素直に思える生き方、家族や大人の理想的な姿を感じられるはずだ。

絆を強めるのはコミュニケーション

TVアニメは日常生活をベースに話が進むが、映画版では過去、未来、異世界などの日常からかけ離れたところでも物語が展開する。特殊な状況下に置かれると、顔なじみの人達のコミュニケーションも変質する。同じ特殊な体験を共有することで、人は親密になれるからだ。しかもその状況が困難だと一人で乗り越えるのが難しく、協力関係が強固になる。物理的な手助けが必要な場合もあれば、精神的な支えが必要なこともある。強い敵に一人で立ち向かうのは難しくとも、二人、三人なら大きな力になる。そうして「絆」が生まれる。絆は人と関わりを持つことから始まり、同じ困難に立ち向かうことでより強くなっていく。

「絆」はいろいろな形で生まれる。「自分を生んでくれたから」と親に対して感じる絆もあれば、たまたま知り合って仲良くなった友達に、その偶然性ゆえに感じる絆もあろう。生まれ育った地域と、そこに住む人たちに対して感じる絆もあるはずだ。東日本大震災後に襲ってきた絶望感や無力感から脱し、明日をつくる気力を生み出しているのも「絆」ではないか。見ず知らずの他人に対しても、「等しく震災とその後の原発事故の影響を受けている、大変なのは自分だけではない、彼も彼女の大変なのだ」という思いから生まれる絆もある。

閉塞感を打ち破り、低成長時代にあわせ、明日に向かって前向きに生きていくために「絆」は欠かせない。人は人との関係において生きる生き物だ。見ず知らずの人とも絆を感じることができる。人を思うことができる。その気持ちを「実態のないもの」「裏付けがない」「幻想だ」と切り捨てるのはたやすい。だがその後に残るのは一体何だろうか。何も残らないと考えるのが自然ではないか。「絆」を結び、強めるのに最も大きなきっかけ・手段となるのは、「コミュニケーション」だ。相手を思い、相手に話し、意思や感情を伝える。そして相手がそれを受け止め、コミュニケーションが生まれ、深めていくことで、絆となっていく。

ことに現代日本は、他人に無関心な風潮が強いといわれてきた。だが震災を契機に地域へのかかわりを強めるなど、行動や生き方が変わってきている。コミュニケーションの取り方が変わってきている。個々のそうした行動・生き方が、人と人、地域と地域を団結し、力を生み出す。今直面している困難を、また来るべき困難を乗り越えるための力となる。

野原一家やかすかべ防衛隊がここぞというとき気合いを入れるためにいう言葉がある。
「野原一家ファイヤー!」
「かすかべ防衛隊ファイヤー!」
彼らはそう気合を入れ、乗り越えられない壁はないと信じて、家族や友だち、周りにいる人を信じて、前に進んでいく。同じものを信じる彼らには、確かに絆がある。本作から元気とヒントを分けてもらえるはずだ。

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