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ゴミ屋敷で育ち、母親によるネグレクトを受ける。心中相手を探しているころ夫と知り合い結婚するが、ただ、優しい人たちを独占したいと浮気を続ける〜朋子の場合【生きづらさを感じる人々23】

児童虐待の相談件数は毎年のように増加している。厚生労働省によると、17年度は13万3,778件で過去最多。最も多いのは心理的虐待で7万2,197件で全体の半数を超える。ついで身体的虐待が3万3,223件、ネグレクトが2万6,818件、性的虐待1,540件となっている。関東地方に住む朋子(35)はネグレクトを受け続けた。

「今になって思いますが、私が中学のころ、母親が家を出て行くのですが、それまでネグレクトをされていたんだと思います。このころはネグレクトなんて気が付いていないですけどね」

朋子は、居酒屋の雇われ店長の父親と、専業主婦の母親との間で育った。父親は仕事ばかりの人で、子育てには参加していなかった。母親もほとんど子育てをせず、ネグレクトだった。どのような子ども時代を過ごしたのか。

母親はゴキブリが出ても退治せず、つねに洗濯物の山

「私は、ホームレスがいるような公園で、子どもだけで遊んでいました。その公園では、ホームレスが空き缶を集め、うろうろしているのを当たり前に見ていました。それに、ネグレクトとか虐待に気がつかないのは、今考えれば、周囲に、虐待をされていた子が多かったです」

家は常に汚かった。母親が掃除をできないからだ。いわゆる、ゴミ屋敷だ。それ自体は珍しくはないとは朋子は感じていない。友達の家もゴミ屋敷だったからだ。母親は発達障害だったのか、鬱だったのかはわからないが、ゴミ屋敷のせいで、ゴキブリが常に出た。母親はゴキブリが出ても退治しない。洗濯物がたまっていたが、つねに洗濯物の山だった。

「大人になった今、住んでいる地域で、ママ友の家に行くと、綺麗だし、整頓ができています。自分の家は、ゴミ屋敷ではないが、うまく整理できないのですね」

自宅にはお風呂がなく、小3まで銭湯通い。ただ、貧困な家庭という意識は朋子にはない。というのも、周囲が似たような家庭だったからだ。父方の祖母は、長男夫婦と共に今でも、そうした家で住んでいる。クーラーもないという。

「もともと川沿いに家を建てていたようですが、長屋に住むことになったのです。でも、土地は自分たちのものではなかったようで、勝手に改装ができなかったみたいです」

朋子の親類は経済的に厳しい人ばかり。そのためか、大学に進学をした人が、両親の家系からは出ていない。父親は古い考えが抜けきれず、「女は結婚するから大学に行く必要はない」と言われて育った。親族以外でも、周囲では、大学卒は友達一人だけだった。

「両親が衛生的ではなかったのです。私は爪を噛むことがありましたが、こうしたことは親がやめさせるなど管理するのでしょうが、しませんでした。お風呂に入るのは週1回、パンツを替えるのも週1回でした。こうした子どもがいればいじめに遭うと思うかもしれませんが、そんな子ばかりだったので、普通でした。むしろ、高層マンションに住んでいた女の子がいじめられていました」

“普通ではない”と気が付いたのは結婚してから。地域差を感じる

こうした環境が“普通ではない”と気が付いたのは、結婚してからだ。この地域では、小学生はお小遣いをもらうものの、お店での買い物はさせてはいけないという。子ども一人でコンビニに行くのも許されない。買い物は親と子どもが一緒に行く。公園で一人で遊ぶのもダメで、親と一緒に遊ぶと決まっている。育った地域と、結婚生活をしている地域との差が激しい。大学に行くのが当たり前で、塾に子どもを行かせている。

「幼い頃に住んでいた地域では、貧富の差が激しかったんです。小学校の3分の1が中学受験をします。経済的余裕がある家庭では旅行でハワイに行ったりします。その一方で、ギョウ虫検査にひっかかる子どもや頭にシラミがいる子どもがいました。白い粉をかけられている子を見たことがありますが、子どもが不衛生だとそうされるものだと思っていました」

育った地域と、現在住む地域との差を感じている朋子 写真:渋井哲也

そんな地域の中でも、朋子が育った家庭は“中流”だったという。“中流”の定義を聞くと、朋子にとっては「借金取りが来ていない」という意味だ。周囲の友達の家には、借金取りが来ていたりしていたというが、なぜ朋子の家には借金取りが来なかったのだろうか。

「父は恵まれていたわけではありません。でも、ギャンブルはしていません。借金取りが来なかったのはそのためでしょうね」

真面目な父親なのに、母親は家を出て行ってしまった。金遣いに荒くないのなら、暴力でもふるったのかと想像するが、違うようだ。

「虐待や暴力もありません。母親は出て行ったのは、父は仕事しかしていなかったからです。だから男を作って出て行ったんです」

父親はワーカーホリックだったということか。

男を作って家を出た母親との関係が、恋愛に影響した?

朋子は幼いころから肥満気味だったという。母子手帳にも「肥満」との記載がされていた。17歳のとき、摂食障害になった。家で食べては吐いていた。そのことが影響してか、ずっと太っていたという。体系にコンプレックスもあった。取材時の体型は平均的であり、そんな風には見えない。

「食べ物が好きだったんです。でも、自分の見た目が好きじゃない。痩せたいと思い出した。今度は拒食となり、20キロ痩せることになったんです。そのため、男性にもそれなりにモテました」

母親が出て行ったことは、朋子自身の恋愛観にも影響があったのか、中学も、高校も、好きな人は同性だった。しかも、いずれも虐待を受けていた子でもあった。もしかすると、自ら母親役割をすることで、虐待された自分を癒すという代償行為だったのかもしれないと、筆者は感じた。

「母親の影響かな、とも思っています。母親は男を作って、家を出て行ったんですから。だから、当時の自分としては、母親とは会いたくないし、しゃべりたくもない、と思っていました」

ただ、高校時代に好きな人から振られたとき、初めて「死にたい」と思った。そのとき、リストカットを初めてすることになる。

同じ頃、テレクラに電話する。と同時に、男性依存やセックスへの依存傾向が高まっていた。痩せる以前とは違って、男性が相手をしてくれる。その象徴がセックスだったのかもしれない。ただし、恋愛に失敗したことで、部活の顧問(当時40歳)を好きになったりもした。

上司を脅すために、初めてのリストカット。血だらけで会社へ

21歳の頃、職場の上司を好きになった。しかし、その上司には彼女がいた。そのことことを知り、感情をコントロールできず、怒りが湧いた。そのため、駅のトイレで首と手を切った。この行為は、朋子にとっては自殺未遂だったのだろうか。

「思い切りするのは脅しの行為です。脅迫の材料かな。死にたい気持ちもあったりするけど、派手にやらかしたのは嫌がらせでもあります。でも、それだけでは足りないと思って、血だらけのまま、会社に行きました。そのため、隠れて付き合っていたのがバレました。会社をクビになりましたが、上司も立場が悪くなったんだろうな」

首や手首に傷は負ったことで病院に行くことになるが、入院はしてない。そのとき、なぜか、家を出て行った母親が顔を見せた。

「家族で焼肉を食べに行きました。いつぶりかはわからないですが、家族揃っての、最後の晩餐でした。私は家族そろっての食事を嬉しがっており、幼児退行をしていました」

母親への距離感はあったものの、どこかで母親を好きで、甘えたがりでもあったのだろう。

虐待されて育った夫と知り合い、結婚。しかし、一人では満足できない

今の夫とは、自殺をキーワードにしたサイトで知り合った。20代前半、SNSのミクシィで知り合った女性がおり、恋愛関係になるが、振られてしまう。朋子は「どうせ生きていても辛いだけなら死のう」と思った。それで心中相手を探していたときに偶然、出会った。

「夫も父親から暴力を受け、精神的にも支配されてきていました。勉強ができないと殴られていたそうです。初めて会った日にホテルに行きました。私は手首を切って、血だらけでしたが、夫は驚きもせずに寝ていました。翌日、『付き合おう』と言われ、お試しで、とりあえず、1ヶ月間、付き合うことになりました。それが今でも続いています。そして、同棲した途端に妊娠しました」

朋子は夫の間であることを約束をしている。それは、二人は家族に恵まれなかったが、子どもは自分たちと同じような思いをさせないようにするためだ。

ただ、朋子は夫との関係だけでは、なかなか精神的に安定しない。高校時代に好きになった部活の顧問とは今でも会い、性的な関係が続いている。また、SNSのオフ会で知り合った男性とも関係を持っている。夫とは現在はセックスレス。それを知ってか、夫は「離婚」の2文字を出している。

朋子はいまだに精神的な安らぎを探し続ける 写真:渋井哲也

「私は優しい人が好きで、そういう人たちを独り占めしたいんです。だから矛盾が起きます。でも、普通の家庭が欲しかったなあ」

朋子は、なかなか安定した居場所を見つけられないでいる。

*記事の感想や生きづらさに関する情報をお待ちしています。取材してほしいという当事者の方や、こんな話も取材してほしいというリクエストがあれば、Twitterの@shibutetuまで。

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