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日本唯一の“登場人物索引”を作る出版社に聞く書籍編集術と中高生の「読書離れ」

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索引作りの悩みはネタバレ問題

—選書がとても難しいことがわかりました。

ただ、迷ったら少し広めに入れておけばいいかなという風にも考えています。人によってもジャンルの捉え方は違うじゃないですか。実際に見たときに、探しているものが掲載されていなかったら辞書としての役割を果たしきれないなと思うので。

—掲載する内容まで決まったら、次はどんな作業がありますか?

登場人物索引の場合は、主要人物を一人ひとり拾っていきます。ただ一冊まるごと読むとものすごい時間がかかるので、そういう時のコツもあります。

この作業では、いかにネタバレを避けて、決まった文字数の中で読者の興味を惹けるように説明するかがとても難しいです。

—ネタバレ問題があるんですか。

索引として探すためには特徴がないと探せないものの、とはいえネタバレになってもいけない、というところで苦労しています。ミステリーの登場人物索引だと、たとえ主要な人物でも「○○で死んだ」や「犯人」と書くといくら索引でもさすがにそれは…という話になるので。

—なるほど。一冊の索引を編集するのにどのくらいの時間がかかりますか?

『星新一作品 登場人物索引』では、途中で別の作業もあり約4か月かかったんですけど、最初からずっと取り組めば1~2か月くらいで作業が終わるんじゃないかと思います。

—想像していたよりも早いですね。一冊の本は何人体制で作業されるんですか?

今回の星新一さんの本は2人体制ですね。いつもは10人くらいで取り掛かることが多いです。星新一作品は話が短いので作業も早いんですけど、翻訳ミステリーなどは話が長く、上中下巻という場合もありますので。

—この索引を読んでいると同じ人物が何度も説明されることもあるんですね。

シリーズものだとそういうケースが多いですね。同じ肩書きのこともあれば、作品によってはその人物が出世して役職が変わったり、年齢が変わったり。

星新一作品だと「男」や「青年」、「エヌ氏」もとても多いですね。

—このエヌ氏の並びは見ていてとても面白かったです。

BLOGOS編集部

進捗がきつければ期限を延ばす

—そこまでやって、やっと校正作業に入れると。途方もない作業ですね。作業は会社に集まって行っているのでしょうか。

実際に作業を行ってくれている人たちは、皆在宅です。それぞれのペースで進められるので女性に優しい職場と言えるかもしれないですね。実際、業務委託しているスタッフは女性しかいないんですけど。

それも小さな子どもがいるお母さんが多いんですけど、索引を作るために本がどさっと家に置かれる状況になると、子どもがそれを読んで家庭内で読書が進むということがよくあります。

—家庭でも読書が進む。それは嬉しい副作用です。

やっぱり子どもたちも本が置いてあると自然に読んでくれるようになるのかなと思います。家にあるものだけだと、限られてしまっていつも同じものになってしまうので。普段読まない本も読めるのが嬉しいということもあるみたいですね。

—ただ、主婦の方ばかりだとスケジュールがきつくなってしまうこともあるのではないでしょうか。

確かに夏休みは子どもが家にいて作業ができない、といったこともありお休みする人が多いですね。でも、各自のペースに合わせて進めてもらえれば良いと考えています。

また、普段でも主婦って家庭を守る中で急な用事が多いんですよ。そういう時に無理にでも作業をしろとは言えません。他の人で代われることがあればそうするし、できなかったら発売を延ばして対応します。

—そのスケジューリングは素晴らしいですね。どの会社もそのホワイトさを見習いたいところです。

うちはメーカーなので、ある程度スケジュールを決められるというのは大きいかもしれませんね。約束してしまったものは仕方がないですが、無理をしないのが前提で、無理をするなら人を増やそうという考えです。

—リモートワークでワークライフバランスも考えられていて、素晴らしい働き方ですね。

誰もやったことのない編集作業

—索引作りの作業する中での発見や、楽しいと感じるのはどんな時ですか?

やっぱり本好きなので読んでいて楽しいです。この話こういう風になっていくんだとか。

—本が好きじゃないとできない作業。

と言っても、文字を読むのが苦痛、といったことがなければ誰であってもできるように育成します。うちの本の編集って誰も経験したことがない作業なので。

—他に類書がないですからね。

嬉しいことでいうと、一冊作るのにすごく時間がかかるので完成した時はやはり嬉しいですね。あとは実際に本を使ってくれた司書さんから「ためになった」「この本があったので、こういう本が見つけられた」と言った感想をもらうとすごく嬉しいです。

—今後やっていきたいことはありますか?

ミステリーや児童文学、時代小説でも、年代で区切って刊行していますが、まだできていないものもあるので、現状のシリーズを最新に追いつかせることはやらないといけないと思いますし、ライトノベルなど、まだ着手していない分野にも広げていきたいと思っています。また、書籍ではなくデータの形としての利活用の需要もあるので、電子図書館への提供や、オンラインデータベース化も進めていきたいです。

そうしたことを通じて、図書館の現場を支えて、読書の推進を少しでも助けられればいいなと思います。

—今日はありがとうございました。

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