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日本唯一の“登場人物索引”を作る出版社に聞く書籍編集術と中高生の「読書離れ」

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BLOGOS編集部

少し前に、インターネット上の読書好きの間で『星新一作品 登場人物索引』という本が話題になった。同書は、星新一の全1060 作品に登場する様々なキャラクター全員のプロフィールと作品名が一覧になった辞典だ。男や青年、エヌ氏など、同名の人物が多く登場する星新一作品であるためにユニークさが際立ったものの、この索引を手がけた「DBジャパン」はこれまでにも多くの登場人物索引を手がけてきた出版社である。

日本で唯一の登場人物索引を専門に扱う同社の三膳直美氏に、こうしたジャンルの本を扱うようになった経緯や図書館の現場における課題などを聞いた。【取材:島村優】

図書館司書の作業を助ける「登場人物索引」

—『星新一作品 登場人物索引』が話題になっていましたが、「DBジャパン」は設立以来、多数の登場人物索引を手がけています。こうした索引を手がけるようになった経緯を教えてください。

大きな理由としては、図書館の司書さんたちからのリクエストが多かったから、ということがあります。

図書館の司書さんは、利用者が探しに来た本を見つけ紹介するというレファレンス業務が大きな仕事になりますが、利用者がカウンターに来て「登場人物の名前までは出ているけど、作品の名前がわからない」というケースが多く、登場人物索引のような本のニーズがあったようです。

—確かに、例えば星新一の作品であれば「飛行機が墜落する夢ばかり見ているエヌ氏が出てくるのはなんの作品だっけ」といった疑問も、登場人物索引のような辞書があればすぐに解決できますね。

そのように役立ててもらえれば、こちらも嬉しいです。出版する本を通じて司書さんたちの業務を支えていきたいと考えていますので。

—基本的には図書館で司書の方々が使うことをメインに考えている一方で、Twitterでも言及されていましたが、一般の方も楽しみながら利用できそうです。

星新一作品が好きな読者からは「1060作品を全部読み返します」といった声も寄せられました。星新一さんの場合は、中高生から親世代まで老若男女幅広い世代に読まれてきた作家さんなので、今読んでも新しいというのがすごいですよね。

またこういう風に色々な作品が集まっていれば、何か調べたい作品があった時に他にも読んでみたい作品が見つかることが多く、中高生の読書推進につながればいいなとも思っています。

—中高生の読書推進ですか。

今、若い子たちの「読書離れ」が進んでいて、もっと本の楽しさを知ってもらおうという取り組みに力を入れています。ただ読書離れはしていても、活字離れはしてないんですよね。スマートフォンを使って毎日友達とLINEで連絡を取っているのが普通だと思うので。でも、読書はしていないんですね。

—若い子も図書館をよく利用しているのかと思っていました。

今の中高生は部活やその他のことが忙しくて、なかなか公共図書館に来られない子も多いそうです。使うとしてもテスト勉強のために自習室を使うくらい。そういう学生に本を借りてもらうためには興味を惹く本を置いておく必要がありますが、それがどんなものかわからない、といった現場の悩みも耳にします。

索引作りを通して、こうした図書館の現状を後方から支援していきたいです。

BLOGOS編集部

中高生から20〜40代が読むラノベ

—扱う本の内容、企画はどのように立てているんですか?

基本的には図書館で必要とされているものから作っているイメージで、よく借りられているものや蔵書があるものが中心になります。例えばロマンスの作品を知りたいという人よりは児童文学作品のタイトルを知りたい人の方が多いと思うので、そうしたジャンルの本を手がけることは多いですね。

図書館でオススメしたくてもそのジャンルを詳しく知らない時に必要になる類の本なので、逆に司書さんたちの苦手なジャンルを求められることが多いですね。そういったこともあり、今はヤングアダルト(中高生)向けの「ライトノベル索引」を企画しています。

写真AC

—ライトノベルが苦手な司書さんもいると。図書館でもどんな作品を入れようか悩んでいるんですね。

実際に読む中高生と司書さんたちの年齢が離れてきていることもあり、どういう本を入れたら良いのかわからないというニーズがあるんです。この本は登場人物索引ではなく物語のテーマやジャンルから作品を探すというものですね。

—なるほど。ライトノベルを例に考えると、出版する本の内容が決まったら次にどんな作業があるのでしょうか。

まずはそのジャンルの定義をするところから始まりますね。ライトノベルって何なんだろうっていう。

—今回のライトノベル索引でいうと、どこからどこまでを索引に入れることにしたのでしょうか。

まずは出版社がラノベレーベルとして発売しているところから決めていきます。ラノベをメインに扱っている外部の会社にもアドバイスをもらいながら進めて。

ただ、今すごく困っていることがあって、出版社が刊行しているライトノベルって幅広くて、中高生に向けたものばかりではなく20~40代の方をターゲットにしているいわゆる“ライト文芸”というものまであります。そうした大人の読者もいる作品だと、残虐なシーンやちょっとエッチなシーンがあるケースも多いので、これを中高生にはオススメするのはちょっと問題だな、と。それなら、どこまでの範囲は掲載できるのかを考える作業がどこまでも続きます。

—中高生向けの索引なので、そういった悩みもあると。

国としては中高生の読書を推進しようという方針があって、図書館もそれを進めていく立場なんですけど、例えばラノベを図書館に入れようというときに全部内容を読んでから選書できるわけではないんです。そのため買ってみたら、そういうシーンや内容があるのを知るということが起こりがちなんですけど、これはまずいなと。

ただ、テーマ・ジャンル索引の中に、こういうシーンがあることがわかるようにしておけば、その本を避けたり、あるいはそれを知った上で買ったりできると思うんです。こういった形で司書さんができないことまでをカバーする仕事なんです。

—掲載する書籍は全て目を通すのでしょうか?目を通すと言っても膨大な量がありますよね。

そうですね。星新一さんの場合は1060作でしたし、最近出版した『翻訳ミステリー小説登場人物索引 単行本篇 2001-2005』は1810冊の登場人物を掲載しました。

ラノベの場合であれば、出版社がラノベとしている正統派のものは目を通します。それ以外にも、ライト文芸と言ってファンタジーではなく現代物だけど、正統派文学小説ではなく少し柔らかくなっているものもあります。これらもラノベに含まれるという概念もあるので1度目を通して。

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