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焦点:ウーバーもエアビーもNG、韓国財閥が阻む新興ビジネス

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Ju-min Park and Hyunjoo Jin

[ソウル 18日 ロイター] - チェ・パダさんが自分のカーシェアリング会社「Luxi」を現代(ヒュンダイ)自動車<005380.KS>に売り込んだとき、最新テクノロジーを取り入れることに失敗すれば、韓国最大手の自動車メーカーである現代自に未来はないと訴えた。

チェさんの売り込みは功を奏した。現代自は、Luxiの株式12%を500万ドル(約5億6000万円)で取得することに合意。同社に取ってカーシェアリング企業への初の投資であり、新時代の輸送競争に足を踏み入れることとなった。

しかしそれから約半年後、現代自はLuxi株を売却した。失業を恐れた何千人ものタクシー運転手が同社の車をボイコットすると脅したからだ、とチェさんは指摘する。また、カーシェアリングを規制する韓国の法律に対する懸念もあったと、現代自の社員らは語る。

現代自とLuxiの破局は、アジア4位の経済大国である韓国で、厳格な規制や強力な労働組合、そして「チェボル」として知られる強大な家族経営の財閥にまん延するリスクを敬遠する文化が、いかにスタートアップ企業の成長を妨げているかを浮き彫りにしている。

韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、現代やサムスンといった一握りの大輸出企業が数十年にわたりけん引してきた同国の成長モデルが、中国との競争や労働コスト上昇によって、限界に達していると考えている。

自動車や船舶、半導体分野などの成長減速を補うため、韓国政府は昨年、新興企業を管轄する中小ベンチャー企業省を新たに設置し、新たなテクノロジー育成に向けた予算を増やしている。

だがその一方で、経済秩序をひっくり返したり、強力な労働組合を怒らせたりすることを政府が恐れるあまり、スタートアップ企業のために厄介な規制を撤廃する動きは遅々として進んでいない、とロイターが取材した10人以上の起業家や投資家、経営者は語った。

そのため、技術に精通しているという韓国のイメージとは裏腹に、革命的なテクノロジーに対して驚くほど抵抗感がある、と彼らは口をそろえる。

現代自はロイターに対し、Luxi株売却の理由について、「自社が追い求めるビジネスモデルに合わなかった」と書面で回答した。

また、同社の最高イノベーション責任者を務めるヨンチョウ・チ氏は、「通勤時間」が不特定のライドシェアリングに対する韓国の規制が理由の1つであり、Luxiがうまくいかないとの結論に至ったと説明した。

その代わり、現代自は今年、シンガポールの配車サービス大手グラブに2億7500万ドル投資している。

<規制の壁>

現代自とサムスンは、国内外の新興企業に投資している。

現代自は、自社の本社に近い国内スタートアップ企業はコミュニケーションがとりやすいとしている。一方、サムスンはロイターに対し、国内の起業家育成のため、5年間のスタートアップ支援プログラムを行っていると明らかにした。

それでも、チェボルの動きは遅すぎると言う人もいる。

「韓国の成功は、素早く模倣する戦略の上に成り立っているが、中国のライバル企業は急速に追い上げている」と、人工知能(AI)を手掛ける新興企業「Fluenty」の共同創業者、ファン・ソンジェ氏は話す。同社は昨年、サムスン電子<005930.KS>に買収された。

「企業にはもう、改革してスタートアップ企業と手を組むしか選択の余地はない。それでも、投資のスピードは十分ではない」と同氏は語った。「韓国企業は取り残される重大な危機に直面している」

規制ももう1つの問題だ。

投資規模で世界のトップ100に入る新興企業の約7割が、韓国の法律によって完全または部分的にサービス参入を阻まれていることが、グーグルキャンパス・ソウルと社会福祉財団「峨山(アサン)ナヌム財団」による共同調査で判明した。

そうした企業には、米民泊仲介サイトのエアビーアンドビー(Airbnb)、米配車サービス大手ウーバー、中国のオンライン決済大手アント・フィナンシャルなどが含まれる。

韓国で利用者数最大のメッセージアプリを運営するカカオ<035720.KS>は2月、Luxiを2500万ドルで買収した。だが、相乗り規制の壁に阻まれ、タクシー運転手の激しい抗議が起きる中、いまだにサービス開始には至っていない。

あるタクシー運転手は先週、焼身自殺で抗議した。労働組合に加入する運転手たちは、今週に大規模デモを計画していると言う。

焼身自殺による抗議を受け、カカオはカーシェアサービスの開始スケジュールを延期したとしている。

韓国の国土交通省はコメントするのを差し控えた。

また韓国では、規制により、ベンチャーキャピタルファンドが金融、不動産、宿泊施設、飲食店といった分野に投資することを禁じられている。

韓国政府はこうした規制を撤廃する新たな法律を提案しているが、中小ベンチャー企業省の高官は、それは簡単にはいかず、すぐには実現しないことを認めた。

「要するに、われわれはイノベーションに向かわねばならないが、それには多くの時間がかかり、既得権益の仲立ちをするには困難なプロセスを要する」と、同高官は語った。「現実問題として、われわれは既得権益を無視できない。明確な答えなどない」

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