先月来、世の中を賑わせているカルロス・ゴーン元日産会長の事件。
ミーハーな話題抜きに、いわゆる「企業犯罪」に関する刑事司法手続の在り方を考える上では非常に興味深い素材なのでしばらく追いかけているのだが、ここにきて、金商法違反の被疑事実での勾留延長却下、そしてその翌日、保釈請求に対する決定を待つことなく、会社法違反(特別背任)を被疑事実として再逮捕勾留、という、またまたウォッチャー的には美味しすぎる展開になっている。
「東京地検特捜部は21日、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)が自身や第三者の利益を図って日産に損害を与えていたとして、ゴーン元会長を会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕した。自身の資産管理会社の損失を日産に付け替えたほか、多額の資金を第三者に流出させた疑いがあるとしている。」(日本経済新聞2018年12月21日付夕刊・第1面)
ゴーン氏を拘置所に追い込んだ検察当局や日産現経営陣の真の動機はともかく、純粋に独立・完結した事件として見た時に、法規範的にも道義的にも、一連の“大捕り物”を正当化できるのは、“会社の金で私腹をこやした”という点だけだったから、これでようやく問題が「正常化」した、という見方はできる。