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天皇陛下のお言葉:象徴としての天皇

 85歳の誕生日に際して、天皇陛下は記者会見で、「私はこれまで、象徴としての私の立場を受け入れ、私を支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝する」と述べられた。

 また、1993年8月27日には、次のように記されている。

「長い歴史を通じて政治から離れた立場において、苦しみあるいは喜びに国民と心を一つにして、国民の福祉と幸福を念ずるというのが日本の伝統的天皇の姿でした。日本国憲法は『天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴』であると定めています。

天皇は国政に関与せず、内閣の助言と承認によって憲法に定められた国事行為を行う、と規定しているのは、このような伝統に通じてのものであります。天皇は日本で行われる国内のあるいは国際的行事に出席し、外国の賓客を迎え、また外国も訪問しますが、これはいずれも国や国民のために、また国際親善のために、象徴という立場に立って行うものです。

年始には天皇皇后が著名な学者の話を聞く講書始の儀や、多くの国民からの詠進歌の中から選ばれた伝統的三十一音の和歌が、天皇や皇族の歌とともに披露される歌会始の儀に出席します。これは歴代の天皇文化を大切にしてきた伝統の表れです」(イタリア国・ベルギー国・ドイツ国ご訪問事前招待記者からの質問に対する文書回答から)

 私は、自民党の第一次憲法改正草案を起草するとき、天皇陛下のこのようなお考えを常に念頭に置いていた。したがって、「元首」と憲法に書き込むことをしなかったのである。

 また、9月24日の私のブログ「象徴としての天皇:伊藤博文の慧眼」(https://ameblo.jp/shintomasuzoe/entry-12407279564.html)に書いたように、瀧井一博『明治国家をつくった人びと』を参考に、伊藤博文の「私は日本の君主は国家を代表すると言はずして、日本国を表彰する、表はすと云ふ字を使ひたいと思う。決して代表ではない」という言葉を紹介した。

 明治憲法起草に当たって、伊藤は立憲主義(権力の抑制)と、君主制をどう両立させるかに腐心したのである。伊藤に対して、明治憲法の実質的な起草者とされる井上毅は天皇親政を強く主張し、「議院は政権争闘の市場」として議会に対する絶望的な不信感を抱いていた。しかし、最後は、政党政治家にまで変身した伊藤が井上を抑えたのである。

 西欧列強と競争して国際社会を生き抜いていくために、君主制と立憲主義の両立を憲法で実現しようとした明治の先人たちの苦労を想起すべきである。自ら海外に留学して憲法を学んだ伊藤博文の努力に比べて、今の政治家たちの憲法論議は余りにも薄っぺらである。日本の将来に対して暗澹たる気持ちにならざるをえない。

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