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中国が怖くて"空母"に頼る安倍政権の詭弁

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■今後5年間の防衛費は過去最高の27兆4700億円

政府が12月18日、新たな防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画を閣議決定した。宇宙やサイバー、電磁波の攻撃も想定した「多次元統合防衛力」を掲げた。1976年の初の策定以来、5年ぶり5回目の改定に当たる。今後5年間の防衛費の総額については、27兆4700億円とした。過去最高の金額である。

間違いなく、北朝鮮は水面下で核・ミサイルの開発を続けている。日本列島は完全に北の核ミサイル攻撃の射程内に入っている。

中国は南シナ海全域に自国の権利が及ぶと主張し、南沙諸島への海洋進出を強め、次々と人工島を造成、軍事拠点化している。

ロシアにしても北方領土問題の解決がこじれた場合、どう出てくるか、不安材料は尽きない。

海上自衛隊最大のヘリコプター搭載護衛艦「いずも」。(写真提供=海上自衛隊)

■「目には目を」では憎しみの連鎖が生まれるだけ

日本がそんな北朝鮮や中国、ロシアに対抗するには、防衛力を強めるしか道はないのか。相手国以上の装備調達力を行えば、道は開かれるのだろうか。

これまで沙鴎一歩は「目には目を、歯には歯を」という姿勢を強く否定してきた。

たとえば2017年11月7日付のプレジデントオンライン。「トランプ大統領に読ませたい東京新聞社説」という見出しの記事で最後にこう主張した。

「北朝鮮への圧力を最大化する方針を今回の来日で安倍首相と確認するつもりなのでしょう」
「あなたのいう『圧力』には経済制裁だけではなく、武力攻撃も入っていると聞きます」
「しかし『目には目を、歯には歯を……』では憎しみの連鎖が生まれるだけです。そのことを十分に理解したうえで軍事優先の北朝鮮に対する抑止を行うべきです」

もちろん、「あなた」とはトランプ大統領のことだ。ちなみに編集部が書いてくれたリード(前文)は次のとおりだ。

「米大統領のトランプ氏が11月5日、来日した。安倍晋三首相は日米の蜜月ぶりをアピールしたいようだが、だまされてはいけない。その政策の根幹は『米国第一主義』にある。ジャーナリストの沙鴎一歩氏は『ロシアゲート疑惑を論じた東京新聞社説がすばらしい。トランプ氏に読ませたい』という。パフォーマンスで成り上がったトランプ氏も、ついにここまでか――」

■防衛力増強以外の方法を見つけるべき

防衛力の増強は一時的には抑止力が働き、相手国との関係を有利に保つことができるかもしれない。だが、長い目で見た場合、軍事力の増大は悲惨な大戦争を繰り返すだけである。

「目には目を」という圧力は、憎しみの連鎖しかうまない。「非現実的な理想論だ」と批判されようが、沙鴎一歩はこの考え方だけは変えない。

防衛力を強めるべきか、それとも防衛力増強以外の方法を見つけるべきなのか。

その方法を見つけ出して世界に訴えることができるのは、世界で唯一の敗戦・被爆国の日本しかないと思う。

さて新聞の社説が今回、どう主張しているのかを読み解きながら、「答え」を探っていきたい。

■「不毛な軍拡競争に道を開きかねない」

12月19日付の朝日新聞は社説を1本で大きく扱い、「安保法後の防衛大綱」「軍事への傾斜 一線越えた」との見出しを掲げている。

「一線越えた」とは、実に安倍政権嫌いの朝日社説らしい指摘だ。まず冒頭部分で鋭く指摘する。

「これまで抑制してきた自衛隊の打撃力を拡大する」
「こうした防衛政策の転換をさらに推し進めれば、不毛な軍拡競争に道を開きかねない」
「年明けの通常国会で、徹底的な議論が必要だ」

「不毛な軍拡競争」と言い切るところも、さすが朝日社説である。沙鴎一歩は「目には目を」と防衛力の強化のみに走る危険性は指摘したが、「不毛」とまでは批判できない。なぜなら抑止力は働くことは働くからだ。

■「戦闘機を常時艦載しないので『空母』に当たらない」

朝日社説はさらに矛先を安倍政権に突きつける。

「より多くを日本に求める米国の意向を受け、自衛隊の攻撃的な能力は少しずつ整備されてきたが、今回は一線を越えたと言わざるをえない」
「『空母』の導入だ」

見出しの「一線を越えた」がここに出てきた。「空母の導入」とは海上自衛隊で最大級の「いずも」型護衛艦2隻を改修し、垂直着陸ができる米国製戦闘機のF35Bの購入を指す。

「政府はかねて、自衛のための必要最小限度を超える攻撃型空母は憲法上保有できないとしてきた。改修後のいずもは戦闘機を常時艦載しないので、『空母』に当たらないと説明するが、詭弁というほかない」
「将来的には、南シナ海やインド洋、中東に派遣され、米軍機の給油や発着に活用される可能性も否定できない」

沙鴎一歩も「詭弁」だと思う。黙っていると、政治の世界はこの詭弁が通用する。それだけに来年の国会での野党の追及に期待したい。野党の存在意義が掛かっている。

私たち国民はその詭弁に騙されてはならない。国会の与野党のやり取りの様子をしっかり把握し、自分の頭で考えるべきである。

■「慎重な検討」を訴え続ける朝日の理想主義

朝日社説は「大綱の主眼は、北朝鮮ではない。軍拡を進める中国の脅威への対処にある」と指摘し、「たしかに、ミサイル対処をはじめ、軍事技術の急速な進展への対応は必要だろう」と書き、さらにこう続ける。

「宇宙やサイバー、電磁波といった分野は、現代の安全保障にとって、死活的といえるほど重要性を増している。その現実は受け止めねばならない」
「大綱には宇宙領域専門部隊の創設や宇宙状況監視(SSA)システムの整備、サイバー防衛隊の拡充が盛り込まれた」

理想主義が色濃い朝日社説も、防衛力の増強を是認し、現実主義に転向するのだろうか。そう考えながら読み進むと、違った。

「ただ、日本の防衛政策の原則を踏まえ、自衛隊がどこまで対応すべきか。法的にも能力的にも難しい問題をはらむ」
「宇宙空間での監視能力の強化は、目標を特定し攻撃する能力に重なる。サイバー空間での攻撃と防御の関係をどう考えるのかについても、慎重な検討が必要だろう」

自衛隊の法的拘束の問題と実際の能力の問題を持ち出すとともに「慎重な検討」の必要性を主張する。やはり朝日社説は変わらない。

■「緊張や危険は、兵器の増強では決して解決できない」

そんな朝日社説は最後に国連のグテーレス事務総長が5月に軍縮アジェンダを発表した際の言葉を持ち出す。

「高まった緊張や危険は、真剣な政治的対話や交渉によってのみ解決できる。兵器の増強では決して解決できない」
「軍事に過度に頼ることなく、外交努力を通じて緊張を緩和し、地域の安定を保つ――。いま必要なのは、総合的な安全保障戦略にほかならない」

単なる防衛力増強ではなく、「外交」という政治的な対話によって一線を越えずに保持していこうというのだ。沙鴎一歩の考えに近いことは近いが、「外交」そのものがくせ者であることを忘れてはならない。

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