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劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか

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Kindle版もあります。

内容(「BOOK」データベースより)
ビジネス書大賞2018準大賞受賞作『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の著者による、日本社会の閉塞感を打ち破るための画期的な論考!

 僕もこの本の著者の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』を読みました。

fujipon.hatenadiary.com

 このベストセラーと同じ著者なのですが「劣化」とか「オッサン社会」とか、なんだかやたらと煽情的なタイトルだなあ、と思っていたんですよね。
 でも、読んでみると「なるほど」と思うところが多々ありました。
 ちなみに、著者は、この本での「オッサン」を以下のように定義しています。

1:古い価値観に凝り固まり、新しい価値観を拒否する
2:過去の成功体験に執着し、既得権益を手放さない
3:階層序列の意識が強く、目上の者に媚び、目下の者を軽く見る。
4:よそ者や異質なものに不寛容で、排他的

 中高年の男性でも、上記に当てはまらない人はたくさんいる、と著者は述べていますが、まあ、そういう予防線を張っておかなければ、ということなのでしょうね。例外は、たくさんいるわけですし。

 著者は、現在(2018年)の「オッサン」が劣化している理由として、こう述べています。

 そもそも、なぜここまで「オッサン」は劣化してしまったのでしょうか。
 こういう世代論は実証的な検証が難しく、最後には不毛な「そう思う」「そう思わない」という水掛け論になることが多いので個人的にはあまりそそられないのですが、筆者が一点だけ、以前からどこかでちゃんと考えなければいけないと感じているのが、現在の50代、60代の「オッサン」たちは、「大きなモノガタリ」の喪失以前に社会適応してしまった「最後の世代」だという点です。

 次の図1を見てください。これは横軸に戦後から現在までの「年代」を、縦軸に20代から60代までの「世代」をとり、各世代の人々が、各年代において、どのような社会的立場で過ごしてきたかをまとめたものです。
 もちろん、個別企業・個人の状況は千差万別なので、あくまでも全体的な傾向ということで大きなストーリーをつかみ取ってもらえればと思います。

 同図を見てまずわかるのは、図中においてグレーで強調されている世代、つまり戦後の復興と高度経済成長を支えたリーダーたちは、まさに「大きなモノガタリ」つまり「いい学校を卒業して大企業に就職すれば、一生豊かで幸福に暮らせる」という昭和後期の幻想の形成とともにキャリアの階段を上り、「大きなモノガタリ」の終焉とともに、社会の表舞台から退いていった、ということです。

 現在でも多くの関連書籍が出版され続ける田中角栄、盛田昭夫、本田宗一郎といった昭和期のリーダーのほとんどすべてが、このセルに含まれているという点は、重大ななにかを示唆していると思います。

 一方で、現在の「劣化したオッサン」についてはどうでしょうか。
 現在60代の人は1970年代に、現在50代の人は1980年代に社会人となり、それぞれの20代・30代をバブルの上昇景気がとどまるところを知らないと思われた80年代、つまり「大きなモノガタリ」が、長い坂の上にまだ存在していると思われていた「最後の時間」に過ごしています。

 昭和の高度成長期を支えた一流のリーダーたちが、20代・30代を戦後の復興と高度経済成長のなかで過ごしたのに対して、現在の「劣化したオッサン」たちは、同じ年代をバブル景気の社会システム幻想、つまり「会社や社会が示すシステムに乗っかってさえいれば、豊かで幸福な人生が送れる」という幻想のなかで過ごしてきたのです。これは人格形成に決定的な影響を与えたと思います。

 偉人たちが時代をつくったのか、時代が偉人たちを生んだのか、というのは、考えさせられるところではありますね。
 いまのオッサンたちがダメになった、というよりは、国の人口が増え、どんどん経済が成長していく時代では、すぐれた人物がより大きな成功を手にしやすく、経済が停滞している時代ではその逆である、と考えたほうが良いのかもしれません。
 著者は、現代の「オッサン」について、「偏差値の高い大学、良い会社に入りさえすれば、一生安泰」という物語を若いころに信じ込まされ、努力してきたにもかかわらず、梯子を外されてしまった人々だと解釈しているのです。

 僕はこれより少し下の世代なのだけれども、その「気分」は感じてきたし、「オッサン」たちが、こういう価値観で子どもを教育しようとして、「現実がわかっていない」と反発される事例も少なからずみてきました。
 人は自分にとっての正解が、ずっと正解であり続けると思い込んでしまうものなのです。

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