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緊張感なき日本の政治 背景にあるのは国民の「政治的無関心」~田原総一朗インタビュー

共同通信社

外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法(入管法)の改正案が12月8日の参議院本会議で可決された。政府・与党の改正案に対して、野党が激しく反発したが、結局は議席数で圧倒する与党が押し切った形だ。今回の入管法改正について、田原総一朗さんはどう見ているのか。話を聞いた。【田野幸伸・亀松太郎】

安倍政権は「外交で手一杯」なのでは?

入管法改正案の審議時間は、衆議院で17時間、参議院20時間とわずかなものだった。ほとんど中身の審議はしていないが、強行採決によって改正法が成立した。

なぜ、こんなに政府は焦るのか。自民党の幹部たちに聞いてみた。先日、アルゼンチンでG20が開催されたが、トランプ、習近平、プーチンといった有力国のトップがみな、安倍首相と熱心に話をした。つまり、安倍首相が中心的な役割を果たしたというのだ。

AP

その背景にあるのは、安倍内閣が長期政権で、日本経済も安定していることだ。逆にいうと、内政が順調だから外交に注力しているという見方もできる。米中の対立が目立つ中で、アメリカや中国とどう付き合っていくのか。北方領土問題の打開策が見えない中で、ロシアとどう交渉するのか。外交は課題が山積している。

このような状況からすると、安倍首相は外交で手一杯で、内政に手をつける余裕がないのではないかとも思えてくる。

実際、入管法改正案の国会審議では、官僚から渡された文書をただ読んでいるだけだった。野党から繰り返し質問されても、同じ文書を繰り返し読んでいる。安倍首相はほとんど改正入管法に関わっていないようだった。

法務大臣も野党から質問されるたびに「これから検討したい」と答え、まともな返事をしていなかった。今後、外国人労働者をどう増やしていくのか。中身がほとんど詰まっていない状態なのに、改正法が成立してしまった。

現在、外国人の技能実習生は約26万人いるとされているが、非常に低い賃金で働かされているという実態がある。長時間労働も多いと聞く。野党は法務省の資料をもとに「外国人技能実習生が3年間で69人亡くなっている」と公表したが、安倍首相は初めて聞いたと言った。おそらく、法務大臣も初めて聞いたのではないか。

自民党議員は「憲法」から逃げている

実質的な審議がほとんどないまま成立した改正入管法だが、なぜ、こうなってしまったのか。この問題に詳しいエコノミストに聞くと、こんな答えが返ってきた。

「外国人労働者を増やすことについて、法務省は反対のはずだ。彼らはむしろ規制したいと考えていて、規制を緩めるのは反対の立場だ。おそらく、入管法改正は官邸筋から要求されたのだろう。現在、地方の中小企業を中心に人手不足に悩まされている。労働者が約58万人足りないと言われている現状を受けて、官邸が法務省に、外国人労働者の受け入れ拡大を押し付けたのではないか」

先日、元財務官僚の高橋洋一さんに会った。高橋さんは今回の改正法案について、「あまりにもずさん。形ができていない」と言っていた。高橋さんによると、法務省の中堅官僚は入管法改正に対して積極的ではなかったという。これは「官邸が法務省に入管法改正を押し付けた」というエコノミストの話と合致する。

こんなに強引に改正入管法を成立させて、来年の4月までに具体的な内容をきちんと固められるのか。しかし、法務大臣の答弁を見ていると、他人事というか、緊張感が伝わってこない。

最近の政府や自民党を見ていると、他の点についても緊張感がない。たとえば、安倍首相は憲法を改正すると言っているが、自民党の中で議論が進んでおらず、先延ばしになっている。

自民党が本気で憲法改正をするつもりならば、自民党の国会議員が選挙区に行って、選挙民に「なぜ憲法改正をするのか」「憲法改正をすると、この国がどう良くなるのか」を説明して、理解を得るべきだ。ところが、選挙民を説得するどころか、憲法をめぐる議論から逃げている。憲法に触りたくないという印象だ。

憲法改正を掲げる自民党の国会議員が憲法から逃げていて、どうするのか。そんなことで、国民が憲法改正に賛成するわけがない。本当は自民党の議員の多くは、憲法改正なんてどうでもいいと思っているのではないか。

入管法にしても憲法にしても、最近の政治はどうにも緊張感がない。たるんでいる。その理由の一つとして、安倍一強政権が長く続いて、野党が政権奪取する可能性が全く見えず、自民党内も安倍首相のイエスマンばかりになっているという現状があげられる。

新聞やテレビも「強行採決だ」と一応問題にはするが、長く続かない。さらには、国民の多くが政治に関心を失ってしまっている。小泉進次郎議員も「日本国民の政治的無関心は大変な問題だ」と、僕に言ったことがある。

BLOGOS編集部

以前、スイス出身のタレント・春香クリスティーンさんと話したとき、「スイスやフランス、イギリスでは、学生たちが会うと政治についての議論をするのに、日本では学生が政治について全く話さない。なぜなんですか」と僕に聞いたことがある。いまの日本の学生は政治に関心を示さない。何人かの学生に聞くと、「政治の話を持ち出すと、変なヤツだと思われて、仲間外れにされてしまう」と話していた。

実は、こういう政治への無関心こそが一番の問題なのではないか。

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