記事

なぜ基地問題は沖縄だけが背負うのか…国民全体で議論が必要だ〜玉城デニー沖縄県知事インタビュー

1/2
BLOGOS編集部

翁長雄志前知事の死去に伴い9月30日に投開票された沖縄県知事選で、過去最多の39万6632票を獲得して当選した玉城デニー知事。BLOGOS編集部は、玉城知事の単独インタビューを行い、基地問題についての考えや経済政策、選挙戦で飛び交ったフェイクニュースといった幅広いテーマについて話を聞いた。【取材:島村優】

フェイクニュースが飛び交った県知事選挙

—県知事就任おめでとうございます。フェイクニュースが飛び交う選挙戦となりましたが、そうした情報について当事者としてどのように見ていましたか?

私も普段からFacebookやTwitterを見ていて、様々な意見があることは理解していますが、今回は選挙前から選挙期間中にいたるまでフェイクニュース、ヘイトスピーチがたくさん見られたなと思います。

聞いたところでは「玉城デニー」で検索すると8割がヘイトやフェイクニュースだったと。自分で検索してみても、これは違うだろうという情報が広く拡散されている状態で、そうしたことに対しては法的手段も取らせていただきました。

—フェイクニュースにはどういった対応が必要だと思いましたか?

今回の知事選では、地元2紙(琉球新報・沖縄タイムス)やファクトチェックを専門に行う団体が、様々なニュースをリアルタイムで検証し、多くのフェイクニュースを取り除いていました。

私の元にもその団体から確認が来て、こうしたことはとても重要だと思いましたね。私しか知らない事実は、私自身が伝えるしかありません。

起きていない、言っていないことを、さも実際にあったことのように言われ、それがなかったこととして証明できなければ、それはあったのと同じだ、ほらやっぱりあったじゃないか、というのがフェイクニュースの論理です。

—起きてないことを証明する必要があるんですね。

ただ実際には起きていない、言っていないことを証明することほど難しいことはないんです。そのため、今回の選挙戦では地元2紙やチェック団体が時間をかけて確認してくれたことはすごくありがたいと思っていました。公平で民主的な選挙を担保する上では、こういう作業は非常に重要になってくると思います。

BLOGOS編集部

—演説などの現場で、有権者がフェイクニュースに影響されていると感じることはありませんでしたか?

現場では渾身の力を込めて政策を訴えていましたから、その話を聞いた人たちには玉城デニーが伝えていることを受け取っていただいたと思います。

そこで相手候補やその支持者はこう言っている、それは違います、私はこういう風に考え、こういう風に行動しています、といったことは現場でも言う必要があります。

—自身の口でもフェイクニュースは否定すると。

様々な形で、どれがファクトで、どれがフェイクなのかを、沢山ある情報の中から見極めていただくことは非常に難しいかもしれません。それを当事者として言っていかないといけないというのは、これからの選挙運動ではもっと民主的な形、SNSなども利用した形にしないといけないのでは、ということは痛切に感じました。

—沖縄では選挙戦が激しいイメージがあります。選挙の度に、相手候補の支持者と自身の支持者との分断は広がっていくと感じますか?

いろいろな考えを持っている人がいる中で、全てが同じになることは難しいと思います。右側で活動している方、左側で活動する方、どのような思想信条も否定されるものではなく、私もそのうちのどれが良いか悪いかをいう立場にはありません。

ただ私が思っている思想信条の中から、できるだけ多くの方々に政策が届けられるよう県知事としてどういう役割を果たすのか、そういうことが求められていると思います。

—異なる意見を持つ人にも、自分の考えを伝えていくことが大切だということですね。

いろいろな意見がある中で、玉城デニーはこういう沖縄を進めていきたい、沖縄の姿を描いていきたい、ということをしっかりと伝え、そのためにはみなさんにこのような形で協力していただきたい、といったことを真摯に訴えることが選挙における候補者としての役割なんだろうなと思いました。

日本政府の努力は全く見えない

BLOGOS編集部

—沖縄県知事として、任期中に実現したいことを教えてください。

まず沖縄にとって一番大きな日常の問題は米軍基地です。米軍が日米地位協定(※)によって排他的管理権を持っているということは、その恣意的な運用を認めているということ。こういうことはあってはならない。

※日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定。米軍が基地の管理権を持つことや米軍の出入国の保障、課税免除、軍人、軍属らの刑事裁判権などについて規定している。

そのために日米地位協定の抜本的な改定と合わせて、沖縄にこれ以上米軍基地が作られないように、辺野古の新基地建設に反対している意義を理解していただけるよう情報発信をしていきたいと思います。

もう一つ、沖縄県が現在、一丁目一番地で取り組んでいるのは、子どもの貧困問題です。子どもの問題は、子どもの問題ではなくその子を取り巻く家庭環境や学校、社会の環境すべてが関わってくるものです。私たちは、そういったあらゆる面に目配り気配りをしながら、この貧困から立ち直っていけるよう、子どもたちを支えていきたいです。

—知事選でも普天間基地の閉鎖、辺野古移設反対を訴えていましたが、改めて米軍基地についてのデニー知事の考えを教えてください。

基地反対について、私が一番訴えたいことは辺野古の新しい基地の建設、そしてそのための埋め立て工事は断念するべきだ、ということです。この6~7割の県民の思いは揺るぎません。

このように訴えている理由は、戦後73年経ってもいまだに、日本の0.6%の面積しかない沖縄県に日本の70%あまりの米軍基地が集中させられているためです。このことは何度も何度も訴えているのですが、返還や移設については全てアメリカと日本の政府間の協議によって進められており、沖縄県民の積年の思いや願いがなかなか伝わっていないということがあります。

沖縄に基地を置いておくことがアメリカにとって必要、その理由として沖縄のアジアにおける地理的優位性は揺るがない、といったことが挙げられますが、まるで我々沖縄県民が抗うことができないといった論調になっていることが非常に残念だなと思います。

—日本政府の動きについてはどうお考えでしょうか。

これまでにも米軍は様々な返還計画を進めていますので、日本政府がその計画に則って、また県民の要求・要望を同じ国民の声として、計画の中に折り込んでいけば、もっと早いタイミングで基地のない平和な取り組みができたのではないかと思います。

安倍総理は「自分たちが出来ることは全力でやる」とおっしゃっています。ただ、普天間飛行場の運用停止(※)は2019年2月が期限ですが、それに向かってどれだけ努力をしているのか、ということが沖縄県民からは全く見えない。

※2014年に政府は沖縄県に普天間飛行場の「5年以内の運用停止」を約束。 11月に政府側は移設作業が遅れていることを理由に運用停止は難しいと説明している。

BLOGOS編集部

それどころか、現職の防衛大臣は「仲井眞知事と埋め立て工事をする前提での約束ですよ」というニュアンスのことすら言葉にするようになっています。

いったいどこに「県民の思いに寄り添う」という総理の言葉の実行が担保されているのか、全く理解することができません。これが一番大きな問題だと思います。

—なるほど。辺野古移設反対はどのように進めていきたいですか?

ですから私たちは、しっかりと政府との対話を続け、その中で沖縄の基地問題解決に向けた方法を真摯に考えなければならないと思います。そうあってこその、日本における民主主義の成熟であると、それを願って声に出しているわけです。

—「日本の民主主義の成熟」というご指摘がありましたが、沖縄の基地問題に沖縄県外の人はどのように関わってほしい、関わるべきだと考えていますか?

日米安全保障体制は、沖縄だけが担う問題ではないんです。日本とアメリカ全体の計画ですから、国民の皆さんもこの安全保障体制を認めているのであれば、応分の責任を分担していただかなければいけない。「自分も当事者の一員なんだ」ということを分かっていただきたいのです。

日米地位協定の改定について考えても、これは日本とアメリカの間で結ばれている協定ですから、決して沖縄県民だけに適用されているわけではなく、日本全体、国民にとって影響がある、誰の身にも同じような責任や課題として持たされているものだと考えていただければと思います。

—基地がないから、遠い沖縄の話だから、ではなく自分のこととして考えてほしいということですね。

そうです。もし自分の子どもが米軍関係者による事故に遭ったら、もし米軍機が自分の住む家の近くの民間地に墜落したら…といったことも起こる可能性がないとは言えませんよね。こういうことを想像していただければ、国民の皆さまにもなぜ沖縄が基地を減らしてほしいと言っているのか、なぜ日米地位協定を改定してほしいと言っているのか、もっと理解してもらえるんじゃないかと思います。

そうしたことを理解した上で同じ国民としてどういう声を上げなければならないのか、政府に何を求めなければいけないのか、ということを一人一人ができる行動につなげていただきたいなと。

あわせて読みたい

「玉城デニー」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    アイリスオーヤマ製TVの凄さとは

    WEDGE Infinity

  2. 2

    ヌード講座判決 賠償命令の背景

    町村泰貴

  3. 3

    堀江氏「桜疑惑は些末な問題」

    ABEMA TIMES

  4. 4

    ナイキCMを100%褒め称える危うさ

    倉本圭造

  5. 5

    音喜多氏がみた辻元議員のズルさ

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  6. 6

    凋落の新聞社 報道の行く末とは

    ヒロ

  7. 7

    岩田健太郎医師のGoTo批判に疑問

    かさこ

  8. 8

    フォロワー160万人 AV女優の戦略

    NEWSポストセブン

  9. 9

    10代死亡はミス? 厚労省の大誤報

    青山まさゆき

  10. 10

    コロナ報道の正確性に医師が疑問

    名月論

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。