記事

【読書感想】官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態

1/2


官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態 (朝日新書)

Kindle版もあります。



官僚の掟 競争なき「特権階級」の実態 (朝日新書)

内容(「BOOK」データベースより)

自殺の大蔵、汚職の通産、不倫の外務。かつてそう呼ばれ、今も特殊な「独自文化」に生息する官僚たち。難関試験を突破したひとにぎりの超エリートが、政策を作り、政治を動かし、実質、国家を「統治」している。どんなに不祥事を起こそうと変わることのない「全体の奉仕者」の実態とは何か?官僚の裏も表も知り尽くした著者の実体験にもとづく究極の官僚論!

 自らも外務省での勤務経験があり、そこで鈴木宗男事件に連座し、512日間の勾留も経験した著者による「官僚論」。

 佐藤さんは、さまざまな形で、国家や官僚のありかたについて、国民に警鐘を鳴らし続けているのですが、けっして、官僚や外務省を恨んでいるわけではない、と仰っています。

 職業作家になってから、『国家の罠』『インテリジェンス人間論』『外務省に告ぐ』(いずれも新潮文庫)、『交渉術』(文春文庫)、『官僚階級論』(にんげん出版)などで外務官僚について、さまざまなことを書いてきたが、私は官僚は現代社会において不可欠な存在であるし、官僚の能力と士気が、国民と国家に与える影響は極めて大きいと考えている。

 外務省と私は、依然として緊張関係にあるが、一部の外務省幹部とは、非公式に接触し、誤解からトラブルが生じないようにする安全保障の仕組みは作っていた。現役を離れた外務事務次官や大使を経験した人たちとは、親しい付き合いを続けている。東京地検特捜部が扱った刑事事件に連座して役所を去った人で、出身官庁とこのような関係を継続している事例は少ないと思う。

 高校時代の友人で、外務省以外で勤務する官僚とは今も親しく付き合っている。各省の幹部になるような官僚には、能力が高く、人格も円満で、国民と国家のために全力を尽くして働いている人が多い。この人たちは、行政官としてどのようにすれば、激しく変動する国際社会の中で日本が生き残っていくことができるかについて真剣に悩み、考えている。

 それだから、霞が関(官界)や永田町(政界)の内在的論理に通じているとともに、現在は作家として官僚とは異なる角度から社会を見ている私と意見交換をして、それを国家政策に生かそうとしているのだ。

 僕にも官僚になった高校時代の同級生がいるのですが、僕の知り合いは、穏やかで勤勉でモラルも高い、立派な人ばかりなんですよ。

 マスメディアでは、どうしても、「おかしな官僚」「個性が強すぎる官僚」ばかりがクローズアップされがちなのですが、その大部分は、僕の知り合いのような「良心的な官僚」なのではないかと思うのです。

 ただ、「競争が少ない世界」「個性を発揮することを求められない環境」であり、一般常識よりも、官僚の世界での「狭い常識」が優先されるのも事実なようです。

 官僚社会では、身分保障がしっかりしています、ぬるま湯で、コップの中の嵐はしょっちゅうあるけれど、総じて守られている世界です。あのソ連が1991年に崩壊するまで持ちこたえられたのもまさに官僚制によって支えられていたからです。どういうことかというと、ソ連の官僚はモラルが高くて、あの共産主義体制を実現することが、人生の目的だと本気で考えている人が多かったのです。それだから、給与はぜんぜん上がらなくても、出世できなくても、「エリートというものは人民や社会のために働かないといけない」と鉄のようなモラルがあり、それが強かったのです。その意味においては、聖書の中の「使徒言行録」20章35節にある「受けるよりは与えるほうが幸いである」というイエスの言葉をまさに地で行く人たちが多かった。言い方を変えれば、共産主義というのは、世俗化された形でのキリスト教だったのです。

 遠藤周作が小説『沈黙』で描いてみせたように、江戸時代の鎖国という状況の中でも殉教を恐れずやって来たカトリック教会の宣教師たちと同じだけのモラルがあったと言えます。私がつきあったソ連の官僚も、とくに選び抜かれたエリートたちは、滅私奉公型の人たちが多かったと思います。深夜の1時、2時まで仕事をするのは普通のことだと考えていたし、それでも文句一つ言わずに働いていました。

 だからこそ、ソビエトという体制が破綻してボロボロになっても、崩壊する寸前まで、あの国はもっていたのです。「この体制の中で何とかしないといけない」と必死で考えながら、しかし、エリート官僚たちにも「大局」は見えなかったわけです。この体制にはもう発展可能性がない、ということが見えずに、なんとかこの中で生き残ろうという弥縫策(びほうさく)をいろいろ考えていたのです。

 官僚の世界に浸かっていると、ものすごく優秀な人たちでも、自分が属している世界のなかでの最良の選択をする、というのが当たり前になってしまっていて、世界そのものを疑う力が失われてしまうようなのです。

 かれらは仕事熱心で、「世の中のために」「この秩序を保つために」全力を尽くすのだけれど、その能力は、ときに、時代遅れだったり、多くの人にとって間違いだったりする体制を維持することに発揮されてきました。

あわせて読みたい

「官僚」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    年金生活者に支援給付金の新制度

    Hirotaka Kanno

  2. 2

    男性を手玉にとる若い女性の不安

    幻冬舎plus

  3. 3

    日本は最も成功した社会主義国

    自由人

  4. 4

    韓国が安倍政権を叩き始めたワケ

    NEWSポストセブン

  5. 5

    昇進に影響? 忘年会スルーへ警鐘

    かさこ

  6. 6

    街宣右翼に山本太郎氏「おいで」

    田中龍作

  7. 7

    野口健 グレタさんを非難し賛否

    女性自身

  8. 8

    シン・ウルトラマンに見るヲタ魂

    krmmk3

  9. 9

    サンド M-1でアマに負けた悔しさ

    幻冬舎plus

  10. 10

    沈む米英EUと日本は距離置くべき

    早川忠孝

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。