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80時間世界一周



出版社からのコメント

近頃話題の格安航空(LCC=ロー・コスト・キャリア)。でも、実際に乗るとなると、安全面やサービス面に不安を感じる人も多いだろう。そんな読者になり替わり、LCCにとことん乗りまくってみたのが著者。LCCと大手航空会社のディスカウントチケットを組み合わせ、なんと80日間ならぬ80時間で世界一周してしまったのだ。

運び屋やテロリストと間違えられつつ、短時間での乗り継ぎのため空港を走る! その珍道中の一部始終をリポートしつつ、LCCの上手な活用法などを解説。面白くて役に立つ(かもしれない)異色の旅行記となりました。

茨城空港からスタートして、上海、モスクワ、デュッセルドルフ、チューリッヒ、ニューヨーク、ロサンゼルス、そして羽田へという5カ国6都市、0泊3日半の超弾丸ツアーをお楽しみください。

僕はこういう「人生にあまり役立たないけど、とにかく面白そうなことをやってみる人」というのが好きなので、書店で「タイトル買い」しました。

 読んでみると、「世界一周」というより、LCC時代の海外旅行についての本、という印象です。

 「世界一周」というと、もっとのどかに世界のいろんな国をまわるイメージがあるのですが、機内泊のみ、0泊3日の弾丸ツアーだから、飛行機の話ばかりになるのは、しょうがないんですけどね。

 それにしても、飛行機での旅、とくに海外旅行には、年に一度行けるかどうか、それもほとんど旅行会社任せ、という僕にとっては、「13万円で世界一周!」というのは、本当に驚くべき安さでした。

 九州在住の僕が、北海道に行って、ちょっと豪華な宿に3~4泊くらいして、美味しいものを食べれば、そのくらいかかってしまうのだから。

 この新書のなかでは、「旅客機が飛ぶための費用」が紹介されています。

 実際のところ、例えば東京~グアムの距離は約2500kmあるが、この距離を飛行するのに、ジェット燃料が18.75t(約2万4000l)も必要だそうだ。

 ということは、旅客機というものは燃料1リッターで、たった104mしか飛ばない計算になる。ジェット燃料価格は約9万3200円/tなので、同航路の飛行には174.75万円の燃料費がかかる計算になる。

 同じ距離を現行のプリウスで走るなら、カタログ値燃費38km/リットルだから、消費ガソリンは約65.8リッター。ガソリン1リッター130円とすれば8554円と約200分の1の燃料代! やはり人が空を飛ぶには桁違いなエネルギーとお金が必要ということだ。

 という感じで、他の交通手段に比べ、旅客機にはとんでもなくバカ高い燃料代がかかる。それでもビジネスとして成り立つのは、それなりの計算があるからだ。

 例えば日航の場合、東京~グアム間の正規航空運賃は片道11万6900円。燃料代だけなら15人分の運賃でペイできてしまう。しかも最近はサーチャージ(燃料特別付加運賃)を1人あたり8000円支払うことになるので、さらに少人数で採算が取れそうだ。この路線の主要機種ボーイング767-300(全232席)なら、席数の1割も埋まれば燃料代に加えて機長さんやキャビンアテンダントのギャラくらい出そうな計算となる。

 まあ、実際はそんなに儲かるわけではなく、飛行機の減価償却費(ボーイング767-300は一機約115億円で、これを20年間毎日使い続けるとして、1フライトあたり157万円のコストがかかるそうです。

 それに、修理点検の経費や地上勤務の職員の給料、宣伝費、そして、旅行代理店などにディスカウントされているシートの価格なども考えると、「搭乗率77%」くらいが損益分岐点なのだとか。

 うーむ、平均が搭乗率8割というのは、けっこう大変ですね……

 ちなみに、正規大手航空会社のチケットを使って「世界一周」をすると、だいたい、10~14日間で、50~60万円くらいが標準価格となるそうです。

 これはホテル代などの滞在費は抜きの数字ですが、それでも、「そのくらいで済むんだな」と僕は思いました。

 「一生の一度の贅沢」としてなら、実現不可能でもなさそう。

 それに比べて、著者の「80時間世界一周」の旅は、あまりにもハードです。

 寝るのはずっと飛行機の中だけ、というのはつらいし、世界5カ国をまわるといっても、時間に追われまくって、ほとんど観光もできません。

 行く先々で、不審人物に間違われたり(というか、こんな旅のしかたが「不審」であるのも事実ですが)、飛行機の時間に遅れそうになり、「裏技」を使ったり。

 それでも、もっと時間がある学生時代に、このくらい安く世界一周ができたら、僕も、もうちょっとゆったりとしたスケジュールを組んで行ってみたかったな、とは思います。

 この新書のなかでは、「チケットの取り方」も紹介されているのですが、ある程度語学の知識がないと、海外のLCCのチケットを取るのは難しいみたいですけど。

 駆け足でまわっているだけに、くるくると変わる、各国の「国民性」も興味深かったです。

 ドイツのデュッセルドルフ中央駅でのエピソード。

 インフォメーションのカウンターで、背筋の伸びた初老の女性に「ネアンデルタールに行きたいんだけど」と英語で聞くと、キレイな英語でホームへの道順を説明しながら「ハブ ア グッディ」と、ホームナンバーを書いた紙を手渡された。これがアメリカなら「S28!」(S28番ホーム)」と、一言で終わり。「ネクスト!(次の人は!)」と追い出される。中国なら「知らない」(何度もそう言われた)で終わりだろう。

 もし“インフォメーション道”というものがあるなら、ドイツは絶対黒帯……いや、免許皆伝の達人だ。「インフォメーションに必要なものは何ぞや! タブーは何ぞや!」と何年も山にこもって悟ったような見事さだ。中国やロシアの同業者は、ぜひ入門して、一から鍛え直すべきだと思う。

 そんなドイツに来ていつも思うのは、「この国の人々は互いの誠実さを信じ合っているなあ」ということ。例えば、この巨大駅からネアンデルタール行きの電車に乗る時も改札がない。もちろん券売機はあるのだけれど、自分で自主的に行き先までの切符を買って電車に乗ることになる。途中「切符を拝見」という車掌も来なければ、到着駅にも改札がない。互いの善意を信じてこそ成り立つシステムだ。もちろん日本の田舎にも無人駅や無人改札や無人野菜販売所はある。日本人の精神的美意識は高いと思っているけど、ドイツはさらに上をいく潔癖性だなあ……と感じてしまう。俗物であるボクには、あまりに優等生すぎて生活するにはツライ場所かもしれない。

 「これって、本当?」と読みながら僕はつぶやいてしまいました。

 著者は「優等生すぎる」と書いていますが、僕はこれを読んで、日本のサッカー代理人が「日本人サッカー選手の移籍先として、民族性が近くてストレスが少ないドイツは勧めやすい」と言っていたのを思い出しました。

 いやしかし、日本人よりも「信じ合っている」のだなあ、ドイツって。

 それだけに、ギリシアの現状に対して、ドイツ人はどう考えているんだろう?とか、つい想像してもみるのですけど。

 ここで紹介されていた「ネアンデルタール博物館」にも、ぜひ一度行ってみたいものです。

 この新書のなかでいちばん印象的だったのは、著者が体験した、日本の某LCC(というか、スカイマーク)のとんでもない「コスト優先主義」の話でした。

詳細は、ぜひこの新書を読んでいただきたいのですが、「安全性」や「信頼」を削って「安さ」にするLCCって、どうなのでしょうか?

著者は、「LCCでサービスや乗り心地がある程度悪いのはしょうがない」と割り切っていますし、僕もそう思います。

でも、「安いぶん、何が起こっても責任とれませんよ」というのは、さすがにあんまりです。

「それでも安いほうがいい!」っていう人も、少なくないのだろうけど……

「旅行記としての面白さ」はそんなにありませんが、「世界各地のLCCの現状」がよくわかる、なかなか興味深い一冊でした。

 とりあえず、こんなに安く海外に行ける時代なのだから、ぜひ、多くの人に旅に出てもらいたいなあ。

「やっぱり日本がいいや」っていうのも、日本を出てみないと、なかなか実感できないことですしね。

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