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「タバコと同じく将来絶滅する」 暴力団を見届けるライター鈴木智彦の覚悟

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BLOGOS編集部

暴力団が魚介類の流通に深く関わっている実態を暴いた『サカナとヤクザ: 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(小学館)を著したフリーライターの鈴木智彦氏(以下、敬称略)は、20年以上にわたって暴力団など組織犯罪を専門に取材している。

入居者の7割が暴力団関係者という新宿・歌舞伎町のマンションや、大阪・飛田新地に仕事場を置くなど、常に現場の最前線に身を置きながら独自の取材網を築き、市民社会からは見えにくい裏社会の実像を伝えてきた。

なぜ身の危険を伴う“暴力団ライター”の道を選んだのか。反社会的組織の今を伝える意義は。そして、弱体化と言われる暴力団は今後、どのような道をたどるのか。インタビュー2回目は、尽きることのない疑問をぶつけた。【岸慶太】

アメリカで感じた「ガチの暴力ってどんなのだ」

鈴木の暴力団ライターとしての歩みは『潜入ルポ ヤクザの修羅場』(文春新書)に詳しい。仕事場として借りた歌舞伎町のマンションでは、上階から暴力団員が転落して鉄柵の棒に刺さって死亡する事故に遭遇したり、ドアを開けた直後に殴られる“警告めいた”事件に遭って大阪へ逃走したりするなど波乱の日常をつづった。ヤクザを扱う実話誌の編集部での勤務については、暴力団からのクレーム処理などに追われた日々を振り返っている。

――暴力との出会いはカメラマンとして生活したアメリカにあるとのこと。

ハタチから26、27歳までアメリカにいて、(小説家の)安部譲二さんの舎弟に出会って、ヤクザの世界を知りました。で、ギャングに襲われて、「あっ。こんなガチの暴力だったら、ちょっと取材したら面白いかな」みたいに思えて。

――普通は暴力を体験したからこそ、取材対象にしようという発想に至らないのでは。

俺は逆に、そう思ったんですよ。本当のガチの暴力なら、人間の根源の話だし、テーマになるって。成人式で「わー」って盛り上がって、3年ぐらいしたら、いいお父さんとお母さんになる不良には全然興味ないですよ(笑)。

情け容赦ない悪がいるなら、取材したいと思った。暴力団が情け容赦ない悪なのかなと思っていたけど、そうでもなくて。

――それまで暴力には興味がなかったのですか。

暴力団の映画もマンガも嫌い。いわゆるヤンキーマンガとか流行っていた世代ですけど、どこが面白いのって。

日ごろ使っているカメラ。右下のカメラはタバコケースのレンズ部分に穴をあけている

ヤクザを英雄として書きたくない

――著書での暴力団員とのやり取りは人間臭いものもあります。

暴力団を書くこと、時には暴力団の側に立って発言することの意味を常に自問自答していて、それなりの覚悟を持って触ろうよって思っています。「ヤクザの話は面白ければそれでいい」という時代ではない。

だから、自問自答もなく思考に強度がない人が暴力団を面白おかしく書くのはすごく反対です。それこそ、暴力団を書くことを1年に何百回、何千回、何万回と考えてきた。

国内最大の指定暴力団「六代目山口組」が分裂した余波で、2017年2月には京都の指定暴力団「会津小鉄会」も分裂。鈴木は一方の組織から写真撮影を許可されたが、記事や写真の扱いに注文があったため、「交換条件なら飲めない」として写真掲載を見送った。

――記事からは、暴力団を扱う書き手としての立ち位置に関する思慮が感じられます。

暴力団は本当に良くないものだから。けど、俺たちの体、心の中から出ているものだから、それは人間の一つのものとして直視しようと思っています。

でも、英雄のように書いたり、面白おかしいヤクザ物語にしたりしてはいけない。そういう時代ではない。

――子供のころは、やんちゃで悪いやつが女性にモテました。悪いものへの憧れのようなものを誰しも持っている気がします。

それは俺にもありました。だから、ヤクザをテーマにする際、はみ出し者の中に、社会とは一線を画したすごい人物がいるのではないか。一般社会のものとは違うすごい道徳があって、それが真理なのかもという幻想があったのです。

けど、そんなものはまるで無かった。本当に無かった。

現役の暴力団組員へのアンケートも行ってきた。男性は左手小指の一部を失っている

憧れの声優からまさかのTwitterブロック

――暴力団を描くライターということで、暴力団寄りと世間に見られることもあるのでは。

漫画の『シティーハンター』が大好きなんです。Twitterを始めたんですけど、主人公の声優さんに俺ブロックされていて(笑)。大好きで大好きなシティーハンターの声優の人にブロックされて。

暴力団を話題にするからだろうと推測してます。彼に絡んだことないし、悪口を書いたこともないけど、暴力団に関する発言が気に入らないんでしょう。正直、すっごいショックですよ(笑)。だけど、仕方ないですよね。

暴力団を扱う実話誌もジャーナリズムの一つですよね。だから、ヤクザと接触するのは当然だし、直接話を聞くことも当然。

ヤクザを取材しているのがイコールヤクザではなく、出版であり、これはジャーナリズムの一つの亜流です。このことは古い人からはそんな問題にされなかったんですよ。

連日の「殺すぞ」 命の危険を感じさせられる日々

――実話誌時代は頻繁に電話の伝言メモで「殺すぞ」と来たと。命の危険を感じることは多かったですか?

いや、“命の危険を感じさせるようなこと”は言ってくるんです。でも、実際に殴られたのは何回かしかありません。

――「殺すぞ」と言われた日はカレンダーに印をつけているそうですが?

去年はつけていたんですけど、あれ見ると具合が悪くなって(笑)。

「いってもうたろか」の意味も最初は分からなくて。で、電話来て、「え、いってもうたろかって、何です?」って聞いたら、そしたら「殺・す・ゆう・こ・と・や・!」って怒鳴られて(笑)。そういう風に命の危険を感じることはいっぱいありましたね。

記事化の依頼は断る 金も絶対に受け取らないのがルール

――暴力団を取材する上で、どんなルールを課してますか?

一番多いのは恐喝する相手のことを記事に書いてくれって頼まれごとですね。実を言うと、ネタになるのとぎりぎりの時のこともあるんです。だけど、断る。当たり前ですけど。

――お金ももらわない。

それは当たり前なんだけど、うちらの業界は同業者が金をもらいすぎてる。30、40万円とか50万円とかキャッシュでポンともらったら、受け取ってしまうんですよ。誰も見てないって言われて。

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