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焦点:目立ってきた物価下押し材料、日銀に「長期戦」強いる展開も


[東京 13日 ロイター] - 物価2%目標の早期実現を目指す日銀にとって、内外情勢に暗雲が立ち込めてきた。原油価格の下落や、2019年に予想される携帯電話料金の値下げ、幼児教育無償化など物価押し下げ要因が、相次いで出てくるからだ。民間エコノミストの中には、2019年後半にも消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)が再びマイナスに転落するとの予想も浮上している。

さらに外国人労働者の流入増加を図る改正出入国管理法が成立し、受け入れ予定の14分野を中心に賃金上昇の圧力が低下し、物価押し上げの力が弱められるとの分析もエコノミストから出ており、日銀に「長期戦」を強いるような経済情勢になりつつある。

<再現される原油安>

今年10月の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)は、前年比1.0%上昇となった。17年1月の同0.1%上昇から比べると、物価の動きは脱デフレ色を強めてきたが、ここから先は、日銀にとって「難路」が控えている。

1つ目の物価下押し要因は、原油下落だ。米国産標準油種WTIの先物<CLc1>は、今年5月から10月中旬まで1バレル70ドル台を維持してきたが、10月下旬から急落。12日は前日比でやや上昇したものの51.41ドルで取引を終えた。

複数の専門家によると、10%の原油安はCPIを0.2ポイント程度押し下げる。   

第一生命経済研究所経済調査部・主席エコノミストの新家義貴氏は「足元でコアCPIはエネルギーが押し上げており、これが原油価格下落で縮小する。エネルギー以外が拡大するが、エネルギーの鈍化ペースのほうが速い」と話す。

12日に日銀が発表した11月企業物価指数は、前月比で0.3%下落と8カ月ぶりにマイナスに転じるなど、すでに原油安の影響がはっきりと現れている。

日銀は原油価格の先行きについて、先物価格を参考にそれぞれの委員が独自に判断しているが、低迷が続けば相応の物価下押し要因になることは避けられない。   

<携帯・幼児教育無償も物価下押し>

多くのエコノミストが織り込めていないものの、携帯電話料金の引き下げや幼児教育の無償化などの制度的な要因も、物価押し下げに働く可能性がある。

携帯電話料金引き下げの議論を主導してきた菅義偉官房長官は、4割の値下げ余地に言及。携帯電話通信料の一律4割の値下げが行われたと仮定した場合、コアCPIを1%ポイント程度押し下げる計算だ。

19年10月の消費税率引き上げに合わせて実施される幼児教育の無償化も、内閣府の試算によると、19年度の物価を0.3%ポイント押し下げる要因になる。

ただ、こうした制度変更に伴う価格引き下げは、物価に対する下押し効果が1回限りという面もある。

<改正入管法、問われるマクロ政策の整合性>

今月8日に成立した改正入管法(19年4月施行)に伴う外国人労働者の受け入れ拡大も、一部のエコノミストは賃金・物価の抑制要因と見ている。

政府は法改正によって、34万5000人程度の外国人労働者受け入れを想定しており、エコノミストの中には労働市場全体を考えると、マクロ的なインパクトは限定的との声がある。

だが、ある国内金融機関の関係者は「外国人労働者の流入で、業種によっては賃金が上がりづらくなる」と指摘。労働需給の緩和を通じて物価上昇圧力を和らげる方向に作用する可能性を懸念している。  

一方、投入労働量の拡大によって、日本の潜在成長率押し上げの可能性に着目するべきだとの見方が、政府関係者から浮上している。

原油価格の下落や幼児教育の無償化、携帯電話通信料の値下げも、交易条件の改善や個人消費の活性化につながり、最終的には内需拡大につながるプラス要因との指摘もある。

BNPパリバ証券・チーフエコノミストの河野龍太郎氏は、政府・日銀はデフレ脱却のため、超金融緩和と拡張的財政政策を継続してきたが、その影響で深刻な人手不足がもたらされていると指摘。同法が目先の人手不足の解消を目的としているなら「マクロ安定化政策との整合性は、十分に取れているのだろうか」とリポートで述べている。

<19年秋に物価マイナスの声>

このような要因の結果、物価の先行きはどうなるのか。大和証券・チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏は「コアCPIが、来秋にも再び前年比マイナスに陥る可能性が高い」と予想する。

岩下氏は「国策的に物価が下がるという面もある」とし、「日銀は機動的に金融政策を運営するために、物価の基調判断をどう考えていくかを整理すべきだ。物価2%を中長期的な目標に掲げながら、柔軟に解釈していくことが必要」と主張する。

日銀内には、米中貿易摩擦などのリスクが顕在化しない限り、「しばらくは景気はいいが、物価は弱いという状況が続く」(幹部)との声もある。

今後、物価上昇率の鈍化が鮮明になった場合、2%目標をどのように位置づけて政策運営を行っていくかという点について、議論が深まることも予想される。

(伊藤純夫 清水律子 編集:田巻一彦)

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