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エイズ研究が危機、トランプ政権が研究への助成打ち切りを発表

研究室にて、スポイトでサンプルをシャーレに移す科学者(Photo by Shutterstock)

アメリカ国立衛生研究所の研究者たちは、長年エイズ治療薬の開発に幹細胞や胎生組織を使用してきた。だがトランプ政権がこれに待ったをかけようとしている。果たして、代替品は見つかるのか?

アメリカ国立衛生研究所(NIH)は月曜、ヒトの胎生組織に代わる代替品の開発研究に、今後2年間で最大2000万ドルの資金援助を行うことを発表した。トランプ政権が、政府の支援をもとに研究を進めてきたプロジェクトへの助成金を打ち切る方針を発表したためだ。これらプロジェクトの中には、HIV/エイズ治療薬の研究も含まれる。

対外授精で生じた廃棄処分の胚や、人工中絶による胎児から採取した胎生組織および幹細胞の使用については、以前から物議を醸しているが、生物医学の研究ではいまも日常的に行われている。だが、トランプ政権は人命尊重派を擁護する立場を表明し、こうした研究を存続の危機に追い込んでいる。トランプ大統領は9月、政府は「胎生組織を使った全ての研究を総合的に再検討する」と発表した。胎生組織を「中絶によって無理やり命を絶たれた子供の身体の一部」とみなす中絶反対派の活動家や保守派議員の圧力があったもようだ。

NIHが直接雇用した研究者たちに対してはすでに、ヒトの胎生組織の使用を禁止する措置が取られているが、トランプ政権の再検討により、NIHの研究費をよりどころとする研究団体にもこの措置が適用される可能性がでてきた。ということは、国内で行われている無数の研究プログラムに大きな損害が及びかねない。その中でも特に危ぶまれているのが、サンフランシスコにあるカリフォルニア州立大学(UCSF)のエイズ研究所だ。

1996年の創設以来、HIVおよびエイズの研究や治療において数々の功績をあげてきた施設で、現在は治療薬の開発に取り組んでいる。研究所では、マウスで培養したヒトのT細胞を研究用に使用しているが、エイズの初期段階でのHIV治療薬の有効性を検証するにあたり、他に確実な方法は現時点でみつかっていないと言う。研究所は毎年NIHから200万ドルの助成金をうけとっているが、これが唯一の資金源だ。だが今年は、助成金が即時打ち切りとなる場合もあるため、90日間の期間延長が通知されただけだった。

「もし他にいい選択肢があるのなら、うちの研究員は誰もヒトの胎生組織は使わないでしょうね」と言うのは、UCSFエイズ研究所のポール・ボルバーディング所長。ローリングストーン誌の取材にeメールで回答してくれた。「ここでの研究でヒトの組織が必要なのは、HIVは他の細胞では増殖しないからなんです。抗HIV薬の検査の際にはマウスを使ったモデルを使用しています」

「ヒトの組織を使うことに反対する人々の心情はよく理解できます」とボルバーディング所長。「ですが、私はHIV/AIDS感染の深刻さを目の当たりにしてきました。ここの研究員たちが、感染を抑えようと尽力する姿も見てきました。私の意見では、この研究は慎重な計画のもとに行われ、倫理的に適ったものであり、かつ極めて重要な研究です」

パーキンソンズ病やアルツハイマー病、糖尿病、ALS(筋委縮性側索硬化症)、脊髄損傷、肝臓病や腎臓病、血液障害や免疫障害など、これら病気の治療や治療薬の開発にあたる研究者たちも、ヒトの胎生組織を頼みの綱としている。そこで、NIHはこれに代わる代替品を探しているところだ。

「ヒトの胎生組織やES細胞由来の組織は、人間の発育過程や病気の進行プロセスを理解し、モデル化するのに使われてきました」新しい研究への資金援助を表明した先の発表は、このように説明した。「生物医学研究の土台となる科学的疑問に光を当て、基本的な生理メカニズムの解明や、正常なヒト組織の成長や病気の進行プロセスの解明など幅広い分野で、ヒト組織を使った研究は重要な役割を果たしてきました。

ですが、新たな技術により、胎生組織を使わずとも従来のモデルシステムを再構築できる可能性が見えてきました。新たな技術で、より汎用性の高い、複製再生可能なシステムを生み出すことができるのです」別の言い方をすれば、生物医学研究ではヒトの胎生組織の使用が標準化していることを政府も認めたことになる。それでも政府は、政治的な都合でヒトの胎生組織が使えなくなる場合を想定して、それに代わる組織を科学の力で見つけてほしい、と期待しているのだ。我々がコメントを求めたところ、NIHから即時回答は得られなかった。

確実な代替品が手に届くところにあるのなら、ヒトの胎生組織をめぐる論争を考えれば、当然すでに使用されているはずだ。他にもあたってみろ、というほど簡単な話ではない。

「すぐに使える代替品は思い浮かびませんね」先のエイズ研究所で、ヒト免疫不全ウィルスの翻訳タンパク質と微生物学を研究するワーナー・グリーン博士は、ローリングストーン誌とのインタビューにこう答えた。「モデルは長い年月をかけて完成されて、近代生物医学の研究の標準ツールになったわけですから」

「これを上回る代替品はありませんよ」と博士は言う。「もしあるなら、ぜひ教えていただきたい。私だって長年研究者をやっていますから、いままで試したことが全くないわけじゃないんですよ」

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