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日本企業による大型買収に思うこと

日経のスクープで日立がスイスのABB社から送配電事業部門を最大8000億円で買収するとすっぱ抜きました。企業買収が事前にリークすると失敗に終わることもあるのですが、このケースの場合、ディールそのものが双方で基本的に既に折り合いがついているように見受けられますのでこのまま進むのではないでしょうか?

日経の記事によると日立による買収は数年かけて分社化した送電線部門の株式を少しずつ買収していくということのようですから日立のキャッシュフローにも優しいことになります。これにより日立は重電ではドイツのシーメンス社と肩を並べ、世界第2位(1位はアメリカのGE)グループになり、送配電部門だけを見れば世界最大の会社となります。

先日は武田製薬が日本のM&A史上最高の6兆8000億円でシャイアー社を買収することを最終決定しています。2016年にはソフトバンクが英国のアーム社を3兆3000億円で買収するなど日本企業による買収はより高額にそして、世界に影響力を与えるケースが増えてきたようです。

少し前の日経ビジネスに「失敗するM&A、成功するM&A]という特集があります。なぜ、失敗が先に来るかといえば勝手に解説すればM&Aが成功する確率は37%(デロイトの調査)で失敗の確率が高いからでしょうか?

失敗例はキリンのスキンカリオール買収(3000億円で買収し6年後に770億円で売却)、日本板硝子のピルキントン(6100億円で買収、10年経ていまだ苦戦)、NTTドコモのAT&Tワイヤレス(1兆1000億円で買収、3割安く売却)、他にも日本郵政のトール買収など枚挙にいとまがありません。

なぜ失敗するのか、日経ビジネスではどちらかといえば買収までのプロセスに焦点を当てた特集となっていますが、私の肌感覚としては買収してからの問題が7-8割を占めると思います。

私が勤めていた建設会社がアメリカのホテルチェーンを日本企業による買収としては当時の最高水準の金額で射止めました。これはメインバンクのご示唆により無理やり買わされたところもあり、ずいぶん大枚をはたきました。言い換えれば銀行が銀行のビジネスのために「どうですか?2度とないチャンスですよ」と囁き、オーナー経営者はプライドもあるので「よし、買ってやろう!」ぐらいの勢いでした。

しかし、建設会社の社員にホテル経営をできる人間はそう多くありません。ましてやアメリカ企業に入り込み、自分たちのビジネスと融合させるのは至難の業でした。私は当時、同ホテル会社の月次の取締役会に秘書として同行していましたので議事録もあらかた目を通しています。オーナーは議長としていろいろ発言していましたが、従業員数千人の企業を片手で数えられるだけの建設会社が送り込んだスタッフでどうコントロールするつもりだったのでしょうか?私はその時点で「無理だよな」と思っていました。そしてその買収が後年、その建設会社の倒産の一因となるのです。

数年前、ある日系の上場企業がカナダのホテル会社を売却しました。その上場企業が非中核部門の売却のタイミングをずっと見計らっていたのはある程度察知していました。理由はその会社にもホテルを管理できる人材が全くいなかったためです。

ただ、異様な安値に私は驚きを隠せませんでした。それなりに儲かっていたホテル部門の売却をなぜ、日本企業相手に安く売り急いだのか、これだけは未だに解せません。日本の企業文化として一旦売却と決めれば何が何でも売る、に走ってしまい、この会社に限らず、上記の失敗例の通り、売りたたくケースが間々みられるのです。

一般的に海外企業に売却するとディールの詳細部分で後々いろいろクレームをつけられる条項が付くことが多いのに対して日本企業による買収はクリーン ディール(現状有姿の一発ディール)が多く、日本の役員会が面倒くさくなくてこちらを好む、ということはあります。私なら絶対にしないやり方です。

買収というプロセスは企業のトップが中心となり、外部コンサルが暗躍し、社内のごく一部のエリートたちがデューデリジェンスを行うことで買収が進みます。つまり、買収までの期間にとにかく人材と資金を投入し、全力で勝ち取るという短距離走勝負となります。

ところが買収するとこれはマラソンです。相手に入り込み、何年もかけて融合する部分、削り取る部分を見出し、相乗効果を生み出すのであります。これは簡単ではありません。アメリカの買収王、GEですら、今になって過去の膿出しで苦労しています。日本電産のように同業を買収する場合は社内に人材がいるので案外スムーズに行けるのですが、異業種買収はとにかく、誰がどうやって運営するか、これが極めて難しいということを肝に銘じるべきでしょう。

ソフトバンクのように買収を投資として割り切るか、ブリヂストンのファイアストン買収のように自社の血となり肉となるような形にするのか、買収後のピクチャーがきちんと描かれていないことが多い気がします。前述の私が勤めていた建設会社によるホテルチェーン買収でも会長はホテルの所有数を自慢していましたが、経営のコントロールが全然できていなかったことを当事者達は誰でも認識していました。

企業買収はごく当たり前のようになっていますが、買収後の成功率は3分の1だということを日本企業はもう少し、シビアに感じるべきでしょう。ばくちはいけません。

では今日はこのぐらいで。

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