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【読書感想】なんで、その価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」

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同じ1万円でも、その金額を得したときの喜びよりも、損したときの悲しみのほうが強い、というのは、僕にもわかります。

にもかかわらず、人はギャンブルにハマったり、衝動買いをしてしまうものなのです。

一度値下げをすると、そのときには「安く買うことができた!」と嬉しくなっても、すぐにその安売りの値段が消費者にとっての「当たり前」になってしまって、定価で買うと「損した気分」になるから、なかなか手を出してくれなくなるんですね。

とはいえ、放っておいても売れないものは売れない、という現実はあるわけで、とりあえず値下げして、今の在庫だけでも、とか、試してもらって、また利用してもらうきっかけになれば、と考えるのもよくわかるのです。

結局のところ、価格戦略が通用するのは「それなりの品質とニーズがあり、売れる可能性を持っているもの」に限られるのかもしれません。

著者は、会員制で固定料金を取るビジネス(サブスクリプションモデル)の広がりについて、こんな説明をしています。

2015年、アパレルメーカーのストライプインターナショナルは、「メチャカリ」という月額5800円の服借り放題のサービスを始めた。自社の新品を一度に3点まで借りられるし、60日間借りっぱなしだと、借りた服はそのままもらえる。

当初、周囲は誰もが「自社の服が売れなくなるぞ」と反対したという。
しかし実際にやってみたら、自社の店舗やネット販売との共食いはなかった。
登録者の2/3は、それまで接点がなかった新規顧客だったのである。

初めは「大好きな服を使いまくる人たち」を想定していたが、実際には「服選びが面倒くさい人たち」にウケた。まさに冒頭の女性編集者である。

意外だったのはメチャカリで服を次々と借り、気に入ったら服を買い取る人が結構いたこと。半年で15万円使う人もいたという。「定額試着サービス」として使っているのだ。
メチャカリでは新品を貸し出しているが、ユーザーから返却された服はクリーニングした上で、中古として再販売している。新品の服を販売し、服のレンタルで定額サービスを行い、さらに中古の服を販売している。この仕組みは、新車、レンタカー、中古車という販売チャネルを複数持つ自動車会社を参考にしたという。

月額400円で雑誌読み放題のdマガジンは、登録ユーザーは363万人で、年間売上は174億円だ(※2017年3月時点)。雑誌を買わずに立ち読みで済ませるライトユーザーを狙ったため、紙版の雑誌とdマガジン読者の重なりは小さい。雑誌から見ると読者数を1.6倍に増やす効果があり、むしろ雑誌広告効果が上がったという。
さらに売上は、読まれたページ数に応じ各出版社に分配される。

いまやdマガジンは、雑誌出版社にとってなくてはならない媒体あっている。
dマガジンは定額サービスを始めることで、「本の立ち読み」を新たな収入源にしたのである。


僕も服選びはめんどくさい、と常々思っているので、この「メチャカリ」の話には頷けます。服を売る側の人たちは、基本的に、「服が好きで、ファッションに興味がある人」を想定して商売をしているはず。でも、世の中には、「服選びはめんどくさいけど、服を着ないで生活するわけにはいかないんだよな……」という人が少なからずいるわけです。めんどくさいからといって、他者から「おかしな恰好をしている」とは思われたくないし……

もうすでに新規顧客は開拓されつくしている、と思われるようなジャンルでも、案外、見過ごされてしまっている人たちはいるのです。

dマガジンも、「この月額でこんなに読めるなんて、雑誌社は大損なんじゃない?」と思って登録したのですが、正直、月額分ほど読めてもいないんですよね。雑誌側にとっても、多くの人の目に触れることによって、企業からの広告が得やすいというメリットがあるのです。

こうして考えてみると、「それで儲かるの?」という商売も、ちゃんと続いている以上、稼げる仕組みがどこかに組み込まれている、ということなんですよね。
売る側の立場からの「値段のつけかた」を知るというのは、買う側にとっても大いに参考になると思います。

fujipon.hatenadiary.com

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