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【読書感想】米国人博士、大阪で主婦になる。

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米国人博士、大阪で主婦になる。 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ II-11)
作者: トレイシー・スレイター,高月園子
出版社/メーカー: 亜紀書房
発売日: 2016/09/30
メディア: 単行本
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内容(「BOOK」データベースより)
日本に興味があったわけではない。まして、日本人男性が好みだったわけでもない。生涯、故郷ボストンで暮らしていくつもりだった。しかし―神戸で芽生えた“講師”と“生徒”の思わぬ恋は、いつしか大阪とボストンを往復する掛け替えのない愛へと変わっていった。国際結婚、異国での慣れない生活、不妊治療…葛藤と喜びに満ちた、その奮闘の日々。

アメリカ人のキャリア女性が、仕事で日本に来た際に出会った一人の日本人男性に出会い、結婚し、そして……という自伝なのですが、正直なところ、読んでいて、「なんか付き合いづらそうな人たちの世界だな……」と、ずっと感じていたのです。  

彼にはじめて会ったのは2004年5月、日本の神戸。
三週間後、彼は愛していると言った。少なくとも私はそう言われた、と思った。

そのとき深夜はとうに過ぎていたが、彼と私は企業研修センター内の私の部屋に隠れていた。彼は肘で体を支えて私の上でバランスを保ち、私は下から彼を見上げていた。私は東アジアの企業の幹部社員を対象としたMBA(経営学修士)課程の新米講師だった。私が教える20人の学生は全員が男性で、彼はその一人。私もすでに彼に恋していた。

(中略)

授業の初日に、学生たちのほとんどがお茶くみをしない女性と働いた経験がないと知ったとき、私は早くも自身が直面している問題の大きさを知った。ともかく、数週間後のそのころには、すでに私の仕事は情けないほど破綻していた。まともに英語も話せないのにすでに私のハートをぐらぐらさせている一学生との、真夜中の課外学習という逸脱行為はいうまでもなく。


著者は、ものすごく優秀な女性ではあるのですが、正直、この本の冒頭の部分を読んで、僕は面喰らったというか、「うーむ」と考え込まずにはいられませんでした。

この人、日本(あるいは東洋人男性)をさんざん貶めているけれど、先生として赴任してきながら、生徒とデキちゃうなんていうのは、あまりにも浮わついているんじゃない? いや、人間の感情って、そういうものなのかもしれないけどさ、そんな仕事ぶりで、「日本人の男性は」「日本の家族制度は」なんて言われても、説得力ないよ……
こういうのって、アメリカでは「たいした問題じゃない」のだろうか。

ただ、著者もいろいろと問題を抱えた人ではあったんですよね、読んでいくと。

私の家族はとても裕福だったけれども、「カインド・オブ・スクルード・アップ(kind of screwed up)だった」と説明した。それは、アメリカ北東部の大学教師たちがパーソナル障害やアッパー・ミドルクラスの苦悩について論じるときによく使う不遜な表現だ。

「要するに、完全にはまともじゃなかったのね。家族関係が」人と人とのつながりを示そうと、指を胸のあたりで前へ後へと振った。

(中略)

あれは8歳か9歳だったころ、ある朝私たちきょうだいが目覚めると、キッチンのキャビネットに軒並み蹴られたあとがあった。滑らかなチェリーレッドのドアのあるものは裂け、あるものは驚いたときの口のように大穴がぽっかり空いていた。性格の合わない夫婦の残した瓦礫だった。

ああ……
なんというか、この本で最も僕の印象に残ったのは、アメリカ人のインテリ女性が日本での結婚生活で感じたギャップや不妊治療ではなくて、この、「傍からみえば裕福で幸せそうにみえる、アメリカのアッパー・ミドルクラスの苦悩」だったのです。

彼らは金銭的には豊かで、社会的な地位もあり、世界の貧しい人たちや困っている人たちを思いやっている知識人。

にもかかわらず、彼らの家庭内は、「まともじゃない」。
もちろんこういうのは、アメリカだけの話ではないのでしょうけど、「個人を尊重する」ことと「家族として協力しあっていくこと」を両立するというのは、本当に難しい。
プライドが高い人の集合体であれば、なおさら。

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