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92歳にして君臨し続けるナベツネ氏の奥深き人間性 〜ビジネスパーソンの実践的言語学23

最近、説明や謝罪時の、違和感のある言葉遣いが話題になりがちだ。当コラムでは、実際の発言を例にとり、公私の場で失敗しない言葉の用い方を考える。ビジネスパーソンのための実践言語学講座、いざ開講!

「死亡説が流れているから来た」ーーー読売ジャイアンツ・原辰徳監督の野球殿堂入りを祝う会に出席した読売新聞グループ本社の渡邉恒雄主筆

御年92歳。“最後の怪物”と呼ぶのにふさわしい人物といえるだろう。通称ナベツネ、読売新聞グループ本社の渡邉恒雄主筆が7ヵ月ぶりに公の場に登場した。11月にはネット上に死亡説が飛び交い、巨人軍の山口寿一オーナーが「亡くなったということもあり得ないし、危篤でさえない。事実とまったく違う方向の情報が流れた」「うちの新聞社にも、取材が殺到しました」とコメント。年齢が年齢だけに健康状態を心配する声もあったが、その噂を自らの体で否定した。

1970年代から80年代は敏腕政治記者として、その後は世界最大部数を誇る新聞社の経営者として多くの功績を残してきた渡邉主筆だが、その“悪名”が一般に広く知られることになったのは、2004年のプロ野球界再編問題の際、プロ野球選手会の古田敦也会長が経営者側との会談を求めたときのことだ。

「無礼なことを言うな。分をわきまえなきゃいかん。たかが選手が」

10チームによる1リーグへの再編を画策していたと言われる渡邉オーナー(当時)のこの発言が世間の猛反発を招き、結局プロ野球は2リーグ制を維持したまま現在にいたることになる。

並みの権力者なら一気に影響力を落としかねない暴言だ。だが、そこは怪物。何食わぬ顔でオーナーの座に居座り続けたが、同年に発覚したドラフトの裏金問題で同職を辞任。1年足らずで球団会長に復帰し、2014年には球団最高顧問に就任したが、2016年の野球賭博問題で同職を辞任した。この間にも物議を醸すような発言を繰り返したが、まったくその地位が揺るがず、いまもなお巨大メディアグループに隠然たる影響力を発揮している。

ナベツネ氏は、アンチ巨人にとっては、まさに悪の象徴であり、巨人ファンでも眉根をしかめるほどの存在感。「悪名は無名にまさる」を地でいくような生き様だ。だが、ただの暴言老人ならこれほどの権力を手にすることはできなかっただろう。強烈なメンバー揃いだった'70年代の永田町で多くの政治家から信頼され可愛がられたのは、知性と人間的魅力を持ち合わせていたからだ。その当時に培った人脈がいまもなお彼の力の根源となっている。

読売新聞の社長時代、彼の部屋に入り、インタビューをしたことがある人間に聞いたことがある。ナベツネ氏は、時間さえあれば物理や数学の本を読みあさっているそうだ。衰えない知的好奇心。巷間のイメージとは異なる、議論を好む理性的な人物という印象を受けたそうだ。「彼はあえて、世間の敵となるナベツネを演じているのではないか?」。そんなことまで考えさせるほど、奥深い人間性を感じたと語っていた。そこまでの器を感じさせる人物は、いまのビジネス界を見渡しても、残念ながら見つからない。

新聞というメディアは間違いなく岐路に立っている。これから先の未来で部数が伸びるということはありえないだろう。だが、ナベツネ氏が健在なら何か面白いチャレンジを見せてくれるのではないか。怪物は怪物のまま、憎まれっ子は憎まれっ子のまま、世にはばかりつづけてほしいと思わずにいられない。

次回に続く

Text=星野三千雄 Photograph=Photo/Kyodo News/Getty Images

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