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映画『ボヘミアン・ラプソディ」大ヒットも海外評論家の評価は最悪な理由~感動するファンと酷評するプロの“ねじれ現象”

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映画「ボヘミアン・ラプソディ」HP

1970年代初頭に結成された英ロック・バンド「クイーン」を題材にした映画「ボヘミアン・ラプソディ」が、世界各国で大人気となっている。

題名はヒット曲「ボヘミアン・ラプソディ」(1975年リリース)から取っており、リード・ボーカルとピアノを担当する故・フレディ・マーキュリーが主人公だ。

バンドのほかのメンバーとなるブライアン・メイ(リード・ギターとボーカル)やロジャー・テイラー(ドラムとボーカル)と出会い、これにベースのジョン・ディーコンが参加して、バンドとして大成していくまでを描く。クライマックスは1985年に行われた「ライブ・エイド・コンサート」での見事なパフォーマンスだ。

米国では、映画の興行収入が音楽伝記映画のカテゴリーで第1位となり、来年7月からは全米ツアーが行われるという。

『ボヘミアン・ラプソディ』超ヒット、全世界で5億ドル突破へ―日本、海外興収第3位にランクイン(THE RIVER)

日本では、50歳以上の「母親世代」が成人の子供と出かけて両者ともに感動するというリポートが続々出るようになった。また、「傑作」という評価も出ている。

辛口批評家も大絶賛「ボヘミアン・ラプソディ」を見逃すな(日刊ゲンダイDIGITAL)

ところが、英語圏の媒体に掲載されたプロの映画評はこの映画を酷評している。

ネットワークプランナーで「ワイズプロジェクト」代表を務める友人の殿岡良美氏によると、「映画評論家の評が最悪で観客の評価は極めて高いというねじれ現象」があるという。

一体、どのような「酷評」があるのだろう。

イギリスではクイーンは一目置かれた存在

その前に、クイーンとイギリスについて若干説明しておきたい。

16年前からロンドンに住みだした筆者は、イギリスでもクイーンやボヘミアン・ラプソディが大変な人気で、クイーンが一目置かれた存在として見られていることを知った。

クイーンを題材にした番組が頻繁に放送されるので、「カメラの前で」という但し書きはつくが、生前のフレディ・マーキュリーが、そしてブライアン・メイやロジャー・テイラーがどんな話し方をするのかを見聞きする機会が多い。ネット上にも動画がいっぱいだ。

ベースのジョン・ディーコンは現在、一切公の席には出ない方針をとっているが、メイやテイラーはそうではなく、クイーンというバンドも解散していないので、「現役」である。

メイは、エリザベス女王の即位50周年記念で、バッキンガム宮殿の屋根の上でのギター演奏を行っている。

また、ロンドンの劇場街でロングラン上演された(2002-14年)のが「ウィ・ウィル・ロック・ユー」というミュージカルだ。日本でも2004年に上演された。クイーンのメンバーは出てこないが、バンドの曲がたくさん使われた。非常に質の高いミュージカルで、筆者は家族とともに堪能した。

クイーンはイギリスの国民的なバンドとして人気を維持しており、映画「ボヘミアン・ラプソディ」は本家・イギリスでも大ヒットとなっているわけだが、いくつかの米英の大手媒体の映画評は非常に手厳しい。

米ニューヨーク・タイムズ「映画よりも、YouTube上にある本物のクイーンの動画を観た方がいい」

まず、ニューヨーク・タイムズの映画評を見てみよう。

見出しは、クイーンの曲の題名をそのまま使い「AnotherOneBitestheDust」(直訳:「また一人が戦いで倒れて死ぬ」)とある。

‘BohemianRhapsody’Review:AnotherOneBitestheDust(10月30日付)

映画評は、書き手自身もクイーンのファンで、ボヘミアン・ラプソディが体に染みついているという話から始まる。

2時間超の映画は昨今の映画の長さからすれば、特に長くはないが「果てしなく続くような感じがした」。映画は「できうる限り記憶に残らないように」作られたようで、例外はフレディ役を演じたラミ・マレックがつけていた「入れ歯」だったという。

映画の「いったいどこからどこまでが真実で、どこからがフィクションなのか?」という疑問がわいてくるという評者は、おそらく「どちらもあったのだろう」と結論付ける。

脚本家と監督は「素晴らしい見せ場」で物語をつづってゆくが、「ドラマチックな盛り上がりも心理的な洞察もない」。

映画は「同性愛者の欲望について、あるいは1970年代の性の解放が80年代のエイズ危機につながってゆく中、同性愛者をめぐる政治状況をどのように扱ったらいいのか、わからないように見える」。

例えば、同性愛者のマネージャーとフレディの関係は「最大限のスキャンダル、放蕩、中毒、搾取の悪夢として、そしてフレディは堕落した罪のない人」として描かれるが、現実は「もっと興味深く、もっと微妙なものだったのではないか」。

いずれにせよ、映画は「陳腐さを積み上げた宮殿」になっている、とバッサリ。

「あるバンドが有名になることを目指し、成功後は甘さと苦さに遭遇する」、「誤解された天才が芸術のために苦しみ、最も心を寄せてくれる人を遠ざけた後、赦しと償いを得る」というストーリー展開は、「その大部分が本当に起きたことかもしれない。しかし、本物らしいとは思えない」。

映画よりも、ユーチューブ上にある本物のクイーンの動画やレコードを聴いたほうがいい、と評者は締めくくっている。

英ガーディアン「非常によくできたカバーバンドを見せてもらったように感じる」

次は英ガーディアンの映画評。星5つの中で、星2つという手厳しい評価が付く。

ガーディアンの映画評(ウェブサイトより)

BohemianRhapsodyreview–FreddieMercurybiopicbitesthedust(10月23日付)

評者は、フレディ役のマレックによる「素晴らしい演技」を別とすれば、「先駆的なミュージカルのオデッセイ(長い冒険の旅)というよりも、非常によくできたカバーバンド」を見せてもらったように感じる、という。

それでも、主演男優や監督の交代といった様々ドタバタがあったにもかかわらず、「完成した」だけでも、ひとつの業績だという見方をする。

マレックの演技自体は、当初は「当惑」を感じたという。「気取ったアクセントは誇張されすぎているし、フレディの上側の前歯が下側の前歯をほぼ覆っており、かみ合わせが深くなっているという顔の特徴もそう感じる」。マレックは入れ歯によってこれを達成したわけだが、まるで「漫画シンプソンズのキャラクターが出てきたように見える」。

しかし、話が進み、フレディ役のマレックが短髪となり、口ひげを生やすあたりから最後の場面までに「フレディ役になり切っている」とほめている。

最後のコンサートの画面も迫力があるが、「ものまねの功績だ」としている。

「本当の問題点」は、フレディのステージの外の人生の描き方だ。先のニューヨーク・タイムズの映画評同様に、こちらを十分に描き切っていないという見方をしている。

映画はフレディのショーマンとしての部分を称賛するが、「人間としての(フレディ・)マーキュリーには本当には肉薄しなかった」。

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