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ニトリの在庫回転の早さは「アマゾン」級

経済ニュースの本質を見極めるにはどうすればいいか。役立つのが「会計」だ。会計ではモノの動きと時間の流れを「金額」で整理していく。それが理解できると「ウラの裏」がするすると見えてくる。雑誌「プレジデント」(2018年3月19日号)の特集「会社の数字、お金のカラクリ」から、記事の一部を紹介しよう。今回は「大塚家具VSニトリとビジネスモデル」について――。

在庫回転日数の差は、3.5倍もある

家具業界老舗2社の業績の明暗が大きく分かれている。高収益体質に磨きがかかるニトリと社長交代後、不振をきわめる大塚家具だ。両社の好不調の違いは「営業利益率」にくっきりと表れている。営業利益率は、企業が本業で利益を稼ぎ出す力を測る数値で、営業利益を売上高で割ったもの。

写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz

直近の営業利益率を比べてみると、ニトリは17%(2017年2月期)、大塚家具はマイナス13%(17年12月期)である。大塚家具の数値がマイナスなのは、「お家騒動」の末に経営権を握った大塚久美子社長が改革を進めるものの苦戦が続き、2期連続の営業赤字のためだ。

経営戦略コンサルタントの鈴木貴博氏は、小売業の営業利益率のカギになる尺度として、「粗利率」と「在庫回転日数」の2つに注目する。「ニトリは“お値段以上”を売りにした低価格の薄利多売路線で成長してきました。薄利多売ビジネスの標準的な粗利率は25~30%ですが、ニトリの粗利率は50%台半ばです。高級品を高価格で売る大塚家具のビジネスモデルは粗利率が高く、ニトリとほぼ同レベル。それなのに売上高は激減、営業利益は2期続けて赤字です。ニトリは、“厚利多売”の高収益経営を実現しています」。

売れる商品が多いことを示す在庫回転日数はどうなのか。短いほうが効率的な経営といえる。

「ニトリは約30日。仕入れた商品を1カ月程度で売り切っています。これはアマゾンやウォルマートと同じ水準で、店頭に並んだ商品が次々に売れる状況です。一方の大塚家具は114日。商品を売り切るためにニトリの3.5倍を要し、4年前と比較して3週間も滞留期間が延びています」(鈴木氏)

大塚家具は、大塚勝久前社長が1969年に設立し、高級家具店としてのブランドを確立。93年に会員制を導入し、ニーズに適する商品を推奨販売するスタイルをとってきた。ところが、15年1月に社長に復帰した久美子氏は会員制を廃止。商品構成を中価格帯にまで拡充する販売戦略を打ち出した。

狙い通り来店客数は増加したが、肝心の成約率は大幅にダウン。従来のメイン客である富裕層の支持までも失った。親子間の争いが、高級家具店のブランドを毀損した側面も見逃せない。

「顧客数は限定的な市場とはいえ、優位性があったのは、高級家具を目利きして仕入れる能力と顧客の背中を押して購入のクロージングにもっていく接客術。現状は、この2つの強みを放棄した格好です」(鈴木氏)

品質管理を徹底、信頼度がアップ

独自に培ってきた優位性のある高級家具市場に加え中価格帯もマーケットにするビジネスモデルは、コスト構造を引き下げることが必須の条件となる。

大和証券エクイティ調査部シニアアナリストの川原潤氏は、「一般的に考えても安い価格で売るにはコスト構造を下げるか、もしくは売り上げを大幅に伸ばさない限り営業利益は上がりません」と指摘し、こう続ける。

「家具のマーケットが大きく伸びることはありません。価格を下げるには、コスト構造をそれなりに合わせないと営業利益率が圧迫されるのは自明の理です。その点、ニトリが効率の高いコスト構造になったのは何年にもわたり努力してきた結果です」

ニトリは、現会長の似鳥昭雄氏が67年の創業当初からチェーンストア経営を志向し、店舗網を全国に拡大してきた。

「海外生産、自社規格の採用など、次々に新機軸を打ち出し、企画、生産、物流、販売を一貫して手掛けてきました。サプライヤーと協力してSPA(製造小売)型のビジネスモデルで、あらゆる過程で徹底したコストダウンをはかってきました。家具からインテリア、生活雑貨へと商品ラインアップを広げることで来店客が増え、売上増につながっています」(川原氏)

さらに川原氏はニトリの高成長に拍車をかけた背景に「“品質の神様”といわれた元広州ホンダ社長の杉山清氏をスカウトして品質管理の徹底に努め、消費者の信頼度をアップさせたことがあります」と指摘する。

ここで、大塚家具とニトリの損益計算書の売上高や営業利益など2社の儲け方の差を数値の増減で示してみた。売上高は単価×数量だが、ニトリは商品単価を抑え、一方で数量を増やし、売上高を伸ばすビジネスモデルだ。これに対して大塚家具は、価格は横ばいながら数量を大きく落とし、売上高は落ち込んだ。

AFLO=写真

原価についてニトリは徹底したコストダウンを行い、大塚家具は高価格品の仕入れを中心に原価は高いまま。その結果、ニトリは粗利を大幅に伸ばし、大塚家具は横ばい基調だった粗利を減らしている。

販管費はそろってほぼ横ばいだが、ニトリは営業利益を大幅に増やし、大塚家具は営業黒字が現社長となって営業赤字に転落。売り上げ、コスト両面からの構造の違いが、2社の明暗を浮き彫りにした。18年2月期で31期連続増収益が確実視されるニトリの快進撃、17年12月期で2期連続大幅営業赤字を余儀なくされた大塚家具の大苦戦の背景には明白な理由がある。

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鈴木貴博
経営戦略コンサルタント 


川原 潤
大和証券エクイティ調査部シニアアナリスト 

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(ジャーナリスト 山口 邦夫 写真=AFLO、iStock.com)

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