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驕る経産省久しからず。

ここしばらく新聞紙上を騒がせていた「産業革新投資機構」をめぐる経産省と機構経営陣の対立は、田中正明社長以下、民間出身取締役9名が全員辞任し、新規投資凍結、ファンド活動の事実上の休止、という形で幕を閉じた。

役員の「高額報酬」の話から、機構自体の意思決定方法に係る問題まで、どちらの側もメディアを自分たちに都合よく使おうとしているのが透けて見えるような喧嘩だったから、ここでの勝ち負けはこの際どうでもいい*1

むしろ、今回辞任した取締役たちに称賛されるべき点があるとしたら、本来であれば使命を終えて消える運命だったはずの「産業革新機構」を、こういう形で姿を変えて蘇らせようとした経産省の思惑を完全に頓挫させたことにある。

どんなに高邁な理想を掲げたところで、「国」が背景にある以上、集めた資金の使途には多かれ少なかれ“国家の思惑”が反映されることは避けられないし、それは本来もっとも自由であるはずの経済活動を歪めることになりかねない。

それゆえ、どんな形であれ、自分はこういった「官製ファンド」を生み出すことには大反対だし、この話が浮上した時から冷ややかな目で眺めていた。

それゆえ、経過のやりとりはともかく、結果だけ見ればオーライ、というのが、冒頭の幕引きに接した率直な感想である。

思えば、この6年という歳月は、安倍政権の庇護の下、経産省が他の省庁の領域から「民」の領域まで、あちこちに顔を出し、調子に乗って自分たちの“利権”を膨らませようとし続けてきた年月でもあった。

その多くは空転し、さしたる成果もないままいつの間にか消えていったプロジェクトも数多あるのだが、今回ほど派手に、自分たちの失敗を白日の下に晒したケースはなかったように思うだけに、これでようやく・・・という思いは強い。

できることなら今回一斉辞任した取締役たちの「後任」が空席のまま、この忌まわしい「機構」がそのまま眠り続けること、そして、経産省が大人しく静まり返って露骨な“領空侵犯”を自制する時代になることを心から願うばかりである。

*1:個人的には、国の後ろ盾の下、純粋な私企業としてのリスクを取らずに運営される法人である以上、その運営にかかわる人たちは“政治的な事情”で大臣の認可が得られない事態も最初から想定しておくべきだし、ここで私企業と同様の「取締役会によるガバナンス」を絶対視するのは、いささかナイーブ過ぎるようにも思う。

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