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日の目が見えぬ産業革新投資機構

産業革新投資機構の現職役員が大挙して退任することが大きな話題になっています。そもそもこの舌を噛みそうな組織が何を目的として何故、これほど荒れてしまったのでしょうか?

産業革新機構という名前を憶えていますか?一躍有名になったのはジャパンディスプレイやルネサスエレクトロニクスに大型出資をした半官半民の投資機構です。これはもともと国絡みのお金をある目的に沿って投資し、次世代の国富を担う産業育成と創出という根本目的があります。いわゆるソブリン ウエルス ファンド(SWF)であります。

ところがジャパンディスプレイに見られるようにさっぱり業績が上がらず、産業革新機構の成績はマイナスでありました。つまり失敗です。そこでその機構を改変し、今までの投資体制を維持する部門と新たに投資をする部門を分けます。旧来の投資は一種の資産清算会社のようなもので、新しい投資は産業革新投資機構(JIC)という名のもとで今年の9月25日に発足したのです。3カ月もたっていません。

ただし、新会社産業革新投資機構の100%傘下に清算会社のINCJ社が入るという不思議なストラクチャーが形成されています。これでは清算会社の負の部分とJICの新しいチャレンジが相殺されてしまい、成果が見えにくい形になります。

そんな中、報道されているように民間から雇われた9人が今日にも一斉に辞任することになりました。その理由は政府が当初提示した報酬が高すぎるとし、安く見直しをさせたため、現職役員がそんな金額ではできない、と反旗を翻したわけです。同機構の社長は三菱UFJ出身の田中正明氏で剛腕で知られていました。また議長にはコマツの坂根正弘氏となるなど船頭だらけの組織でありました。

この「報酬を理由に辞任」という部分だけを捉えるとばかばかしい話に聞こえるのですが、もう少し掘り下げると初めの一歩からしてよくわからない組織だったと思います。

ソブリン ウェルス ファンドが欲しい、と日本は長く思っていました。これはかつてのオイルマネーを想像していただければよいかと思います。資源などの資金をベースに国家絡みの大型のマネーが特定案件に集中して投下され、大きな投資利益をかっさらっていくというイメージです。

日本政府としては将来の産業育成を考え、長期的な「国富」を考えなくてはいけません。そこで日本版ソブリンウェルスファンドを作ろう、ということになったのです。では何に投資をするか、ですが、Society 5.0という具体的目標が2017年に掲げられ、その対象はドローン、AI、医療介護、スマートワーク、スマート経営、自動走行が上がっています。なるほど、未来志向であるわけです。

ところがもう一方でこのファンドは国民の資金という性格があるため「失敗が許されない」性格もあります。「将来に投資を、しかし、失敗はするな」という二律背反する命題を掲げられたファンドは役人や国会議員が考えた現場を知らない理想論の塊のようなものでありました。

しかも旧体制の産業革新機構はイメージとしてつぶれそうな会社を助ける延命装置と化し、本来の目的から外れた上にその装置は十分機能しなかったと言えます。では、組織を改編し、ビジネス界の華麗なる人々がうまくできるか、といえば個人的には「こんなもん、走るわけがない」と思っていました。

思った通りで、エンジンがかかる前に「こんな条件じゃやってられん」というわけですから車庫から車が出る前にエンストしたようなものです。

ではソブリン ウエルス ファンドが日本にも本当に必要か、という議論はあります。個人的には難しいだろうと思っています。まず、ファンドのお金がどこから出てくるのか、であります。今までは政府保証の元、民間から出ています。が、本来であれば年金とか日本の場合は外貨準備高といったものが考えられますが、その運用成績は国会などで厳しく追及され、野党あたりが何でもかんでも文句をつけるのが目に見えています。もちろん、野党の遠吠えなど聞かなければいいという見方もありますが、当事者である民間人からすればばかばかしくてやってられん、という気持ちになるでしょう。

それとソブリン ウエルス ファンドの主流は前述したように資源国のマネーといった性格のものが多く、それ以外には中国の国家戦略的マネーといった性格が強いとみられます。よって欧米の主要国ではあまり存在しないファンドでアメリカのそれは一桁少ないですし、欧州はノルウェーを別にして小さいものであります。

個人的にはそもそも論がおかしいと思っています。更に確実なリターンを、野党はリターンが少ないと吠える、給与は高すぎると言われれば何をどうしろというのかね、ということになります。役所と民間の協業は世界の主流でありますが、日本の役所はとにかく、小うるさいことで有名です。自由度や融通という点は極めて乏しく、それが良い面でもあり、悪い面でもあるのです。

残念ですが、多分、この機構は原点からもう一度見直すべきかと思います。なぜ失敗したのか、経済産業省だけではなく、存在そのものの議論、つまり議員レベルにまでもう一度戻すべきかと思います。リスクマネーを恐れるならどこに投資しろというのでしょう。私なら三顧の礼でもお断りです。

では今日はこのぐらいで。

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