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空虚感を抱えたイエスマン

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学者の会のニューズレターから寄稿を依頼された。

一般の方の目に触れる機会のあまりない媒体なので、ここに再録する。

世代論というのはあまり好きではないのだけれど、どの世代でも、先行世代において支配的だった「作法」のようなものに対して集団的に反発するということはあると思う。

私は「全共闘世代」に類別されるが、次の世代は「しらけ世代」、その次は「新人類」と呼ばれた。その後はどうなったのか、よく知らないけれど、たしかに世代的な特徴というものはある。  

ある新聞の取材で「どうして今の若い人たちはこんな政治の現状に抵抗しようとしないのでしょう?」と質問されて、「空虚感を抱えたイエスマンだから」という答えがふと口を衝いて出て、言った自分で「なるほど、そうか」と妙に腑に落ちた。

「空虚感を抱えたイエスマン」というのは、わりと適切に今の20代30代の多数派の心性を言い当てているように思う。

イエスマン、事大主義者、曲学阿世、「野だいこ」の徒輩はいつの時代にも一定数いる。別に珍しい生き物ではない。けれども、イエスマンが多数派を形成するということはふつうはめったに起こらない。諫言することを恐れない硬骨漢から「下らん奴だ」と見下されるのが、けっこう本人にはつらいからである。イエスマンはそこそこ出世はするが、めったにトップには立てないし、同僚や後輩から信頼されたり慕われたりすることもない。だから、イエスマンは長期的には「間尺に合わない生き方」というのが世の常識であった。

ところが、どうもそれが覆ったようである。イエスマンが主流を占めるようになったのである。それは「空虚感を抱えた」という形容詞がくっついたせいである。

 「虚しい・・・」と言いながら、現状を追認し、長いものに巻かれ、大樹の陰に寄るのは、ただのゴマすり野郎とは違う。むしろクールでスマートな生き方だということを言い出す若者たちがわらわらと出て来たのはおよそ10年ほど前のことである。

社会のシステムは劣化し続けているが、このシステムの中以外に生きる場がない以上、その「劣化したシステムに最適化してみせる」他にどうしようがあるというのだ。そう暗い眼をして嘯く虚無的な青年は、上にへらへらもみ手するイエスマンよりだいぶ見栄えがいい。見栄えがいいと、フォロワーが増える。「こんな糞みたいなシステムの中で出世することなんか、赤子の手をひねるように簡単だぜ」という虚無的に笑ってみせると、額に汗し、口角泡を飛ばしてシステムに正面から抗っている愚直な「左翼」とか「リベラル」とか「人権派」より数段賢そうに見える。だったら、そっちの方がいいか。

出世や金儲けはともかく、「スマートに見えるかどうか」ということはいつの時代でも若者たちにとって死活的な問題である。というわけで、「ただのイエスマン」ではなく「身体の真ん中に空洞が空いたようなうつろな顔をしているイエスマン」が輩出することになった。

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