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「書いて見えたのは世界の輪郭」現代詩のエース・最果タヒの原点

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 「現代詩」で異例のヒットを続けている詩人・最果タヒさん。その感性は若者から大きな支持を集めており、中原中也賞の受賞や詩集を原作に映画化されるなど評価を得ている。最果タヒさんに学校で苦しんだ10代が感じていることや学校自体についての考えをうかがった。

――最果さんは10代の自分と今とを比べて、どのような変化を感じますか?

 前は、自分の外に漠然とした「世界」があると思っていました。「自分」のほかは「全世界」という感じで、物事の見え方が具体的ではなかったんです。

 本当はいろいろ分かれているものなのに、境界線がぼんやりしていて、大まかな捉え方をしていましたね。それが、今では具体的に見えるようになりました。

 世のなかのどういうところにどんな人がいるのかを知っていって、ひとまとまりだった「世界」が、バラバラになった気がします。

 昔は、もっと「無敵感」があったんですけど(笑)。大きな「世界」に対して、何となく自信を持っていたんです。根拠も何もないんですけど「大丈夫」「できる」と思えていたところがありました。

 でも今は、世のなかには才能のある人たちがたくさんいて、自分にはできないことがいっぱいあるとわかりました。

 それは「自分がダメだ」ということではなくて、「世界」がバラバラになったからこそ、自分がどんなところにいるのか、ちゃんと位置づけられるようになったんだと思います。

 いろんな人たちがそれぞれの道を歩んで、それぞれにできることをやっている。自分もその一員として、ならんで横の道を歩んでいるんだなって思います。

 10代のときはすごくモヤモヤしていて、言葉にできないものがたくさんありますよね。

 学生時代が終わると、そういう感覚を無理やり言葉に落としこんで、わかった気になって、本当にあった感覚を忘れてしまうこともあります。悩みとかイライラとか、かんたんには表現できないものを抱えているのは、しんどいけど特別な時期です。

 自分が詩を書くようになったきっかけでもあるので、今でもその世代のことをよく書いています。

――10代が終わるころには「早く大人にならなければ」と焦る人もいます。とくに学校へ行けなかった人はその思いを強くする人もいます。最果さんにとって「大人になる」とはどんなことだと思いますか?

 大人には、ならないですね。以前、私は10代が終わったら20代になって、20代が終わったら30代になって、というふうに段階があると思っていました。でも今は5歳のころの自分とか、12歳のころの自分とかが、並行して残っている気がしています。

増えていく自分

 時と場合によって、いろいろな時期の自分が反応して出てくるんです。それは自分が進化して変わっていったというより、自分が増えていったという感じですね。新しい価値観をどんどん身につけていっても、何が好きかとか何に感動するかとか、変わらないものがいっぱいあります。

 前は私も「20代になったらしっかりしよう」って思ってました。けど年齢より自分ということのほうがあまりにも大きいので、気にしなくなりましたね。年を重ねていっても、結局、自分ですから。

――最果さんは、現代詩としては異例なほど「好き」という言葉を多く使われています。「好き」という言葉に特別な感覚をお持ちではないかと思うのですが、10代のなかには「自分を嫌い」という人もいます。「自分を好き」になるには、どうしたらいいと思われますか?

 いや、私も自分を大好きということはないです。自分を嫌いでも、いいんじゃないでしょうか。最近のことなんですけど、自分はそんなに「自分」を把握しているわけではないんだな、と思うようになりました。

 たしかに、何を経験してきたかは自分が一番よく知っていて、だからこそ自己嫌悪することもあります。でも、鏡を見るタイミングでしか自分の顔を見ていないように、じつは「自分」のことは自分でもよくわかっていません。

 私は文章を書いていて、自分にとって意外な考え方が出てきたり、読んだ人の感想を見て、こんなこと書いたっけと思ったりすることがよくあります。ものをつくっていると、自分の知らない部分まで、はみ出してくる部分もあるんです。

 映画を観ても、自分はこういうのに感動するのか、と驚くことがたくさんある。そういう体験をしてきて「自分」は完結したものではなく、どんどん発見していくものなんだと思うようになりました。

 あと、一つの場所がダメだったときに、自分を全部否定しないでほしいと思います。

 とくに中学生くらいのころだと、そこだけが全世界みたいに思えてしまう。まだ自分と世の中との境界線がはっきりしていない時期に、学校ばっかりの世界が見えるわけだから、全部がダメなんだと思いやすいのかもしれない。

 それでも、驚くような作品と出会って、未知の自分があるということがわかっていると、自分を見捨てずにいられます。新しいものを探求できる毎日があったら、今の自分が好きでなくても、大丈夫なんじゃないかと思います。

――『不登校新聞』の読者もそうですが、学校との関係に悩んでいる人が多くいます。最果さんは、学校についてどうに考えらてますか。

 NHKの『#8月31日の夜に。』という番組に出演したときに、苦しんでいる10代の声をたくさん聞きました。番組に寄せてくれた声のなかには「学校は世界の縮図だ、というのはまちがいじゃないか」という言葉もありました。私も、学校が社会の縮図なわけがないと思います。

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