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デジタルメディア、早くも厳しい生存競争の時代に

苦境に喘ぐ米国の新聞のレイオフ報道がちょっと鳴りを潜めていましたが、今度は英国の名門通信社ロイターで米国の編集幹部3人を含め1ダース以上のリストラとThe Wrapが報じ、米国のネオコンの牙城とされる雑誌The Weekly Standardが廃刊の方向とPoliticoが伝えています。

The Wrapはエンタメ・メディア分野、Politicoは政治報道で知られ、共に有力なデジタルネイティブのニュースサイト。それが既存メディアの衰退について報じていている。まさにネット時代のメディアの新旧交代を象徴するかのようです。

しかし、デジタルメディア全体を見ると、著名ブランドを含めて、極めて厳しい段階にあるようです。その一端は、ほぼ1年前の当ブログで「米デジタルメディアに吹きつける”秋風”」と題したポストで紹介しました。

一言で言えば、GoogleとFacebookがオンライン広告市場の2強となって、年を追う毎に合算したシェアが巨大となり、広告収入に頼るそれ以外のオンラインメディアの収入を圧迫し、怒涛の勢いで拡大してきたBuzzfeedやViceなどの有力デジタルメディアも苦境に立っているということでした。

そして、それから1年、デジタルメディアの世界はどうなっているのかについて米雑誌業界の巨人Condé Nast傘下のVanity Fairの電子版分析ページHIVEでまとめて報告してくれていますので、そのリンク先なども辿ってかいつまんで紹介します。

記事は、まず、Buzzfeed、Vice、さらにVoxといったnew media時代の夜明けを担うと思われたものが、今や(広告費収入減に苦しむ)old mediaと同じ問題に直面している、と書き出します。

一方で、広告費に頼らない新時代のデジタルメディアが登場し、さらにトランプ時代にNew York TimesやWashington Postなどのレガシーメディアに活気が戻った状況が生まれているとします。

こうした中で、かっては資産価値が1億ドルとされたMicは編集部員全員を解雇した上で、なんと9500万ドルも少ない500万ドルで、投げ売りされ、ViceについてはWall Street Journalが、昨年は1億ドル、今年は5000万ドルの赤字見通しとし、従業員3000人の15%削減プロセスにあることを紹介しました。

また、ミレニアル世代の女性に圧倒的人気だというRefinery29は、昨年末に34人をレイオフしましたが、財務は好転せず、この秋から従業員の10%に当たる40人をさらにレイオフ中という苦境にあります。

こうした中、昨年は売り上げ目標を大幅に下回り、100人をレイオフしたBuzzfeedのJonah Peretti・CEOはNYタイムズに思い切った構想を打ち明けて話題になりました。

「広告費を吸い上げているFacebookのようなプラットフォームと交渉する力を高めるために、Buzzfeed、Vice、Vox Media、Group Nine 、 Refinery29が大合併しよう」

NYタイムズの記事によると、予備的な話は一部で行われているようですが、直ちに動く模様ではありません。しかし、この業界の人間関係は近い人が多いので、苦境が深まれば動き出すかもしれません。ただ、その場合は、人材が重複するので、多くのスタッフが職を失うことになるのがネックです。

環境が厳しくなる中、Micを買い叩いたBustleのBryan Goldberg氏や、元News Corpの重役だったJohn Miller氏、昨年、Rolling Stoneの支配権を手にしたJay Penske氏などが安く買い漁っているそうで、これを紹介したrecodeは「あなたがメディアを入手したければ、数年前よりずっと良い取引ができる」と書いています。

デジタルメディアの状況について、web分析大手ChartbeatのCEO、Tony Haile氏は「事態はもっと悪くなる」と語っているそうで、「みんな売りに向かっている」とも。

ただし、伝統メディアの中には、慈善家的な億万長者の胸に飛び込んだ例もあります。米国有数の大富豪コーク兄弟の支援を受けたメディア企業メレディスに全株式を売却したのはTime社。雑誌Time、Fortuneなどは今の所、安泰。

また、The Atlanticは、アップル社の故ステーブ・ジョブズ氏のLaurene Powell Jobs夫人が主宰する社会活動団体Emerson Collective株式を売却しました。こっちも、当面、安全。

別の安全地帯を見つけた例もあります。かってAriana Huffington女史が始めた”ブログ新聞”の先駆け、Huffington Postは、AOLに買われた後、今は大手通信会社VerizonのもとでHuffPostとして存続し、Business Insiderはドイツの大手メディアAxel Springerに、QuartzはNewsPicksなどを運営する日本のUZABASEにそれぞれ、買収されました

new media幕開け時代のエース的存在だったVice、BuzzFeed、Vox Mediaは、まだ独立して頑張っていますが、なんとか持ちこたえていられるのはいずれも、単なるニュースメディアではなく、多様な関連事業に進出して、広告収入一本足打法から脱却を図っているからです。

NYタイムズによると、Buzzfeedなぞは、ニューヨークにユニークなオモチャ店を開いたり、製作しているテレビ向け料理番組で人気になった調理器具をオンラインで売るビジネスにも乗り出しています。

してみると、HIVEの記事の書き出しに「今や(広告費収入減に苦しむ)old mediaと同じ問題に直面している」とあった「old mediaと同じ問題」というのは、広告費収入減をカバーするために苦闘している新聞社と同じく、収入源の多様化を図らねば、有力デジタルメディアと言えども生き残れない時代に、早くもなってしまったということでしょう。

かってネットの世界は変化が早いので「ドッグイヤー」という言い方がありましたが、それを思い出してしまいました。

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